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オーバードライブオンライン2


「雉ちゃん?」


 あっさりと僕を愛称で呼ぶコキア。


 チョップ。


「ここ……ヴァーチャル世界では本名禁止。ネットリテラシーを守る様に」


「じゃあ何て?」


「ハイド」


「ハイドちゃん」


 ん。


 よかれよかれ。


「で、何? コキア」


「これから何するの?」


「とりあえず戦闘に慣れることだね」


「それが出来れば苦労しませんよぅ」


 唇を尖らせてミツナ。


「ミツナのレベルは?」


「1です」


「あー……」


 なんとなく察する。


「もしかしてアカ作って放置?」


「だって勝手がわからないんですよぅ」


「じゃあとりあえずアクションゲームに慣れるところから始めようか」


 他に言い様も無く僕。


 コキアとミツナを連れて村の外へ。


 村と外との境界でコキアとミツナは止まった。


 僕だけ一人外に出る。


 同時に敵キャラがポップする。


 低レベルのゴブリンだ。


 レベル1でも無双できるほど弱いモンスターである。


 襲い掛かられはしたけど反撃するのも億劫で攻撃されるに任せる。


 ゴブリンたちは手に持った棍棒で僕を殴りつけたけど僕のヒットポイントの零・零一パーセントも減らせていない。


 無理もないことだけど。


 ちなみにコキアとミツナは村の内部から外界の僕に訝しげな視線を向ける。


「ハイドちゃん……痛くないの?」


「何が?」


「モンスターに棍棒で殴られて」


「…………」


 そこから?


 ミツナを見ると、


「…………」


 こちらも躊躇している様だった。


 何だかなぁ。


「所詮ゲームなんだから痛いわけないでしょ?」


 何を当たり前のことを……。


「だいたい打たれたり切られたりして激痛を感じていたらVRアクションゲームなんか出来るわけないじゃん」


 そういうことなのだ。


「ちょっと圧迫感を感じる程度だよ。マッサージされているとでも思えば特に意識することもないしね」


「…………」


「…………」


 沈黙。


 後の発言。


「でも……」


「戦わないといけないんでしょ?」


 そりゃまぁアクションゲームだし。


「そういう物騒なのは……」


「ちょっと……」


 君たち何のために此処にいるの?


 そうツッコみたかった。


 意味が無いからしないけど。


「とりあえず」


 嘆息。


「敵の攻撃を受けるところから始めよう」


「えぇ!?」


「ふや!?」


 可愛らしいけど却下で。


 情状酌量の余地無し。


「ここら辺りのモンスターは弱いからレベル1でも問題にならないよ。とりあえず敵の攻撃に恐怖しない所から始めよう」


「でも棍棒で殴られるんでしょ?」


「だから痛覚なんて発生しないんだって。ちょっとした殴打マッサージだと思えば健康に良いくらい」


「うぅ……」


「あぅ……」


 コキアとミツナはそれでも尻込みする。


 なんだか、


「水を怖がる子どもをプールに慣れさせる」


 なんて気持ちを味わっている感じ。


「別に現実世界で死ぬわけでもないし気楽に一歩踏み込んで?」


「うぅ……」


「あぅ……」


「…………」


 何だかなぁ。


 ゴブリンの持つ棍棒にボッコボコに殴られながら平然としている僕が実例だ。


「別に痛くない」


 という理由の。


 そして何とかコキアとミツナを村の外に出す。


 ちなみに強制的に他プレイヤーを非戦闘区域から戦闘区域に連れ出すことはできない。


 こればっかりは本人の意思だ。


 そしてゴブリンが、


「キシャアアアアアアッ!」


 とコキアとミツナに襲い掛かる。


「きゃあああああああっ!」


 と悲鳴を上げて村の領域に逃げる二人。


「あのさ」


 言いたくないんだけど、


「やる気ある?」


 そればっかりは問わざるを得ない。


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