女学園の先生は1
「マジさぁ。私ら終わってない?」
「だぁよねぇ」
「完全に行き遅れた~」
「この前さぁ。あっしの友達、結婚したって。嫌味かっつの」
「マジでマジで? どんな出会い?」
「それがキャバクラで働いてたらしいんだけど~、金持ちの男に店でプロポーズされたって~。ありえねぇっしょ~」
「そっちかぁ。そっちに行くべきだったかぁ」
「聖職者とかネーム誰がつけんたんかね? 地獄っしょ」
「子どもの頃は憧れてたけどさ。ぶっちゃけ成ってみると夢ないよね~」
「ほんとソレ」
飲み会の席での雑談だ。
「…………」
私は一人隅っこで焼酎を飲んでいた。
「凜ちゃんは飲んでる?」
凜ちゃん……須磨凜が私の名前だ。
話しかけてきたのはみゃっこである。
本名で呼ばれることを嫌うため、
「みゃっこ先生」
と学園では呼ばれている。
私も例外じゃない。
ともあれ、
「この通り」
私は焼酎のグラスを胸元の高さまで掲げる。
飲んでる証拠だ。
「凜ちゃんはどんな感じ? 男の気配無い?」
「全く以て」
当方自然分娩です故。
今の世ではデザイナーチルドレンが流行っているけど、私の親はそんなことに興味も覚えなかった。
別に責めているわけでは無い。
少なくとも生まれが業なら性格は卑屈だったろうから外見が良くても貰い手はいないだろう。
「だよね。凜ちゃんは私のお嫁さんだもん」
ケラケラ笑って泡盛をカパカパ飲むみゃっこ。
死ぬ勢いだが私はみゃっこが二日酔いに苦しんでいるところを見たことがない。
異常なまでのウワバミなのだ。
基本的にみゃっこのペースについていけるのが私だけなので、一緒に飲んでいる内に仲良くなったという経緯。
「凜ちゃ~ん……結婚してぇ……」
「無茶言うな」
焼酎を飲む。
「親がうるさいの。早く家庭を持てって。どうすりゃいいのよ?」
「結婚すれば良いでしょ?」
「凜ちゃんと?」
「お・と・こ・と」
少なくとも現在でも日本で同性婚は不可能だ。
「凜ちゃんが男だったら良かったのに……」
「生憎と女性です」
そも男だったら職業の関係上みゃっことは知り合えていない。
「凜ちゃんのいけず」
「みゃっこの趣味が悪いだけ」
まぁ冗談の類ではあろうがたまにみゃっこが怖くなることもある。
仮にそっち系だとしても私は無い。
黒髪に黒眼。
どこまでも凡庸な日本人生まれで、ご尊顔も平凡そのもの。
生まれてこのかた浮いた話も無く。
どちらかといえば男は恐怖の対象でさえある。
化粧の類もしていないし身だしなみも聖職者としての最低限。
あくまで、
「見苦しくはない」
程度だ。
趣味はネトゲで休日は引き籠り。
そんな女を誰が愛せるというのか?
色々と楽な生き方を選んだため、一般的な幸せを切り捨てている自覚はある。
一生独身決定。
孤独死して転生したらファンタジー世界のお姫様にしてもらえるように神に祈ろう。
基本そんな感じ。
別段ロマンスの神様に期待していない。
合コンの類にも参加しないし、ナンパもされない。
美人ならまだ可能性はあろうけど……私じゃね。
苦笑する。
好きになってくれる人もいないため、人生を趣味と仕事に持って行かれている確信はある。
その辺は先述の同僚の言葉通り。
出会いが無い。
女子力が無い。
運命線も無い。
無理ゲーです。
ゲームは得意だけどリアルは無理。
コンテニュー無しで経験値ランダムって何よそれ?
そんな感じ。
「凜ちゃんとなら結婚できるよ私?」
「みゃっこにはきっと良い人が見つかるよ」
私は焼酎を飲みながらお愛想を言う。
「凜ちゃん愛してる」
「へえへえ私も」
「だから好きだよ凜ちゃん」
「みゃっこに彼氏が出来たら浮気相手になってあげるから」
「やーん。情熱的」
「然程か?」
たまにみゃっこの思考は分からない。
グイと泡盛を飲み干す。
「店員さん泡盛おかわり!」
すげぇ。
これで、
「飲んだ気にならないんだよね~」
とか云うみゃっこが。




