黎明の少し前4
「それにしてもマリンはすごいですね」
とは混沌の言葉。
「何がでしょう?」
私は団子をもむもむ。
「いやさ」
混沌は言う。
「アレ全部インタフェースの操作でしょ?」
「その通りですが」
ソレが何か?
キョトンとする。
「器用ですね……なんて」
「恐悦です」
苦笑した。
然程のものでもない。
私にとってインタフェースの開発は趣味のような物だ。
イメージコンソール。
イメージインタフェース。
それらに於いて少しは発言力を持つ。
今は昔の話だけど。
「マリンは何故そんな能力を?」
「特に何があるわけでもないですね」
サックリ。
けどその通りだ。
単純に、
「生まれつき」
としか言いようが無い。
「だから凄いんですよ」
混沌の苦笑。
「複雑な人間の動きを有限のインタフェースで過不足なく再現する」
混沌はそう云った。
「まぁ」
私の特権だ。
さりとて、
「一銭にもなりませんけど」
それも事実だ。
「いや、でもですね……」
何か?
「相応の価値は在るんじゃないかと……」
混沌のそんな言葉。
私としては、
「人に見せられる物じゃない」
が本音なんだけど。
私の開発したインタフェース。
私としては自分本位のモノだ。
結果として認められたのは、
「まぁ偶然」
で済む話。
いいんだけどさ。
「今も画面で?」
「いえ。フルダイブ」
こと戦闘でなければ仮想現実も悪くはない。
画面プレイだと玉露の味も分からないし。
「ふぅん?」
と混沌。
団子もむもむ。
データの日光に当たりながらぽやぽや。
「マリンは好きな人とかいますか?」
「混沌」
「リアルで」
「むぅ……」
しばし考える。
「いない……かな?」
元がモブ眼鏡だ。
あまりその手の期待はしないことにしている。
「そもリアルに好きな人がいればこっちで結婚とかしないし」
事実である。
「そっか」
どこか安心したような混沌。
それもそれでどうだかな?
とはいえ、
「モブ眼鏡です」
とも云えないんだけど。
空しさに茶を飲む。
ああ。
美味しい。
「そういえば」
と私。
「さつばれ見ましたよ」
「ほう」
湯飲みを傾ける混沌。
「面白かったですか?」
「相応に」
コックリ頷く。
「あの古典的な展開が――」
「携帯電話を通じての恋は――」
「ある種VRMMOの素顔を知らない交流にも似て――」
そんな感じでサブカルについて語り合う。
私も混沌もオタクだ。
であるためアニメや漫画についての知識は多分に在る。
「誇ることでもないけども」
とはいうものの、
「趣味の合う人間が居るのは貴重だ」
とも思う。
話題はポンポン変わった。
「そういえば今期の機動戦士なんだけど――」
「ニューモデルの定義が――」
ヴァーチャルリアリティに浸れば相応の知識は付く。
まぁそれとこれとは密接では無いにしても。
業が深いなぁ。




