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オーバードライブオンライン  作者: 揚羽常時
『OverDriveOnlineAnother』Episode1:ステイインドアーズ
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学園のプリンス6


「はっはっは」


 誾千代は愉快そうだ。


「いいじゃないか」


 何がだ?


「プリンス。たしかに君は天が私に遣わした王子様だよ」


「反論する気にもならんな」


 声をかけられることはもはや常時。


 一緒に記念撮影をさせられること多数。


 ロザリオ(データ)を差し出されること複数(全て断ったが)。


 告白されること両手の指では数え切れん。


 アドレスを聞かれることも多数(教えなかったが)。


 誾千代との関係を根掘り葉掘り。


「いい加減にしろよ」


 と云いたくなる。


 誾千代はカリスマがあるためしょうがないが、顔ともう一つくらいしか取り柄のない俺にまで慕情を寄せられても困る。


 うんざりして二人きりになれるように校舎裏に身を潜める俺と誾千代だった。


 そこに、


「見つけましたわ!」


 声が掛かった。


「またか」


 俺がそう思うことと裏腹に、今度の女子は憎悪の視線で俺を射貫いた。


「おや?」


 と俺は思うわけだ。


「あなたがプリンスですの?」


「認めたつもりはないがな」


 くっくっくと誾千代が笑う。


 本気で面白がっているらしい。


 こっちの身にもなれ。


「あなたが……! あなたのせいで……!」


「何かしたか?」


「即刻お姉様と別れなさい!」


「だってよ誾千代?」


「有り得ないねマイプリンス」


「そういうお前は誰よ?」


「プリンセス……誾千代お姉様親衛隊隊長ですわ」


「人気者なんだなお前」


「さもあろう」


 不敵な奴め。


「気に入らんなら寝取って構わんぞ」


「そんな不敬は犯せませんわ!」


「まぁそうなるよな」


 ミッションスクールだし。


「で、どうしろと。別れれば良いのか?」


「その後、二度と近づかず連絡もしないことを誓って貰いますわ」


「嫉妬は七つの大罪の一角じゃなかったか?」


「全ては愛故に!」


 だからそれが嫉妬だろ。


「プリンセスの自由意志を尊重するのならば誾千代の恋慕を邪魔するのは不敬罪悪と思わんのか?」


「むぐ……!」


 この程度の皮肉に閉口されてもな。


 女生徒はツカツカとこちらに歩み寄ると、パシンと俺の頬を張った。


「不届き者!」


 顔を真っ赤にして赫怒する。


 興奮しているのだろう。


 アドレナリン出まくりだ。


 肩で息をしている。


 多分運動の成績は2ってところか。


「叩いた手は痛くないか?」


「っ!」


 また閉口する女生徒。


「別段お前の恋心にまで口出しはせんが……暴力には頼るな。本当に大事な人に軽蔑されたくなければな」


「あなたが! それを言いますか!」


「プリンセスを敬愛することと恋敵を掣肘することとはまた別の話だろう」


「…………」


「叩いた手の方が痛いこともある」


「…………」


「ついでに言えば一神教では暴力は忌避されている」


「…………」


「道を外れた子猫ちゃんが居るのなら、諭すのも年上の務めか」


「何を……っ!」


「量子~」


 コレは思念会話だ。


「何かな?」


「錬金術使うが見逃してくれ」


「貸し一ね」


「承ろう」


 そういうことになった。


「誾千代」


「なんだいマイプリンス」


「そこの女子のロザリオを量子化してこっちに送ってくれ。アバターだと量子変換干渉は面倒くさいから」


 というか基本的に禁止されている。


「ほら、お姉様にロザリオを貸して?」


「あう……」


 女生徒は誾千代の言葉には借りてきた猫のように大人しい。


 で、ロザリオをデータ化して受け取る。


「さてお立ち会い。今此処に神の奇跡を演じてみせましょう」


 そう言って俺はイメージコンソールとイメージキーボードを出現させた。


「何する気?」


 女生徒は警戒に覇気を強めた。


「だから神の奇跡」


 ロザリオのデータを改竄する。


 エネルギー問題は解決しても物質問題についてはまだ人類には解決手段がない。


 量子変換はあくまで規格データに変換して、再出現時にはそのままの形で再現される。


 そういう決まりだ。


「データなんだから好き勝手に弄くり回せるだろう」


 という声も少なくないが例外を除いてそれは未だ確立した技術ではない。


 そして俺はその例外。


 大日本量子の監視を常に受けている囚われ人。


 此度は質量が小さいため数分もあれば作業は終わった。


 量子核融合演算を行使した後、そのデータを女生徒に返す。


 量子変換。


「っ!?」


 絶句する女生徒。


 さもあらん。


 シルバーアクセサリーのロザリオが黄金に変わっているのだから。


「これは……!」


「俺の得意技。量子データを介在した核融合反応演算。上の連中は単純に錬金術って呼んでるがな」


 未だ誰にも為しえない質量保存則の崩壊。


 俺は黄金にしか変えられないためまだまだ発展途上ではあるが、それでも貴重な技術であることは目の前の女生徒も理解できるだろう。


「これでも俺が誾千代の隣に立つには足りないか?」


「あ……う……」


 黄金のロザリオと俺を交互に見た後、女生徒は真っ赤になって俯いた。


「どした?」


「プリンス。あなた様のお名前は?」


「神鳴忍」


「では忍お姉様……」


 お姉様?


「誾千代お姉様&忍お姉様親衛隊隊長としてわたくしはこの感動を学園に広めますわ!」


 錬金術については伏せるよう説得した。


「相も変わらず」


 くつくつと誾千代が面白そうに笑う。


「君は誰彼魅了するね」


「生憎だったな」


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