忍と誾千代の好きなとこ4
「で、まぁ」
イメージキーボードをカタカタ。
「ここに変数を加えて」
カタカタ。
「このグラフを改竄して」
カタカタ。
「イメージを投射」
カタカタ。
「出来上がりっと」
俺は黄金を産みだした。
空いたスチール缶を量子変換して錬金術で再構築。
空き缶は黄金のソレへとなった。
「ふわぁ」
と目を輝かせる誾千代。
「すごいねぇ……」
「手品の類だ」
「いや、これは経済システムへの反逆の狼煙になるよ」
「それを理解しているからこうやって監視がつくんだがな」
俺は量子を指差した。
「にゃはは。申し訳ないけどこれも給料の内だよ」
「働いてないがな」
「可愛い顔してやるもんだね」
「顔と技術は関係ない」
「それはそうだけど……」
難しい顔をする誾千代。
「天は二物を与えるんだねぇ」
「物か? コレ?」
「少なくとも通常じゃ有り得ないさ」
「それはわかってるが」
「やはり君は凄い。私の想像以上だ」
「恐悦至極」
「ところで忍くん」
「なんだ?」
「私のグループに入らないか?」
「女子の?」
「まぁそうなんだが」
「念を押すが本当にそっちのケは無いんだな?」
「誓うよ」
「よろしい」
「私は君を失いたくないんだ」
「光栄だな」
「そして私と付き合うことで君が嫉妬を受ける立場になったのも把握している」
「賢明だな」
「であれば私には君を……恋人を保護する義務がある」
「生憎と俺は人間嫌いだぞ?」
「私のこともかい?」
「誾千代は例外」
「では少しずつ輪を広げていこう」
「難儀な性格だな」
「忍くんを思えばこそ」
「だよね~」
量子がうんうんと頷いた。
「何納得してるお前」
「やっぱり恋は盲目だよ」
「お前が言うか?」
「酷いなぁ」
「アイドルは恋愛禁止だろ」
「ソレが悩み」
「想い人の反応は?」
「梨の礫」
「ご愁傷様」
「あ~う~」
「うるさい黙れ」
「忍ちゃんドS」
「照れるな」
「誇りを胸に」
そこまでは割り切れんが。
「ところでこの黄金の缶はどうすれば?」
誾千代が手元で弄びながら問う。
「売り払うなり質に入れるなり好きにしろよ」
「じゃあ、はい」
誾千代がシルバーアクセサリーの指輪を差し出した。
「これがどうした?」
「ペアリング」
「誰のだ」
「私と忍くんの」
「用意周到な奴め」
「黄金に変えて」
「とのことですが量子はん?」
「目を閉じて何も見えず」
見逃してくれるらしい。
しょうがないので量子変換した後、黄金に変える。
二十四金の指輪が二つ。
それをつける俺と誾千代。
「うへへぇ」
完璧性を重んじる誾千代にしては珍しい相好を崩した笑いだった。
それがまた胸を締め付ける。
「喜んで貰えたなら光栄だ」
「二十四金の指輪のペアリングなんて金婚式の夫婦みたい」
「そこまで年食ってねえよ」
「わかってるけどさぁ……」
感情からは逃れられないと言うことだろう。
その程度は分かる。
そうして二十四金の指輪をして登校することで俺と誾千代の恋仲は確固たる物に為ったのだった。
俺の人間嫌いは相変わらずだが誾千代は……何というか毒気を抜かれるさっぱりとした気質の持ち主だ。
慣れるのは容易かった。
崩壊もまた容易かったが。




