百億円の恋9
アタッシュケース一つに十億円。
それが十つで百億円。
ブルーハートの本気が分かろうというもの。
とはいえ張本人は気楽だ。
「にゃは~」
と風呂で茹だっている。
眼鏡を外しているためあまり風景は見られないんだけど。
全裸です。
私もケイオスも。
一緒にお風呂。
押しかけ女房も嫁の内。
一緒にお風呂にも入ろうという物。
「先生のおっぱいは素敵ですね」
もみもみ。
セクハラだ。
「ケイオスは同性愛者?」
「結果論としては」
「?」
「別に女性が好きじゃなくて凜先生が好きなだけですから」
「それは光栄に思っても?」
「どうでしょう?」
本人も困惑な声。
まぁ恋愛はルール無用だしね。
気持ちは分からない。
心情は察せるけど。
とりあえずは全裸で狭い風呂に二人浸かる。
「風呂掃除もケイオスが?」
「はい」
肯定された。
「先生と一緒にお風呂に入るのが夢だった物で」
恐縮だ。
「…………」
小さな嘆息。
それから二人して科学雑誌ヒュートンの今月号について語りながら風呂を堪能した。
宇宙の成り立ち。
超ひも理論。
量コンから推測できる別宇宙に関して。
光の性質と重力のカルマ。
さすがにMIT卒業生だけあってケイオスは楽々と付いてきた。
なんか混沌と話してる気になった。
いいんだけどさ。
別に。
「ところで」
とこれは私。
「何でしょう」
とこれはケイオス。
「なして私?」
根本的な問い。
根源的。
あるいは根幹とも云える。
要するに、
「根元」
についてだ。
「先生と居ると彩が付くんです」
「?」
意味不明だ。
眼鏡をしていないためケイオスの顔は分からない。
「先生と居ない世界は無彩色なんです」
「?」
物理的な意味では無い。
それはわかる。
けれども、
「何で私?」
は拭えない。
然程大層な人間でも無いのだけど。
そう云うと、
「それでも凜先生を尊敬します」
強行にケイオスは言った。
「私は何かしましたか?」
「僕の世界に彩色してくれました」
彩色。
色を付けること。
何かの隠語だろうか。
思っても答えは出ないけれど。
「尊敬されてるの?」
「ある意味で」
否定されない。
ソレもなんだかな。
いいんだけど。
とりあずはまぁ、
「百億円はどうにかならない?」
そう問うた。
「押し付けるのが目的ですから」
素直な声が聞こえた。
眼鏡があれば表情が読めるんだけど。
あとケイオスの裸体も。
ふにふにと胸を揉まれる。
「凜先生に貞操を捧げます」
「大却下」
「何でですか?」
「ブルーハート財閥の令嬢を傷物には出来ないでしょう?」
「むぅ」
御家事情は気になる所だ。
そもそも、
「百億円は私に過分です」
が前提なのだけど。
恋の支度金?




