女学園の先生は4
青い月曜日。
「……むに」
目覚ましに叩き起こされた。
とりあえず起き上がって状況確認。
眼鏡をかけて世界を認識。
時機は六月の中旬。
自律クーラーがあるため室内は涼しいけど外には出たくない季節。
とはいえソレもかなわない。
「生きていくのも大変ね」
視界モニタにニュースを映しながら量子変換で朝食を用意する。
「いただきます」
合掌してもむもむ。
一人暮らし故に気楽な物だ。
食事を終えると身だしなみを整える。
一応スーツを着る。
シャツとトラウザース。
スカートは慣れないので基本的にパンツ派である。
ランドアークを一台よこして貰い外に出る。
電子キーで施錠。
ランドアークに乗って学園へ。
一応コレでも教師である。
銀英伝の言葉を借りるなら、
「よく言って給料泥棒」
に甘んじてはいれども。
山間の広大な土地をもつお嬢様学校。
妃ノ守女学園。
そこで司書教諭をしているのが私というわけだ。
ランドアークを降りて駐車場に着地。
「めんどくさ」
今更だけどねん。
とりあえず給料分くらいは働かなければならないのだけど、それもどうかなぁ。
基本的に教師は人工知能でも代替できる。
大凡において人間が働かずとも人生を謳歌できるのは常識の一部。
とはいえ思春期の生徒を一ヶ所に固めておいて、
「大人は一人も居ません」
では社会的通念として問題視される。
結果、教師は職業として成り立つという論法。
そうでなくとも働くことにアイデンティティを求める人間というのは絶滅しない。
ロボットやレプリカントの類は代行こそ出来ても、何処まで行ってもゾンビワールドではあるのだから、
「人情の暖かみ」
という点ではまだ人間に追いついていない。
私、無念。
月曜定例の長い朝礼。
勉学がどうの。
イジメがどうの。
生徒の素行がどうの。
教師としての在り方がどうの。
言ってしまえば、
「知らんがな」
で終わるのだが。
とりあえず視界モニタでニュースを見ながら学園長の話を聞き流す。
視線ポインタでニュースを取捨選択していると、
「大日本量子のニューシングル」
というお題目があった。
とりあえず試聴しながら朝礼を終える。
次は生徒朝会だ。
生徒が集まって教師のありがたい言葉を聞く。
先述したようにお嬢様学校だ。
であれば校則や戒律の類は厳しく、
「生徒一人一人が我が校の規範としての自覚を云々」
というありがたい言葉を右から左にスルー。
教師の私で眠くなるのだから生徒の心境如何ばかりか。
ある種のイジメに相当する。
面と向かって云えないのが残念だけど。
減俸は嫌だし。
何事に於いても格差社会は人間の業だ。
基本的に自身の子どもの頃を思い出せば、教師の言葉に感銘を受けた覚えが無い。
であれば主観的論拠の延長線上として今この体育館に集められたお嬢様方が学園長の長い話をどこまで真剣に聞いているのかは……まぁ予想も付く。
「南無三」
私は九字を切った。
臨める兵闘う者皆陣破れて前に在り。
「何してるの凜ちゃん?」
隣に立っているみゃっこが声を掛けてきた。
「護法」
端的極まる解答。
「どこか悪いの?」
「頭とか」
「凜ちゃんがソレ言う?」
呆れられた。
何故?
「ことコンソール開発に於いて凜ちゃんは第一人者でしょ?」
「昔の話」
今はしがない給料泥棒。
別に何がどうのでもないけどね。
「では退場」
学園長の言葉。
そうして月曜の憂鬱イベントは終わった。




