忍と誾千代の好きなとこ3
その日の放課後。
ホームルームを終えて電子書籍を閉じた俺に、
「では行こうか忍くん」
と不敵に並び立つ御剣。
ザワリと波紋がクラスに広がる。
ついでに噂そのものは学校中に広まっていた。
何せ難攻不落の学内アイドル……御剣誾千代に恋人が出来たのだ。
そりゃま震撼するわな。
誾千代は俺の腕に抱きついて、
「何処に行こうかマイハニー?」
と甘えてくる。
男子は嫉妬の目。
女子は困惑の目。
果たしてどうにもならず。
しょうがないので腕を組んで学外に出る。
ちらほら注目は集めたが、それらから距離を取って俺は尋ねた。
「どういうつもりだ?」
「何がだい?」
「何でキスした? 初めてだったんだぞ?」
「光栄だね」
クスリと小悪魔っぽく御剣は笑う。
「私もだよ」
「…………」
天を仰ぐ以外に方法があるなら教えてほしいもんだ。
「ちなみに処女だよ」
「俺は童貞だ」
「いやん」
「誤魔化しはいい」
「不名誉だなぁ」
知ったことか。
「同情のつもりか?」
「は?」
素で聞き返された。
「何が?」
本気か冗談か判断がつかない。
「だから御剣が……」
「誾千代と呼んでくれたまえ」
難易度が高いにも程がある。
「ぎ、誾千代が……」
ぎこちなく名を呼ぶ。
「俺の意思無い告白を真に受けてどうする?」
「でも忍くんのことが好きだったし」
「俺に何がある?」
「可愛い顔してるじゃない?」
「お前そっち系か?」
「乙女にとって『可愛い』は何にも勝るステータスなんだけどね」
「まぁそっち方向で整ってるのは否定しないが……」
「だろう?」
何でお前が誇らしげよ?
「で、アレは男子生徒の可愛い悪戯だって分かってるだろ?」
「それはまぁ」
そこまで空気の読めない奴じゃない。
「じゃあなんで受諾した」
「まず私が忍くんを気にかけているのを前提として……」
それが前提条件なのがまずおかしいんだが。
「その上で二つほど思いはある」
「一つは?」
「こっちからアプローチしようと思ってたから手間が省けたのが大きいよね」
だから何で俺よ。
スクールカースト最底辺だぞ?
「もう一つはつまんないことに絡まれてる忍くんを助けたかったから」
要するに、
「俺を公衆の面前で失恋させるというイジメに対抗するために話を受けたって事か?」
「前提条件有りきでね」
「迷惑だ」
「私はこんなにも君にときめいているのに」
そう云うと誾千代は俺の手を取って胸に当てる。
中学生では有り得ない豊かな乳房に手を当てられて俺は狼狽した。
「心臓がドキドキしてるだろう?」
知らんわ!
おっぱい揉まされた感触しかねえよ!
とは言えない。
「ふふ、君は可愛いなぁ」
「そういうお前は本当に処女か?」
「誓おうじゃないか」
「何に?」
「君への恋慕に」
「そりゃまた不確かな物だな」
「確固たる物だろう?」
「形而上的なのに?」
「光を反射しないから見えないだけで乙女の恋心は黄金よりも重たいよ?」
さいでっか。
「忍くん?」
「何だ?」
「改めて私の恋人になってくれ」
「俺で良いのか?」
「君でなければダメだ」
「そもそも何で俺だ?」
「君がデクノボーだからだよ」
「デクノボー……」
大層な侮辱を受けたなオイ。
「君は他人の事情を斟酌しない。常に自分第一でスクールカーストに見向きもしない。その孤高に私は胸を打たれる」
「人間が嫌いなだけだ」
「では私だけは君の味方をしよう」
「は?」
「何にも変えて君の防風林になってあげるよ。だから人間を嫌っても私を嫌いにはならないでくれ……!」
とりあえずおっぱいに押し付けている俺の手を解放してくれませんかね?




