お友達から始めましょう2
「食べたい料理はありますか?」
引き続き保健室。
俺は白雪と教諭と一緒にコーヒーを飲んでいた。
「味噌汁が飲みたい」
「あう……」
「プロポーズみたいね」
からかうような教諭の言葉。
じゃあかしい。
「味噌の色は……?」
「白か合わせ」
「ダシは……?」
「いりこが好みかな」
「ではその通りに……」
コーヒーを飲む。
「地祇さんの手料理ね」
意地の悪い教諭。
「他の男子生徒が聞いたら噴飯物ね」
「あう……」
「別に良いんでね? 白雪は俺に惚れてるようだし」
「あう……」
「神鳴くんは友達少ないでしょ?」
「ああ、二人しかいない」
「二人?」
「…………」
俺は無言で白雪を指さした。
「ふえ……私……?」
「友達から始めようって言っただろ?」
「そうだけど……」
「二人目は?」
「まぁ色々ありまして」
ぼんやりと答える。
「えへへ……」
はにかまれた。
喜ぶところだろうか。
「忍くんの……お友達……」
さいでっか。
まぁ当人が喜ばしいなら誉れも高いと言ったところだろう。
「味噌汁の他は?」
「任せる」
その程度の器量は見せて欲しかった。
「うん……じゃあ……こっちで……」
ニコニコ。
何が嬉しいんだかな?
「うん」
コーヒーを飲んで納得する教諭。
「保健室登校同士仲良くね」
「だな」
「はい……」
俺らは揃って頷いた。
「で、教諭」
「先生って呼んでよ」
「鬼灯教諭?」
「あうぅ……」
白雪のような声を出すな。
「で、何?」
「コーヒーお代わり」
「はいはい」
ドリップして量子変換。
データ上のソレを俺に手渡す。
一口飲んで、
「俺らの他に保健室登校の生徒って居るのか?」
「いないわよ」
「ま、一般的にはそうだろうな」
別段気にくわないのなら通信制に乗り換えれば良いだけではある。
「じゃあ何で俺を?」
「地祇さんと合わせたかったから」
「まぁその気持ちはわからんじゃないが……」
コーヒーを飲む。
チラリと白雪を見やる。
視線が交錯する。
「はわわ……!」
狼狽しきりな白雪だった。
一々反応が愛らしい。
そりゃ惚れる男も出てくるわけだ。
「ほ」
と俺はコーヒーを飲んで吐息をついた。
「可愛いな」
「可愛いね」
俺と教諭は同じ感想を持った。
「?」
と白雪。
首を傾げるというだけで愛らしいのは反則だ。
この美少女め。
言わないのだが。
しっかし、
「趣味が悪いな」
そう思う。
特筆すべきものを俺は何一つ持ち合わせていない。
金銭も権威も勉強も運動も。
まぁ顔は整っているんだが。
それについては色々と思い出したくないことがあるので割愛。
美味い味噌汁が飲めるのなら白雪のキープも悪くはない。
ゲス野郎の発言だが、
「だからどうした」
という無敵の呪文がある。
ああ。
南無。