お友達から始めましょう5
「今日も今日とて朝が来る~と……」
俺は起き出して量子変換で食事を用意する。
今日の朝食は白米に冷奴に卵焼きに赤出汁。
いつも契約しているところだから安定して美味しい。
テキパキ食べて朝のシャワーを浴びると、部屋に籠もって意識を電子世界へ。
フィジカルデータを投影機にて構築する。
一瞬で学校へ。
姿は学ラン。
残暑の残る季節ではあるがアバターに暑いも寒いもない。
で、
「おはようございます……忍くん……」
「おはよう神鳴くん」
俺の跳んだ先。
瀬野第四高等学校の保健室には二人の人間がいた。
白雪と鬼灯教諭だ。
「おはようございます」
と丁寧に言って、データで構築したソファに座る。
「器用ね」
と教諭が笑う。
ちなみにこの程度のオブジェクトなら小学生でも構築できる。
「鬼灯教諭」
「やっぱり先生って呼んでくれないのね……」
精進なさってください。
「コーヒー」
「はいはい」
そして俺にデータ上のコーヒーを淹れてくれる。
「ども」
受け取って飲み、苦みを楽しむ。
「ところで」
とこれは教諭。
「何でしょう……?」
と白雪。
「二人は文化祭はどうするの?」
「文化祭……」
「あー……そんな季節か」
俺は嘆息した。
とはいえ虐められっ子に居場所はあるまい。
コーヒーを飲んで顔をしかめる。
「なんなら保健室で何かする?」
教諭が言った。
「何かとは……?」
白雪がクネリと首を傾げる。
「保健の先生の特別授業とか」
俺が提案した。
「…………」
教諭が半眼になった。
背筋がぞくぞくするな。
くっくと笑う。
「普遍的な意味で言ったのに何を想像しておいでで?」
「良い性格してるよね」
「ちと人生早足だからな」
コーヒーを飲む。
「あう……」
白雪は白雪で照れたらしい。
初々しい感じは……なるほど……可愛らしくもある。
裏も表もまだ知らんが。
「地祇さんは何か案はある?」
「特に……」
ていうか、
「保健室までイベント会場にしたら戯けた連中が行き場に迷うだろ」
そういうことだった。
「むぅ」
と教諭。
「何でっしゃろ?」
「神鳴くんや地祇さんにも文化祭を楽しんで欲しいんですけど……」
「まぁアバターで良ければ」
俺は言った。
「うん……。アバターなら……」
白雪も言った。
「生身は?」
「部屋に置いてくる」
「以下同文……」
引き籠りな俺たちだった。
コーヒーを飲む。
のんべんだらりとしていると昼休みになる。
とりあえずログアウト。
自身に意識を取り戻し、量子変換で昼食をとる。
それからトイレを済ませて、またログイン。
保健室に現れた。
同じく昼食をとるためにログアウトした白雪はまだ来ていないらしい。
居たのは鬼灯教諭と一人の男子生徒。
俺はソファに寝転ぶと、
「教諭。コーヒー」
と頼む。
「だから先生って呼んでよ」
教諭は諦め口調でそう言った。
「神鳴……!」
男子生徒の方はこっちを知っているようだった。
クラスメイトか?
特に興味を持てるわけでもないが。
基本的にヒエラルキーの下層にいてぼっちだった俺には生徒の見分けなどつかないのだが。
「何でお前が此処に……!」
男子生徒は戦慄していた。
それほどのものか?
特に意識無くコーヒーを飲んでいると、
「忍くん……!」
ログインしてきた白雪が俺に抱きついてくる。
おい。