百億円の恋8
「とりあえず」
とはケイオスの言。
「御飯と豚汁とサラダで宜しかったでしょうか?」
コタツ机に並べるケイオス。
「豚汁は根菜がいっぱい取れるから体に良い」
そんなこんなで、
「いただきます」
御飯つやつや。
豚汁は味わい深く。
サラダが栄養を補填する。
手料理は良いものだ。
生徒に養って貰っている教師と思うと多少物悲しいけど。
「美味しいでしょうか?」
「美味しいです」
悔しいけど。
「財閥の令嬢なら使用人とか居るんじゃないの?」
「隣の部屋に待機されていますが」
そういうことらしい。
「で、ケイオスは此処に」
「はい」
コックリ頷かれる。
それもどうよ?
「一応凜先生のお嫁さんになれるように頑張ったつもりです」
「ベクトルを間違えてる」
「ふにゃ?」
「ドクターカオスならMITに残留すべきでしょ?」
「ミスインタフェースが言いますか?」
正論だ。
それゆえ鋭利に傷つける。
心というか。
精神というか。
自己同一性というか。
「何が原動力?」
「乙女パワーです」
聞いた私が馬鹿だった。
「一先ず百億円を支度金として」
嫁も一つの就職だ。
クイと箸で部屋の隅を指差す。
アタッシュケースが十つほど置かれている。
一応認識はしていた。
平凡な部屋模様で異様に煌めいているし。
「データで渡しても突っ返されるだけなので現生で用意させて貰いました」
「…………」
沈黙。
豚汁をすする。
まぁ確かに百億円を現生で用意されればどうしようもない。
突っ返そうにも持ち上げる必要がある。
火を点ければ犯罪で。
捨てるには忍びない。
ていうか、
「力業じゃない?」
そう思う。
「まぁ力業ですね」
……認めちゃったよ。
「いいんだけど」
「だから好きです」
ニパッとケイオスは笑った。
愛らしいご尊顔で破壊力抜群だけど、
「生徒だからな~」
と心中思う。
何に付けても残念だ。
せめて年齢か性別かを克服して欲しかった。
今更言ってもしょうがないけど。
嘆息。
御飯をもむもむ。
「ところで」
とはケイオス。
「お風呂は一緒に入りましょう」
「いいけどさ」
「色々しましょう」
「何を?」
「ナニを」
「却下」
「凜先生~」
だから何ゆえ不満げよ?
「青春の教えその一」
「?」
「教師の良心には期待しちゃいけない」
「そなんですか?」
そなんです。
頷いて豚汁を飲む。
うむ。
美味し。
「一緒にお風呂」
「それだけならいいんだけどね」
「だから先生愛してます」
「百億円の恋ね~……」
金銭で価値を計るのは人類の悪い癖だ。
もっともだからこそ戦争が絶えないんだけど。
さすがに一からアパートを借り直そうとしてもブルーハートが邪魔をするだろう。
寮におらず此処に居るブルーハートがソレを証明している。
であれば臨機応変に。
不器用な私に何処まで出来るか不安ではあるけど。
「ま、今はいいか」
そんなこんなで豚汁を一口。




