女学園の先生は2
飲み会が終わって二次会に移る。
私は興味ないため不参加。
「凜ちゃん何時も付き合い悪いよ」
「どうぞお見限りなすって」
サクッと言って車に乗る。
ランドアークシステム。
自律型自動車……要するに昔の言葉で表現するならタクシーだ。
しかも無料。
ランドアークシステムは税金でまかなわれているため、ある種国民全員が報酬を支払っているとも取れる。
特に斟酌することでも無いけど。
私は自分の家に戻った。
とは云ってもアパートの一室だ。
とりあえず外行きの服を脱いでジャージに着替える。
眼鏡を室内用に取り替えて、ドサッとベッドにダイブ。
それからイメージコンソールを展開する。
カタカタと独自のイメージキーを打鍵してブレインユビキタスネットワークに繋ぐ。
画面が視界モニタに現われた。
オーバードライブオンライン。
そう呼ばれるゲームだ。
今時VRMMO(ヴァーチャル・リアリティ・マッシブリー・マルチプレイヤー・オンラインゲーム)は珍しくない。
ことオーバードライブオンライン……略称オドは市場を占有するモンスターゲームだ。
VRでの無双ゲー。
ど派手なアクションで多数の敵を吹っ飛ばしていく開放感を疑似体験できるゲームであるため中毒になる人間多数だった。
私もその一人。
とはいえ私はVRゲームが苦手だ。
基本的に身に合わない。
結果としてイメージコンソールを操作して視界モニタに画面を展開……レトロなテレビゲームのような感覚で楽しむのが私流。
ジャージ姿でうつぶせに寝っ転がり、画面を見ながらゲームをする姿はいっそ物悲しいが、今更でもある。
そんなこんなでイメージパネルを操作して私のアバターであるマリンを操作……無双する。
マリンは赤い髪と瞳の私とは比較するのも失敬なほどの美少女だ。
超過疾走システムの倍率はきっかり十倍。
職業はパラディンでレベルは五百台。
限界突破しているため中々見れないレベルだ。
本当なら疑似体験で得るべき物だろうけど、まぁ特に気にしない。
こういう独自のインタフェースの構築は昔から得意だったのでオドでもそうしているわけだ。
とりあえずクエストで無双した後、近場の街に戻る。
すると、
「御機嫌如何?」
と声を掛けられた。
「ああ、混沌」
混沌と呼ばれたアバターは爽やかに微笑む。
私はにへらと相好を崩してしまう。
銀色の髪。
蒼い瞳。
整った顔立ちのイケメンである。
まぁアバターなんですけどね~。
一応私の夫。
ゲーム内で……と注釈は付くけど。
「先日の論文は読みましたか?」
「ん」
「ニューロンマップにおける乱数値の――」
量コンについて話す。
基本的にコンピュータ関連の話は混沌としか出来ない。
何となく趣味が合って、オドプレイヤー同士。
私も大概だが混沌も相当だ。
ヘビーユーザーである。
真性とも言う。
ともあれ喫茶店で茶をしながら会話。
私は現実で紅茶を飲む。
別に寝っ転がってもプレイできるし、茶を飲みながらも雑談くらいは出来る。
イメージコンソールは相対座標で固定しているため何ら支障も無い。
「そういえば『さつばれ』の動画見ました?」
「んにゃ」
「面白いですよ」
マジか。
さつばれ。
『五月晴れの慕情』
というオタクに人気のアニメだ。
「後で見る」
「それがいいです」
混沌は苦笑した。
良かれ良かれ。
だいたい私と混沌の関係はこんな感じ。
ネトゲしながらコンピュータ関連やオタク産業について語り合う。
その時点で相手の年齢が知れるけど、まぁネトゲなんてそんな物だ。
ある種、コミュニケーションだけで関係を構築する以上、良識と性格が好感度の基準になってしまう。
結果、マリンと混沌は趣味が合った。
現実世界では結婚できないのでゲームでは。
我ながら、
「虚しい」
くらいは認識してるけど、こんなコンピュータオタクを引き取りたい男性なぞ現実に居はしないだろう。
別宇宙にならもしかしたらリア充な私も居るかもしれない。
量コンでそれをこっちの世界に適応できれば話は早いんだけど……。
「どうかしましたか?」
黙っていると混沌が尋ねてくる。
「浮気について」
「ぶっ飛びましたねオイ」
苦笑されてしまった。
夫は優しいイケメンさんです。




