黎明の少し前3
マリンは疾駆した。
それは混沌も同じだ。
「――っ!」
混沌の呼気が聞こえる。
立ちはだかるは無数の侍。
刀が振るわれる……、
「射っ!」
より先に混沌が剣を振るった。
それにマリンも続く。
適確にクリティカルを狙って剣を振るう。
さすがにフォースエリアでは単なる無双ゲーとは少し違う塩梅になる。
雑魚の攻撃も致命傷にはならないけど、無視できない物にはなるのだ。
とりあえず雑魚キャラを蹴散らしながら私は混沌にヒールを掛けた。
「助かります」
混沌はこちらにウィンクした。
まぁパラディンの面目躍如と云った所か。
回復魔法を持つ剣士。
であれば高難易度クエストに重宝される戦力ではある。
無論のこと混沌は夫なのでその辺の事情は換算されないけど。
なるたけ、
「敵より先に剣を振るう」
をモットーに戦術を組み立てる。
江戸城に進軍して侍相手に無双する。
首を切る。
その剣を止めずに次の敵の頭部を切る。
ほとんどノリは辻斬りだけど、まぁこれはゲームなので。
現実ととっちらかるのは個人の責任だ。
虐殺に虐殺を重ねる。
マリンと混沌が一つの弾丸となって無数の侍を蹴散らす。
時折将が現われる物の、混沌の奮戦とマリンの補助でぬかりなく。
「さすがに強いですね」
混沌が苦笑した。
「ですね」
私も苦笑した。
その間にもマリンと混沌は雑魚キャラを鏖殺してのける。
首を切り。
心臓を突き。
手首を落とす。
重ね重ねゲームです。
ヒールを掛け、敵を殺す。
江戸城を駆け上がる。
「曲者だ!」
や、
「出会え! 出会え!」
とベタな言葉が飛び交う。
コレも江戸エリアの良い所だろう。
実際に非戦闘区域の城下町では団子や緑茶が楽しめるし。
侍はロマンだ。
まぁ、
「ソレを虐殺してるのはどうなんだ?」
という疑念も有りはすれども。
それについては、
「不幸な事故です」
と云っておこう。
そんなこんなで江戸城本丸の最上階。
迎え撃つはレジェンド初代将軍。
要するに色を変えた徳川ボス。
なんだかなぁ。
が、その能力は破格だ。
超過疾走システムは五倍。
可動速度はこっちに二分の一。
それでも脅威なのに、アルゴリズムが機敏である。
マリンと混沌の剣を刀で受け止めて切り返す。
「っ!」
混沌の呼気が聞こえた。
さすがにボスキャラ。
並の雑魚とは一線を画す。
「――っ!」
レジェンド初代将軍が吠えた。
来る!
そう思った瞬間、
「ヒール」
私は後退しながら回復魔法を唱えた。
対象は混沌。
一瞬だけの十倍速。
が、ソレが効いた。
ヒットポイントの回復とレジェンド初代将軍の攻撃は紙一重。
かろうじて致命傷は避ける。
更に、
「ヒール」
と混沌のヒットポイントの回復を行なう。
「さすが嫁」
混沌の賞賛。
「まぁ夫の補佐は」
とはマリンこと私。
それからレジェンド初代将軍に剣を向ける。
そこからの攻防は丁々発止。
剣の極みだった。
「不埒者め!」
ベタだ。
「剣の錆に変えてやろう」
ベタだ。
剣を振るう。
相手のヒットポイントをガリガリ削る。
まぁ私は画面プレイなんですけど。




