三つ巴1
目覚まし。
今日も今日とて日が昇る。
何がどうのと言うわけではないけれど。
まぁ日が昇らないと世界に支障が出るのでこれはしょうがない。
とりあえず起き……、
「…………」
ようとして腕に重みを感じる。
「だったね……」
眼鏡をかけてみやる。
愛らしい少女が私の腕に抱きついていた。
ケイオス。
量コン技術の第一人者で、MITのエース。
何が面白いのか私に懐いた才色兼備。
ブルーハート財閥の令嬢で、私の城を侵略し、百億円をポンと預ける規格外。
「ケイオス」
私はデコピンをした。
「あう」
呻くケイオス。
「朝だよ」
「ですか」
「おはよ」
「おはようございます凜先生」
そんなわけでこんなわけ。
とりあえずは朝食だ。
そう思ってキッチンに顔を出すと、
「おはようございます須磨様」
ケイオスの使用人が朝食を準備していた。
そういえば壁を開通させて一緒くたにした部屋の隣に使用人を待機させていたね。
その使用人なのだろう。
「コーヒーと紅茶と玉露とハーブティーとココアとチョコレートがございますがどれにしましょう?」
「……コーヒーで」
「承りました」
「僕はホットチョコレート」
「承りました」
そして飲み物を振る舞われてダイニングテーブルで喫茶。
それから目が覚めて、
「ほんになぁ」
漸く意識が現実に追いついた。
「一緒に暮らすんだっけ?」
「です」
簡潔極まるお返事。
「だよねぇ」
とりあえずはそういうことになる。
「いいんだけどさ」
ブルーハートに逆らうつもりもない。
色々とツッコミどころはあれども。
コーヒーを一口。
ついで使用人が朝食をテーブルに並べた。
食パンと肉厚ベーコンとサラダ……それからスムージー。
なんというか、
「ホテルのモーニング」
って感じだ。
不満はないけど。
実際に美味しい。
「ご馳走様でした」
食後。
身だしなみを整える。
使用人がアイロンをかけたスーツを纏って漆黒のネクタイをしめる。
「では参りましょう凜先生」
「へぇへ」
もはや逆らう気も無い。
無邪気ではある。
行動に於いてうんざりはさせられるが、何故か悪意の感情も湧かない。
人徳?
そうは思うが絆されているともまた思えない。
何度目かになるけど、
「なんだかなぁ」
そんな感じ。
「とりあえずランドアークに」
そう思っていると、
「いえいえ。専用のドライバーが居ますので」
とケイオスが却下。
黒塗りの高級車が待機していた。
さすが財閥令嬢。
思考の在り方が斜め上。
そんなわけでロールスロイスファントムに専属ドライバーの運転で妃ノ守女学園へ。
校門の警備も目を剥いていた。
まぁそだよね。
有り得ないよね。
開いた口が塞がらないよね。
居心地悪い私でした。
「えへへぇ」
ケイオスはワンコのように私に肩を寄せてくる。
特異性については特に斟酌もしないらしい。
ケイオシズムと言えるかもしれない。
駐車場についてファントムが止まる。
「お嬢様。須磨様。どうぞ行ってらっしゃいませ」
ドライバーさんが慇懃に頭を下げた。
なんかこれだけで私の給料すっ飛ぶ気がするんですけど。
とはいえ悪い乗り心地では無かったのだから反論の余地も無い。




