部屋の中から愛を込めて3
今日も今日とて暇潰しに頭を悩ませる俺だった。
オド……オーバードライブオンラインのプレイもしているが、それ以外にも娯楽を見つけたくてしょうがなかった。
そんなわけでアングラサイトに潜ったのだが可能性はゼロ。
元より大日本量子ちゃんを敵に回す気は無い。
「でもなぁ」
そう思っていると、
「?」
ピコンと電子音がした。
メッセージだ。
視界モニタでイメージウィンドウを開く。
メールだった。
「あー……神鳴忍くんのアカで合ってる?」
そんな文章。
「ですけど」
即返す。
神鳴忍。
それが俺の名だ。
「うむ。よかった」
何がだ?
文章にせずそう思う。
「私は保健室の先生です」
「へえ」
簡素に返す。
「む……。信じてない?」
「というわけではないが」
イメージウィンドウを見ながらそう言う。
正確には記す。
「不登校の生徒のフォローも先生の仕事だから」
「そうですか」
淡泊に肯定する。
「学校に来よう?」
養護教諭はそう言った。
無論メッセージで。
「面倒だ」
俺は切って捨てた。
「イジメの件は理解してる」
「ほう」
「でもせっかく高校に通っているんだから青春時代を無駄にするのは忍びないよ」
「でっか」
「です」
養護教諭というのも暇なんだな。
素直にそう思う。
「で?」
「何?」
「俺にどうしろと?」
「学校に来て」
「断る」
「むぅ」
困惑する教諭だった。
さもあらんが。
「保健室登校で良いから」
「断る」
「むぅ」
呻く教諭だった。
「じゃあアバター登校」
「ふむ」
「お? 脈在り?」
「別に」
「そう云わず」
「別段虐められてまで学校に行く理由が無い」
アバター登校でも嫌がらせは出来ないわけではないのだ。
「じゃあアバター保健室登校」
「ふむ……」
その程度なら妥協は出来る。
「で?」
「とは?」
「何が理由?」
「ちょっと女の子を紹介したいの」
「はあ」
特に感情をざわめかせるものでも無い。
「というわけで明日は学校に来てね?」
「アバターで良いのか?」
「もちろん」
「保健室登校で?」
「構わない」
「まぁそれなら」
俺はそう言った。
そしてメッセージは途切れる。
「なんだかね」
そう呟かざるをえなかった。
イジメは辛い。
そも何故虐められだしたのかも把握していない。
恐怖はある。
忌避もある。
が、教諭の言葉も無視は出来ない。
アバター登校であろうと。
保健室登校であろうと。
学業に携わるのは事実なのだから。
いい加減引き籠りにも飽きた。
少しは前に進んでも良いだろう。
とはいえイジメの恐怖を忘れたわけでもない。
明確な他人の悪意が恐怖に直結することを俺は知っている。
そう云う意味では負け組なのだろう。
昼食はパエリアを頼んだ。
もむもむと食べながら明日のことについて考える。
「やる気は……出ないよな……」
当然だった。
そもソレを解決できるなら不登校になぞ成っていない。