黎明の少し前2
秋葉原から現実に帰還。
私の部屋だ。
時刻は夕方。
七月も迫る今日この頃。
何となくだが物悲しい。
クーラーが入り用の季節でもある。
「あー……」
とりあえず買った同人誌を表示する。
中略。
つやつやになった私はシャワーを浴びることにした。
適温で流れるお湯を一身に浴びてサッパリ。
それからジャージを着てベッドに寝転ぶ。
さつばれ。
「五月晴れの慕情」
を視界モニタで見る。
ブレインアドミニストレータならびに視界モニタの発明は偉大だ。
なにせモブ眼鏡の私が眼鏡を必要としない。
データをダウンロードして視聴。
タイトル通りラブコメだ。
それも過去の。
携帯電話でやりとりする不器用な少年少女の物語。
「いいなぁ」
モブ眼鏡としてはそんな感想。
二次元には理想がある。
二次元……。
というより仮想現実がより正しいが。
何せ私には自慢できる物がない。
モブ眼鏡だ。
アニメなら即死系の。
だからこそオタクになったわけだけど。
とりあえずさつばれを見終えて、次は某科学雑誌をデータで購入。
人工知能の発展から量コンの発展まで。
あるいは別宇宙との交信等々。
量コンも業が深い。
私は人類代表じゃないけれど。
とりあえずパラパラと(というと語弊になるが)科学雑誌を捲っていると、ピコンと音が鳴った。
「…………」
メッセージを読む。
「御機嫌如何?」
そんな感じ。
「良くも悪くも」
そんな返答。
「なんだかなぁ」
苦笑してしまう。
「オド?」
「です」
混沌はそう答えた。
とりあえずオドにアクセス。
ログイン。
赤髪赤眼のアバターになる。
マリンだ。
ちなみに画面ではなくフルダイブ。
要するに仮想現実の電子世界に自身のクオリアを適応させたのだ。
それから指定された座標に飛ぶ。
江戸エリア。
その団子屋だ。
「どうもです」
混沌は先に待っていた。
銀髪。
蒼眼。
なおイケメン。
団子を食う仕草すら様になる。
まぁアバターなんだけど。
実際の素顔がどうなのかは……、
「探ることがマナー違反」
でフィニッシュ。
「とりあえず団子でも食べませんか?」
団子の乗った陶器を指し示す。
「ごち」
そう言って席に座る。
団子を頬張って茶を飲む。
「やっぱり茶は玉露ですよね」
国籍がバレるなぁ。
いいんだけど。
「紅茶の類は飲まないの?」
「そう云うわけではありませんが……」
クイと玉露を飲む混沌。
「なんとなくです」
まぁそんなところだろう。
別に私も緑茶を否定する気はない。
むしろ好きな部類には入る。
「で、これからどうするの?」
「フォース江戸エリアにでも行きませんか?」
「構わないけどさ」
団子もむもむ。
そんなわけでそんなことになった。
私はイメージインタフェースを展開してマリンを客観的に操作し、肩をすくめる。
少なくとも団子の味と玉露の香りは消え失せる。
もとより仮想体験なのだからあまり悔やみは無いけれども。
「さて」
「それじゃあ」
「やりますか」
そして私と混沌はフォース江戸エリアに向かうのだった。
修羅の道だ。
ゲームではあれど。




