学園のプリンス1
秋と冬の間の季節。
俺はチケットを眺めやっていた。
明日の日曜日。
誾千代の学園の祭りがある。
俺はソレに呼ばれていた。
「行くべきか。行かないべきか」
それが問題だ。
まぁ行くんですがね~。
…………。
……虚しい。
アバターで参加するため面倒は無いが、女学園って……。
貌こそ盛大に裏切っているがこれでも俺は男だ。
当然、
「女子に興味ないか?」
と聞かれれば、
「ある!」
と答える類の人間である。
「ソレと知らぬ誾千代でも無いはずだが……」
その辺り、何を考えてるんだかな?
と、ピコンと可否を問うイメージウィンドウが現れた。
見れば白雪が訪問してきたらしい。
許可を出す。
「あう……」
と投影機に映し出された白雪のアバターが現れた。
黒髪黒眼の大和撫子。
体のラインが綺麗で、ほどよい黄金比の曲線が……っていうとセクハラですな。
「こんにちは」
「こんにちは……」
「何か用?」
そこまで聞いて、
「まぁ用がなくてもいいがな」
そんなフォロー。
「あの……お昼御飯は……もう食べましたか……?」
「んにゃ」
「そのぉ……私……作ってみたんですけど……どうでしょう……?」
「有り難く戴こう」
女の子の手料理は何にも勝る。
そんなわけで量子変換。
現れたのはヅケ丼。
「簡単な料理で……申し訳ありません……」
「そんなことないぞ。凄く嬉しい」
そう言ってもっしゃもっしゃ。
平らげて煎茶を飲む。
「ところで」
とこれは俺。
「白雪は何で俺に惚れたんだ?」
「はうあ……! あうあう……!」
そこまで狼狽えんでも……。
「えーと……えーと……その……格好良い……ですよね……?」
「どっちかってーと可愛いに分類されるんじゃないか?」
「いえ……お顔ではなく……心の有り様が……」
「心の……有り様……」
そんなことは初めて言われたな。
「中学校の頃……なんですけど……私の入ってた女子グループが……万引きにハマっていたんです……」
「あー……」
まぁ量子変換で何でも手に入る時代とはいえ、物品を売りさばく商売が無くなったわけでも無い。
ほとんど死文化だが量子変換税が無い分だけ格安ではある。
「そこで忍くんに……会いました……」
どうせ空気の読めないことを言ったのだろう。
「忍くんは……堂々と……『そういうつまらない真似は止めろ。格好悪いぜ?』……って言ったんです……」
やっぱり空気読めてなかった。
「凄いと……思いました……」
何処が?
「私が……言いたくて……言いたくて……でも言えなかったことを……忍くんは堂々と……言ってのけたんですから……」
記憶に無いなぁ。
「結局その場は……忍くんが店員さんを説得して……示談で終わらせたんですけど……正義を胸に……けれども懐は深く……そんな有り様に私は胸を突く想いでした……」
誰の話だソレは。
「高校に入って……忍くんを見かけた時は……夢かと思いました……。でも事実で……。それから……忍くんを……目で追う様になりました……」
煎茶を飲む。
「忍くんは……友達がいませんよね……?」
「まぁ少ないのは確かだな」
「それなのに……特に問題にしてない……」
「他人に期待してないだけだな」
「何故です……?」
「人間関係の構築にメリットを感じないだけだ」
遊びたいならVRMMOがあるし、何で他人に時間を割かにゃならんのか……って思ってしまうのは俺の欠点だ。
「そう云うところが……格好良い……」
「趣味が悪いな」
「そうかもしれません……」
おい。
「でも……だから……忍くんと……仲良くなりたい……。あわよくば……恋人になりたい……」
「乙女心はままならんな」
「はい……」
「ところで」
「何でしょう……?」
「ヅケ丼美味しかったぞ」
「ふやゃ!」
面白いくらい白雪は狼狽えた。
「…………」
その光景を楽しみながら煎茶を一口。




