学園のプリンス3
次の日。
日曜日。
セットしていた目覚ましがけたたましく鳴って俺を起こした。
とは言っても時計という商品は今やステータスの一種だが。
量コンが奇形的に発達して時計は視界パネルに常時映っている。
目覚まし機能もついているため、さっきの目覚ましは俺の脳内でセットされたソレだ。
で、ある以上、俺以外には聞こえていない。
特筆すべき事でもないが。
「さて……」
起き上がる。
朝のコーヒーを飲む。
視界には黒いセーラー服。
「着るのか? これを?」
いったい何の罰ゲームだ。
試しに自身をモデリングして着せてみる。
「まぁこうなるよな」
りっぱな学園生が出来上がった。
「タイが曲がっていてよ」
とか言われそう。
一応自覚はある。
俺は女顔だ。
それも人目を惹く。
男子にはからかわれてばかりで、女子には気味が悪いと言われた。
特に他人を斟酌しなければ問題となる態度でもない。
そういう意味では悟っているのか。
どうでも良いことだが。
俺はとりあえず部屋を出た。
朝風呂に入るためだ。
描写はしない。
男の入浴はサービスシーンには為らないからな。
サッパリして脱衣所を出ると、
「あ……」
母親とばったり会った。
「ども」
「忍ちゃん……気合い入ってるね……」
「これからデートでな」
その通りではある。
嘘はついていない。
「外に出るの?」
「アバターでな」
「ああ、そ」
心底落胆したらしい。
「どこに行くの?」
「妃ノ守女学園」
「ふぇ!?」
さすがに知ってるか。
「誾千代が学園祭に参加しろってな」
「誾千代ちゃんと付き合ってるの?」
「いんや?」
今日の模様ではどうなるか分からんがな。
「誾千代ちゃんいい子よね」
「否定はしない」
あの完璧性は真似できん。
「外に出て実際に足を運べば?」
「残念ながら客はアバター限定だ」
ガシガシとタオルで頭を拭きながら俺は皮肉った。
「太陽光に当たるとビタミンDが……」
「ビタミン剤を飲んでいるので大丈夫」
俺は部屋に戻った。
ドライヤーで髪を乾かしてセットする。
それからベッドに寝っ転んで、
「リンクスタート」
呟く。
電子世界にダイレクトダイブ。
それから我が家の投影機に干渉して写像を映す。
パジャマ姿の俺だ。
そこにセーラー服を宛がう。
一発で援交できそうな女子高生の出来上がり。
我ながら犯罪的だ。
ついでに髪をリボンでくくる。
更に女の子っぽくなってしまった。
自己嫌悪。
……する程度の折り合いはすでに付けているが。
文化祭まで時間はまだある。
「とりあえずオドでクエストを一回クリアするか」
そういうことになった。
「ピース……ブレイカー!」
ボスの心臓をピースブレイカーで撃ち貫く。
ポリゴンの破片となって消え失せるボスモンスター。
俺はレベルが上がるのを確認すると、それから入手アイテムを閲覧して、
「ま、こんなもんか」
そう呟いた。
するとフレンドチャットが開いた。
スノーだ。
「師匠~」
「何だ?」
「付き合ってください」
「どういう意味でだ」
「十倍速とかマジ無理です」
「気合いだ! と十回叫べ」
「精神論」
「とりあえず俺はマジでログアウトするから一人で頑張れ。超頑張れ」
「そうします」
「よろしい」
そしてオドをログアウト。
「やほ」
自宅に戻ると誾千代がいた。
「寝過ごしたわけでは無いようだね」
どこまで信用されてねーんだ。




