色々な想い4
今日も今日とて、
「こんにちは」
アバター保健室登校。
「神鳴くん……」
「何でしょう?」
「昼過ぎてるんだけど?」
「午前中の授業の資料をよこしてください」
「はぁ」
イメージウィンドウを指で操作してこちらにデータを送ってくる。
「どうも教諭」
「だから先生って……」
精進してください。
以下略。
「忍くん……こんにちは……」
おずおずと白雪が挨拶してくる。
「はい。こんにちは」
黒い髪を撫で撫で。
「あは」
ほころぶ白雪。
頬が桜色に染まっていた。
そんなに俺が好きか。
「鬼の字教諭」
「何?」
「コーヒー淹れて」
「はいはい」
もはや逆らう気も無いらしい。
良か事良か事。
自分用に一杯淹れて、データで俺と白雪用。
白雪のコーヒーは砂糖とミルクありありだ。
それから三人で四方山話。
まず真っ先に気になったのは、
「俺を襲った男子生徒は?」
「退学処置」
「ははぁ」
「親御さんが神鳴くんの家に謝りに行ったはずだけど?」
「そこら辺は親に任せてるからな」
「精神鑑定の結果にもよるだろうけど多分少年院行き。結構洒落になってなかったし」
「逆に洒落で済まされたら大変だがな」
「だからどうして君は一々皮肉的なのよ」
「この程度で?」
「自覚ないんだ……」
大いにありますが。
「ということは不安要素を排除されたわけだ」
「コレを期に復帰したら?」
「いや、案外保健室登校は居心地が良い」
「そんな理由で居座られても……」
「問題あるか?」
「大いに」
「それに白雪はどうする?」
「あう……」
白雪は悲しげに声を出した。
その頭をポンポンと叩く。
「コイツの問題は解決してないぞ?」
「それなのよね」
言われんでも分かってはいるらしい。
「けれど地祇さんを虐めていた女生徒の想い人は居なくなったのよね?」
「らっかんろ~ん」
「何よ?」
ムッとする教諭。
「人は恨みを忘れないぞ」
俺は断言した。
「負の感情が無くなることは絶対に無い。ハワイ旅行を賭けてもいいな」
「じゃあどうするの?」
「保健室登校」
カクンと首を脱力させる教諭。
「状況の改善とかさぁ」
「教諭の過去では出来たの?」
「ぐ……」
出来なかったらしい。
言葉を詰まらせるとはそう云うこと。
「で?」
俺はニヤニヤ。
「自分で出来なかったことを俺たちにやれと?」
「分かったわよ」
「宜しい」
「私の教諭って地位が段々零落れていってる気がするんだけど……」
「気のせいでしょう」
すまし顔で俺は言った。
実際がどうあれ。
そんなこんなで四方山話をしているとチャイムが鳴った。
ウェストミンスター。
午後の授業だ。
保健室に立体映像の講師が映る。
アーティフィシャルインテリジェンスだ。
俺は構築したソファに寝っ転がって。
白雪は机にかじりついて。
それぞれ講義を受ける。
英語の授業だ。
記憶力さえ良ければさして難しい言葉でも無い。
一応のところ即時翻訳の機能も量コンにはあるが、授業は授業だ。
俺はコーヒーを飲みながら淡々と授業を受けた。
別段気にすることでもない。
人より少しだけ地頭が良い。
それ故に量子に監視されているのだから。
「何だかなぁ」
ぼやいてしまう。
「俺は俺をどう定義してるのだろう?」
それは永遠の命題だった。




