近くて遠い距離6
文化祭も終焉に向かっている。
そんな中、
「ん。良い風」
俺と白雪は屋上に来ていた。
本来は出入禁止。
だが立体映像の俺と白雪には適応されない。
自殺しようにもアバターでは無理筋だ。
「来て良いんですか……?」
「立体映像なら問題ないだろ」
ゴッドアイシステムが何かしらオーバーアシストしない限りにおいては。
俯瞰の光景。
学校中がワイワイガヤガヤ。
それがうるさくて屋上に来た。
騒がしい場所では雰囲気が生まれない。
「前にお前言ったよな」
「何を……?」
「俺が好きだって」
「言いました……」
それが俺たちの最初。
根源の一端。
「嬉しかったよ」
「え……?」
まぁそうなるよな。
「俺を気味悪がらない人間ってのは貴重なんだ」
「忍くんは……格好良いですよ……」
「お前みたいな人外の感性を持っていればな」
「はあ……」
ぼんやりと白雪。
「そして嬉しい言葉も言ってくれた」
「何か……言いましたか……?」
「俺の事を」
「忍くんの事を……?」
「格好良いって」
「格好良いですから……」
「可愛いでも愛らしいでもないだろ?」
「それについても……否定はしませんが……」
「ま、それは俺の業だ」
俺って云うか俺を産んだ親のだが。
「言ってくれたのはお前だけだ」
誾千代ですら言わなかった。
「それがどれだけのことか……お前はわかってないだろ?」
「えと……はい……」
「お前が初めてなんだよ。男の子として好きになってくれたのは」
誾千代も男とは認識していたが別の理由もあった。
が、白雪は違う。
最初から最後まで、
「格好良い男の子」
と俺を崇拝してくれた。
「すごく嬉しかったんだぜ?」
「さして気にして言った言葉でも無いのですけど……」
「それでもだ」
「あう……」
茹だる白雪だった。
「今でも俺の事好きか?」
「忍くんは……意地悪です……」
「生来のモノだ」
「好き……ですよ……?」
「俺も好きだ」
「っ……!」
白雪が絶句する。
真っ赤になって……後に真っ青になって……それからまた真っ赤になる。
信号かお前は。
「ほ……本当に……?」
「少なくとも俺は真剣だ」
「忍くんが……私を好き……?」
「ああ」
「嘘です……」
「何を以て?」
「私は……忍くんをイジメの対象にした……原因ですから……」
「それはお前の責任じゃない」
いっそ傲慢だ。
七つの大罪の一角。
「でも……私はドMで……」
「十全に承知している」
我ながら難儀な女の子を好きになったものだ。
「誾千代さんにも悪いし」
「そっちについては決着を付けてる」
半分嘘だが。
「私で……いいんですか……?」
「少なくとも俺にはな」
「体は遠いところにありますよ?」
「条件は同じだろ」
「あう……」
真っ赤になる白雪。
俺と白雪はデータ上でしか交流したことがない。
近くて遠い距離。
こんなにも近くで言葉を紡いでいるのに……肉体は個別に遠くにある。
アバターパラドックス。
「で、だ」
「……?」
「地祇白雪」
「はい……」
潤んだ瞳が俺を見る。
結果が分かっていてもコレには慣れない。
「俺と付き合ってくれ」
好きな女子への告白は。




