百億円の恋5
そんなわけで食堂ではちょっと注目された。
私はモブ眼鏡。
これは宣言した。
が、茶髪美人のみゃっこ。
および金髪赤眼のケイオス。
この二人はオーラが違う。
食べているおろしポン酢の唐揚げが全く味わえていなかった。
みゃっこは元より人格者であるため生徒の人気が高い。
ケイオスは……、
「お姫様だ……」
「プリンセス……」
「神々しいですわ……」
早速チヤホヤされていた。
妃ノ守女学園では学年ごとにプリンセスと呼ばれる生徒を一人決める習慣がある。
色々と百合百合しい学園なので、プリンセスに選ばれるとチヤホヤされる。
というか因果が逆だ。
チヤホヤされるからプリンセスと呼ばれる。
そうとも云える。
おろしポン酢唐揚げをアグリ。
それをケイオスに説明すると、
「へえ」
で済まされたが。
「それより凜先生」
「何でっしゃろ?」
「結婚してください」
みゃっこが噴飯した。
「生徒に手を出すと首になるから」
「僕が養って差し上げます」
それもそれでどうなんだ?
「とりあえず口座は返しますよ」
イメージカードにしてフリスビーの要領でケイオスへと投げ渡す。
「即席でよくもまぁ」
「このくらいしか得意じゃないから」
単純にインタフェースの構築が得意ってだけだ。
自慢にもなりゃしない。
「一度出したものは引っ込められません」
「なら最初から出さないで」
ピシャリと言い放つ。
「何の話?」
みゃっこが首を傾げる。
「結婚資金です」
「ええと……」
半眼で睨まれる。
何でよ。
「生徒に手を出したの?」
「出しておりません」
おろしポン酢唐揚げをパクリ。
「でも結婚……」
「日本では同性婚は認められておりません」
「マサチューセッツ州にいこ?」
「まぁそこなら同性婚も出来ましょうけど……」
気疲れもする。
「凜先生なら歓迎」
でしょうよ。
「何がケイオスをそこまで駆り立てるの?」
「好きだからです」
あー。
はいはい。
「真面目に聞いているんですけど?」
「真面目に答えたつもりですけど?」
「…………」
唐揚げをアグリ。
「凜ちゃんは私の嫁」
ブルータス以下略。
「恋敵?」
可愛らしく首を傾げるケイオスだった。
「そうみたいね」
みゃっこも乗った。
「好きにしてくれ」
私は昼食に専念した。
「職場恋愛?」
「だよ」
「違う」
たまにみゃっこのジョークは笑えない。
酒飲み仲間として気に入って貰っているだけだ。
虚構ではあるにしても誇張ではない。
とりあえず職員で一番仲が良いのは認める。
「むぅ」
ケイオスは唸った。
思惑めぐらしているらしい。
御苦労様。
そんな感じだ。
食事を終えて牛乳のパックをストローで飲む。
「凜ちゃん結婚資金を受け取っちゃ駄目だよ?」
「突っ返したよ」
「好きに使って貰って構いませんのに……」
「幾ら?」
「円で百億」
「…………」
呆然とするみゃっこ。
まぁ数字の破壊力は私も肯定できる。
「ブルーハート財閥……」
「そゆこと」
世界を支配する一族だ。
「MITを出て良かったの?」
「まぁですねぇ」
ポヤッと言ってケイオスはカモ蕎麦をたぐった。




