近くて遠い距離5
次のデートのお相手は白雪だった。
「あう……」
萎縮しまくる始末。
何この可愛い生き物。
「何処か行きたいところはあるか?」
問うと、
「忍くんの……行きたいところで……」
そんな答え。
「とは言ってもな」
困惑する。
「俺は大体回ったからお前が先導して欲しいんだが」
「あう……」
萎縮。
「じゃあ……えと……えーと……」
文化祭のパンフを見ながらたじろぐ白雪。
「チア部の記念撮影など……どうでしょう……?」
「まぁ構いはせんが」
そんなわけでそんなことになった。
チア部の催し物。
コスプレ記念撮影。
白雪がチアガールの衣装(データである。念のため)に着替えて俺とツーショット。
チア部の部員は俺にもチアガールの衣装を着せようとするが、
「氏ね」
俺は断固として断った。
別段女装に何かしらの感情はない。
一部虚言でもあるが。
実際誾千代の学園祭では女装したしな。
だからといってチアガールの衣装に着替えるほど物好きでもないのだ。
とりあえず写真はデータで送って貰って、
「えへへぇ……」
白雪が喜んでくれたので、
「まぁいいか」
そんな気分。
それから電子アイスクリームを食べながら文化祭を見て回る。
「ふわぁ」
「ふおぅ」
「あはぁ」
「ひゃあ」
一々白雪は感嘆とした。
地元取材の展示会にも感動している様子だ。
「…………」
何が楽しいんだかな。
そんなことを思いながら、今度は手芸部のメイド喫茶に入る。
そこで電子コーヒーを二人で注文。
俺はブラック。
白雪はミルクと砂糖ありあり。
席についてコーヒーを飲んでいると、
「あの……」
と白雪が尋ねてくる。
「何だ?」
「私といても……面白くありませんよね……」
自虐。
「何でそう思う?」
「私……お喋りも下手ですし……空気も読めませんし……」
「学校のアイドルだろ?」
「周りに合わせることだけは……昔から得意なんです……」
「それは空気が読めるって意味じゃないか?」
「そうでは……まぁあるんですけど……」
「ならいいじゃないか」
「でも……肝心なところで読めません……」
「何が言いたい?」
「ごめんなさい」
真剣に白雪は頭を下げた。
ボロボロと涙をこぼす。
「私の……っ」
後から後から涙がこぼれ落ちる。
「私のせいで……っ」
「俺が虐められたと?」
「はい……」
「ずっと気に病んでたわけだ……」
「ごめん……なさい……」
「あんまり気にすんな」
俺はコーヒーを飲む。
「人の悪意には今更だ」
「でも……でも……」
「中学校の頃も虐められててな」
「え……?」
「誾千代に助けて貰ってたんだが……大体思春期くらいから人が嫌いになってた」
「……そうなんですか……?」
「そうなんです」
自分も。
他人も。
どちらも嫌いだ。
反吐が出る。
「だから他人に一切期待しなくなった」
「誾千代さんも……?」
「彼奴は例外」
「あう……」
「どした?」
「誾千代さん……この世のモノとは思えないほど……綺麗ですから……」
デザイナーチルドレンの究極系だからな。
「私の慕情なんて……誾千代さんの想いに比べれば……」
「知ってるのか?」
「目を見れば……分かります……。誾千代さんは……忍くんが大好き……」
「乙女だなぁ」
シンパシー。
「恩人でもあるんですよね……?」
「まぁな」
コーヒーを飲む。
「あう……」
また涙を流す白雪だった。
「白雪。少し付き合ってくれるか?」
「いいです……けど……」
「じゃあ行くか」
ネットマネーで精算して俺と白雪はメイド喫茶を出た。




