風邪を引く馬鹿6
とりあえずバハムートで初心者用雑魚キャラを薙ぎ払いながら超過疾走システムを練っていくスノー。
八・五倍速で動きドラゴンブレスで大破壊を撒き散らすバハムートはそれだけで恐怖の対象だった。
多分レベル二百くらいのクエストなら単独でクリアできるだろう。
スノーのVR適性とバハムートの異常数値を以てすればその程度は軽くやれる。
自身に超過疾走システムを適応できない代わりにサモナーは完全に戦闘能力を使役するモンスターに依存させる。
バハムートの有益性を発揮すれば限凸しなくとも限凸を優位に飛び越える。
ともあれ超過疾走システムの練習をした後、スノーはログアウトした。
俺はシリョーとティータイム。
「ねぇ雷遁ちゃん」
「何だ?」
コーヒーを飲む。
「次の日曜、瀬野四の文化祭でしょ?」
「だな」
「隠密デートしない?」
「隠密デート?」
「私が仮面アバターで参加するから文化祭を色々案内して欲しいの」
「俺は仮面アバターを持ってないぞ」
「オドの……今のソレで良いじゃない。どっちにしろ保健室登校ならうるさくも言われないでしょ?」
「そりゃそうだが」
白髪赤眼の美男子姿で文化祭を巡れと申すか。
微妙に難易度が高い。
「いいじゃんいいじゃん。ね? ね?」
「何を企んでる?」
「何も?」
即答だった。
嘘をついてる証拠だ。
「お前が即答するときは大抵碌でもないんだよ」
「にゃはは。照れるにゃ」
「そのニャンコ言葉もな」
「いいじゃん。お茶の間アイドル大日本量子ちゃんとデートできるんだよ?」
「興味ねぇ」
「うん。だから雷遁ちゃんとは友達でいられるんだけど」
お前は他に想い人がいるしな。
俺もだが。
コーヒーを飲む。
「というわけで集合は瀬野四の保健室で良いね? 開催の九時に集合って事で」
「俺の意見は?」
「聞いてない」
「なら従う必要もないな」
「そう云わず」
「正直なところ奈落を覗き込む心地だ」
「まぁ半分は当たり」
「もう半分は?」
「お節介」
「何の節介だ?」
「文化祭になれば分かるよ」
俺が半眼でシリョーを睨む。
「いやん」
それで誤魔化せると思うなよ。
「別段いいでしょ? 文化祭に参加する外来人は当然アバターが大半だろうし。その一部に組み込まれるだけだよ」
「…………」
理屈の上ではそうかもしれんが……。
「お前が面白がるほどの厄介事が透けて見えるんだがな」
「私の真摯な目を見てよ」
「抉り取って良いのなら」
「やっぱりSの気質があるよね」
「光栄だ」
嘆息。
「言っとくが俺に不利益を与えたら問答無用でフォーマットするぞ」
「友達甲斐がないなぁ」
「背中にナイフを隠した友情なんざ御免だ」
「お互いにね」
「…………」
反論できないのは俺の業か。
とりあえず頷いてログアウト。
現実世界に回帰する。
「げほ……」
…………。
そう言えば風邪引いてたんだっけか。
「忍」
俺を呼ぶ声があった。
俺が無条件で家への侵入を許す三人。
その内、白雪と量子は尋ねた。
残るは……、
「お前だよな」
御剣誾千代だ。
「もうすぐ君の学校の文化祭だろう?」
「だな」
「デートしてくれないか?」
「お前もか」
「他に誰が?」
「量子」
「白雪くんは?」
「まぁ暇があればって程度だな」
「悪党」
「褒め言葉だ」
肩をすくめる。
「私に威圧されない君は希少だ」
「心臓でな」
「少しくらい夢を見せてくれ」
「お前の慰みになるなら吝かじゃないが……むしろ逆効果じゃないか?」
「それでも君を想っていたい」
なら言うことはないな。
やれやれ。




