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オーバードライブオンライン  作者: 揚羽常時
『OverDriveOnlineAnother』Episode1:ステイインドアーズ
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学園のプリンス5


 で、


「何の冗談だい?」


 誾千代は開口一番皮肉った。


「しょうがあるまい。悪意の無い連中は邪険に出来ん」


 何のことかと言えば、俺を取り巻く女生徒の数々だ。


 最初の二人とやりとりしていると、俺が外部から来た超絶美少女という風聞が流布され、


「お近づきになりたい」


 という女生徒が一人、また一人と増えていき、気づけばレミングの大行進になっていた。


 崖は誾千代と云う名だが。


「忍様! 是非アドレスを!」


「忍お姉様! 淫らなわたくしにお仕置きを!」


「忍様! 是非とも登校に転校いらして!」


「忍お姉様! わたくしのお姉様になっては!」






「…………」






 誾千代はこめかみを人差し指で押さえた。


「わ、プリンセス!」


「え、待ち人って……?」


「忍様のお相手はまさか……」


 そのまさかだ。


 誾千代はパンと一拍した。


「解散」


「もしやプリンセスの想い人というのは……」


「うん。こっちの忍だよ」


 そう言って俺の肩に手を回して(アシストだが)ほっぺにキスをする。


「「「「「きゃー!」」」」」


 女生徒たちはどよめいた。


「まさか難攻不落たるプリンセスの想い人が学園祭に来るなんて!」


「プリンセスの学園祭デート!?」


「これは特ダネ」


 あーと……、


「お前、何者?」


「私も困ってる」


 だろうな。


「プリンセスって何よ?」


「学園の学年別にそれぞれ一番綺麗な美少女に与えられる呼称だよ。高等部一年のプリンセスが私というわけだ」


「まぁお前の完璧性ならそうだろうな」


 銀色に輝く髪と真珠の瞳……くわえて息も出来ぬ静謐の美貌を併せ持てば持ち上げられて何も過不足がない。


「お前も難儀だな」


「君をダシに告白してきた女生徒を切り捨ててきたからね」


「おい」


「愛してるよマイハニー」


 迂遠な表現だが、


「恋人役をやってくれ」


 と了解した。


 当人はそれ以上を求めているだろうが。


「ともあれ行こうか。あまり楽しめるとも思えないが一応は祭りなんでね」


「そゆわけでさよなら」


 付き纏ってた女生徒たちにさよならして俺は誾千代の背を追いかけた。


「どこか行きたいところはあるかい?」


「パンフとか無いのか?」


「はい」


 すかさずデータで差し出してくる。


 こういうところはそつが無い。


「…………」


 聖歌隊による合唱。


 吹奏楽部による聖歌演奏。


 ロザリオ授受コーナー。


 演劇『創世記』


 聖書朗読。


 茶会体験。


 生け花体験。


 エトセトラエトセトラ……。


「本当に祭りか?」


 一応言質を取りたかった。


「しょうがないだろう。文化祭とはいえ格式あるミッションスクールだ。それ相応の文化を持ち上げるのは業だ」


「どれにも興味もてんのだが……」


「生憎だな。私もだ」


 ブルータス、お前もか。


「で、お前のプランは?」


「私の部屋で駄弁るというのはどうだろう?」


 嘘だと言ってよバーニィ!


「ていうか寮って……」


「別段祭りに参加することは否定しないがね」


「とりあえずブラブラ回るか」


「冷やかし程度で良いだろう。そもそも忍を此処に呼んだのは私の恋人と宣言するためのものでもある。そうである以上見せびらかすのも一手だ」


「へぇへ」


 そんなわけで歩き回って教室を覗いては出るの繰り返し。


 俺もそうだが誾千代はほぼパーフェクトの美貌を持っている。


 完全性がテーマであるため必然だが、それが学園の乙女の心を歪めるらしい。


 それから誾千代と仲睦まじく歩く俺にも視線が来て、同種の憧憬の瞳を向けられた。


 愛らしい乙女に慕情を向けられるのは男として誇らしいのだが、生憎これは例外中の例外だろう。


 誰もが乙女を羨む瞳で俺を見るのだから。


 なんだかね。


 高等部一年においてもっとも美少女とされるプリンセス誾千代。


 そのお相手とあれば噂するには十分らしい。


 多くの生徒の目にとまり、噂話の中核を為し、そして噂が噂を呼んで尾ひれが十重二十重に重ねられていく。


 結果、プリンセスの恋人と言うことで、


「プリンス」


 の二つ名が俺には付けられた。


 超絶美少女でありながら一人称が俺というのもプラスに働いたのだろう。


 頭痛のする思いだ。


 乙女の妄念は真に恐ろしい。


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