お友達から始めましょう4
それから俺らはとりとめのない話をする。
「なんで虐められなければ……いけないの……?」
「ポストが赤いことに理由があると思うか?」
実際はあるんだろうがあまりに普遍的という意味では痛烈な皮肉だろう。
「あう……」
と白雪。
「白雪は虐めてきた女子にはどうしたんだ?」
「城下の盟……」
「許してくれたのか?」
「全然……」
まこと恋愛は恐ろしい。
「ごめんね……」
「今度は何だ?」
「判断が安易だった……」
「俺が好きだと虐めっ子に言ったことか?」
「うん……」
「ま、間違いは誰にでもある」
俺は緑茶を飲んでホッと吐息をつく。
コーヒーを飲むと眠れなくなるため妥協だ。
「間違いで……済むのかな……?」
「結果論として白雪のアドレスと好意を確認できただけでも僥倖だ」
「ふえ……?」
ポカンとされてしまった。
「ふええぇ……?」
困惑されてしまった。
チョロい奴め。
チョロインめ。
「ていうか何で俺が好きなの?」
「えっと……」
少し考えて、
「格好良いところ……」
そんな返答。
「皮肉か?」
少なくとも俺が格好良いのなら虐められたりしていない。
ていうか自分でも自覚しているがなよっとした顔だ。
なよ顔だ。
たまに男から軟派される事もある。
虚しい記憶だ。
つい首をくくりたくなる。
もっとも何とか生きてはいるが。
「皮肉じゃない……よ……?」
「それはそれでどうなんだ?」
「格好良いは……迷惑……?」
「そう言うわけでは無いんだが……」
どんな審美眼を持っているのか真剣に気になりだした。
もっともソレを言ってしまえば、
「台無しだな」
と自分に唾を吐きかけることになるため自重するが。
「ていうか白雪だって可愛いだろ」
「可愛いの……?」
チラチラと視線を外しては合わせて外しては合わせて。
なにこの可愛い小動物?
「聞いたぞ」
「何を……?」
「瀬野四のアイドルだってな」
「あう……」
一応自覚はあるらしい。
「今まで色々告白されたんだろ?」
「うん……まぁ……」
「良い奴いなかったのか?」
「うん……まぁ……」
「で、俺と」
「うん……まぁ……」
難儀な感性だな。
人に言えた義理じゃないが。
「俺たちって何が楽しくて生きてるんだろうな?」
何となく無常になったので、そんな言葉がついて出た。
「私は……忍くんが……好きだから……」
「光栄だ」
「忍くんは……?」
「わかんね」
緑茶を飲む。
「趣味でヴァーチャルゲームやるくらいだし。特別に頭が良いわけでも運動が出来るわけでも喧嘩が強いわけでもないしな」
「でも格好いい」
「ありがとな」
アシストを使ってクシャッと白雪の髪を撫でる。
「けどまぁお前ならもっといい男を見つけられるよ」
「忍くんが……世界で一番……格好良い……」
さいですか。
恋慕に滾る乙女の顔をしちゃってまぁ。
それほどのこっちゃないんだが。
言って分かるなら戦争なんて起きないのも一つの側面ではある。
さて、
「いつでも見限ってくれて良いからな」
「うん……じゃあ……いつまでも見限らなくても……いいんだよね……?」
「あー……」
その発想は無かった。
彼奴に何て言おう?
ま、いいか。
「趣味が悪い」
「そんなことない……」
「性癖が酷い」
「それは……そうかも……」
認めちゃったよ。
付き合う義理はないが。