忍と誾千代の好きなとこ2
今は昔の物語。
中学校の頃。
俺は他人への興味を無くしていた。
本を友として無為に時間を割く。
先天的に脳がおかしく、電子空間内でデータ上の核融合を実現できる以外は他に取り柄の無い中学生だった。
顔は美貌だが女顔。
男子にも女子にも気味悪がられた。
スクールカーストの最底辺。
しかし本とオドがあれば別に娯楽に困ることはなかったし、むしろ多人数で群れる事に窮屈さを覚えない友達という概念を理解できなかった。
政府には技術の秘匿義務と引き替えに生活を保障して貰えるようになったため、未来や老後についても心配していない。
両親は仰天していたが、それも時間が解決してくれた。
学校に行くのもいっそ憂鬱ではあったが出席も単位の内であるため義務教育程度はこなさねばならないこのジレンマ。
思春期の男子女子は鬱陶しい。
お笑いがどうだとかスポーツ界がどうだとかアイドルがどうだとかオシャレがどうだとか。
それらを共有して何のメリットがあるよ?
そんな捻くれた中学生。
故に電子書籍を読みながら時間を潰す毎日。
が、孤独とは常にイジメと背中合わせだ。
「ようよう忍ちゃ~ん」
「可愛いねぇ」
「マジパネぇ」
なら崇拝しろ。
心の中で反論する。
「俺たちがお友達になってやろうか?」
「ひゃはは! タッくんやっさし~い!」
「恋バナしようぜ恋バナ!」
とりあえず俺に絡んでくる男子グループの一人がタッくんと呼ばれていることは分かった。
「忍くんは誰が好きなのかな~?」
いねえよ
電子書籍を読みながら嘆息。
こっちに絡む暇があるなら自分らで恋バナしてろよ。
「ちょっと待って。ビビッと来た!」
「まさかまさか!?」
「忍くん……恋しちゃってる~?」
してねぇよ。
「はい分かりましたぁ! 忍くんの好きな人……それは学校のアイドル御剣誾千代さんでしょ~?」
まぁ綺麗な奴だとは思っているがな。
クラスメイトであるから視界には入る。
いわゆる一つのデザイナーチルドレン。
銀色の髪に真珠の瞳。
静謐と完璧が両立している意味通りの学校のアイドル。
告白してくる人間多数らしい。
未だ成功した男子という噂は聞かないが。
「御剣さ~ん」
男子の一人が御剣を呼んだ。
「何だい?」
女子グループで喋っていた御剣が興味をこっちに移す。
「忍くんが御剣さんのこと好きだってさ~」
ゲラゲラ笑いながら意図しない代弁をする男子。
だから他人は嫌いだ。
黙って自分らで盛り上がれば良いのに、弱者をダシにして面白がる。
そんな連中の了見を問いただしても意味が無いから俺は黙ったまま視線を逸らした。
「忍くん公開告白!」
「マジパねえっす!」
「かぁっこいぃ~!」
オーバーアシストで殺すか?
そんなことまで考えてしまう。
と、
「光栄だよ忍くん」
御剣がそう云った。
「は?」
ポカンとしたのはクラスメイトたち。
御剣はこっちに歩み寄ると俺のおとがいを持つ。
そしてグイと顔を近づける。
「両想いだね」
「は……?」
とこれは俺。
コイツ。
今なんつった?
「では私は忍くんに愛を注ごう。代わりに」
代わりに?
「注いだ愛の分だけ忍くんは私を愛してくれ」
そういうと御剣は俺にキスをした。
マウストゥーマウス。
「は?」
「へ?」
「ほ?」
「「「「「キャー!」」」」」
声の爆弾が炸裂した。
男子グループはからかいのつもりで俺をダシに御剣を巻き込んだのだろう。
スクールカースト最底辺の俺が天辺の御剣にフラれる。
そしてソレを楽しむ腹だったに違いない。
が、予定は確定ならず。
俺と御剣は恋仲になってしまった。
「では今日の放課後は開けておくように。デートするから」
「えーと……え?」
男子グループの一人の認識が現実から遊離していた。
さもあらんが。
俺もこの展開は予想外。




