風邪を引く馬鹿4
で、そんなわけで暇潰しにオドに来ていた。
ヴァーチャルリアリティは良い。
肉体の怠さから解放されて縦横無尽に活動できる。
その上で肉体に負担が反映されないというのも利点だ。
「おおおっ!」
わらわらと湧く雑魚キャラを両手の剣で屠っていく。
体が軽い。
羽が生えたようだ。
超過疾走システム。
その十倍速なのだから興奮の度合いも高かろうと云うモノ。
アドレナリン出まくりである。
ボスが現れるが相手の超過疾走システムは三倍速。
こっちの三分の一以下。
雑魚を両手剣で滅ぼして、ボス相手にはシールドバンカー……ピースブレイカーを装備して戦う。
「ピース……………………ブレイカー!」
パイルバンカーがボスの心臓を穿つ。
ソレが決着。
クエストをクリアしてフリーフィールドに戻る。
それからお茶をする。
ゲームマネーでコーヒーを頼んで飲む。
「やっほ」
現れたのは黒髪セミロングツインテールの美少女アバター。
シリョーだ。
「寝てなくて良いの?」
「しっかり寝てる」
肉体はな。
「一応精神も肉体に影響するんだけど」
「暇は人の憎悪すべき概念の一つだ」
「駆逐は出来ないだろうけどね」
「そういうところは風邪と同じだな」
「根絶不可能の骨子に立脚している……か」
「そゆこと」
「ていうか限凸しないの?」
「レベル及ばないしな」
「ソードマンとしてならおっぱい星人より役に立ちそうだけど……」
「おっぱい星人?」
「おっぱいが好きな人の総称」
それはわかるが。
というかソレも死語じゃないか?
おかんかお前は。
それからシリョーはコーヒーを頼んで俺と同じ席に着く。
「ソードちゃんは?」
「不和中」
「…………」
シリョーの瞳が半眼になった。
「なんだ? 誘ってるのか?」
「雷遁ちゃんは好みじゃないよ」
「清々しいな」
コーヒーを飲む。
「ていうかアバター変えてよ」
「何度も断ってるだろ」
何を今更だ。
「白髪赤眼って……」
「ウサギが好きなんだよ」
「悪意の無い邪悪だね」
「そこまでのことか?」
「都合が悪いことを人は悪者って呼ぶのよ」
「なら距離を取れ」
「出来るならしてるよ」
「それもそうか」
ことドライなシリョーが付き合っているのだから何かしらのファクターはあるのだろう。
同じくドライな俺にはどうでもいいことだが。
「何で不和になったの?」
「ソードに聞け」
「ログインしてないのにどうやって?」
「運命があるなら何時かは邂逅できるだろ」
「雷遁ちゃんとは運命感じないけど……」
「お生憎様だな。同感だ」
「なんでオドプレイヤーって誰も彼も捻くれてるんだろう?」
「仮面舞踏会の嗜みだからな」
「アバターがマスク?」
「お前以外はな」
シリョーは大日本量子だ。
当然オドの日本人プレイヤーの素性はさっくりと覗ける。
それも片手間で。
「じゃ、とりあえず付き合ってよ」
「レベル五百台のお前にどう付き合えと?」
「レベルはそっちに合わせてあげる」
「ならいいが」
そんなわけでそんなことになった。
「ピース……………………ブレイカー!」
ボスの心臓を穿つ。
「やっぱり強力ね。ピースブレイカーは」
「レジェンドレアだからこれくらいは範囲内だろう」
ていうか、
「ミラクルレアのグロウランスを持ってるお前には言われたくない」
「にゃはは。色々とレアアイテムの流通経路を握っているもんで」
「救い難いな」
「限凸してる時点で今更でしょ」
うーん。
「その通り」
「にゃは」
ニッカリとシリョーは笑った。
そしてまた茶の時間をすると、
「…………」
ピコンと電子音。
フレンド登録しているスノーがログインしてきた。




