黎明の少し前5
「あー」
七月も近づくワンデイ。
私は古書館の執務室でゲームに励んでいた。
軽やかに打鍵してキャラを操作。
そんなことをしていると、
「先生?」
生徒が私を呼んだ。
「何か?」
言って生徒を見やる。
黒髪ポニーテール。
白い瞳。
一年生のプリンセス。
六菱さんだ。
「古書館を利用して良いですか?」
「特に制限は設けていないけどね」
そして私はゲームに没頭する。
「では」
と慇懃に一礼して六菱さんは古書館に消えた。
それからロボットが声を掛けてくる。
「宜しいので?」
「宜しくない理由があるの?」
「不純交遊」
「異性じゃないからセーフじゃないかなぁ?」
そんな私の楽観論。
「本気でそう思っているので?」
「駄目?」
「とは申しませんが」
「なら問題ないじゃない」
「ですかね」
「ゾンビが気にすることじゃないですよ」
「むぅ」
唸るロボットだった。
「とりあえず」
とは私。
「監視くらいはしておいて」
「いいのですか?」
「別に興味は無いけど一応仕事ですから」
私はイメージコンソールを操作する。
「説得力がありませんが……」
「説得するつもりも無いですし」
至極真っ当だ。
「ではその通りに」
それからロボットは待機モードに入った。
私はシステムに侵入して古書館の一部を見やる。
そこには二人の女生徒が居た。
一人は六菱さんだ。
「六菱様」
と年上の生徒が声を掛ける。
「私と付き合ってください」
赤面しながらの女生徒の告白。
それを、
「申し訳ありません」
六菱は袖にした。
「何故ですか……?」
「逆に聞きますけど」
とは六菱さん。
「私の何処を気に入ったのです?」
「愛らしいご尊顔など」
「でしょうね」
嘆息。
間違いなく六菱さんの呼気はソレだった。
「デザイナーチルドレン故ですよ」
そんな回答。
才色兼備。
その通りの六菱さんだ。
憧れる女生徒の一人や二人は出る。
「あなたの想いは幻想です」
言い切るのだった。
「私は……」
そこで言い淀む。
何を思っているのだろう?
しばし勘案。
「私を平等に扱う人間こそを求めてます故」
そういうことらしい。
「せめて……っ」
と女生徒。
「せめて……私を抱いてはくださりませんか?」
「謹んでごめんなさい」
さっくり否定。
まぁ肯定されればその方がビックリだけど。
「あう……」
失恋の痛み幾ばくか?
女生徒はホロホロ泣く。
「ごめんなさい」
その頭部を抱きしめて六菱さんは懺悔した。
「ごめんなさい……ね……」
ギュッと抱きしめる。
さりとて乙女の涙乾かず。
そんなことも在る。
古書館では珍しい展開だけど、
「六菱さんらしい」
とも言えた。
そのセンサーに六菱さんは視線をやる。
「無粋です」
そう口を動かした気がした。
ヒヤリと冷気を感じる今日この頃。




