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オーバードライブオンライン  作者: 揚羽常時
外伝:秋子の場合
143/318

きっと始まりが間違っていた1


「ダムダムショット!」


 音速の三十倍と云う規格外の速度で銃弾が発射されてゴッドニクシーがポリゴンの破片と砕け散る。


 これにてオーバードライブオンライン……そのヴェネチアエリアのクエスト達成である。


「順調に育ってきたね」


 クエストを終えて妖精郷で茶をしばきながら僕はミツナとコキアのステータスを確認してそう言った。


「コキアさんパねぇ。すごく上手いよ。うちのギルドに所属しない?」


「特に興味は無いかな」


 涙無しでは語れないスミスくんの肖像だった。


 で、紅茶を飲みながらテラス席を飛び回っている妖精の一匹を捕まえて悪戯していると、


「ルノワールの絵が見たいです」


 唐突にミツナ……夏美が提案してきた。


「はあ」


 意図を察せず生返事。


「ダウンロードして観賞すればいいんじゃない?」


 一応美術品や芸術品の類は二次ェクトでも金銭取引が発生するものの、


「一般人にも美に触れる機会を増やすため」


 ということでコピー品は子どものお小遣いでも買える値段だ。


 さすがに真作は目玉が飛び出る金額。


 その辺は今も昔も変わらない。


 美術品の価値はいつになっても廃れないという良い証拠だ。


「どうせだからオルセーに行きませんか?」


「二人で?」


「皆で、です」


 ちなみにこの場合の「皆」は僕と夏美……それから秋子と量子が含まれる。


 総一郎は……どうだかね。


「電子デート?」


「そうですね。さすがにリアルでパリに行く勇気はありません」


 ついでに僕には情熱も気力も無い。


「オルセーね……」


「駄目ですか?」


「いや、構わないよ」


 少なくとも電子デートでなら恋人の我が儘くらい幾らでも聞いてあげられる。


「それから夜の食事をパリのリストランテでとりましょう? こっちは二人きりで。ワインをカチンとか。夜のセーヌ川を眺めるのも一興ですね」


 昼間は和気あいあいと皆で楽しんだ後、夜は二人きりの時間か。


「悪くないね」


 自然と表情がほころんだ。


 パリの夜景は夏美とのデートに相応しいだろう。


「じゃあ行きますかオルセー」


「話がわかって助かります」


「恋人の我が儘を聞くのも彼氏の特権だしね」


 苦笑する。


「俺もついていって……あー……タイミング悪ぅ……」


 スミスは言葉途中で渋い表情になった。


「どうかした?」


「ギルドに呼ばれた。セカンド江戸エリア攻略に参加しろって」


 ご愁傷さま。


「じゃあ俺はこれで。コキアさん、またな」


「ええ」


 素っ気なく言ってからスミスから視線を外し茶を楽しむコキアさん。


 基本的に邪険にしているはずなのにスミス……総一郎くんはめげる様子が無い。


 いっそ本当のことを言ってしまえば状況が解決するんじゃなかろうか。


 そんなことを思いながら茶を一口。


「スミスも可哀想に」


 自然そんな言葉が口をついて出る。


「ハイドちゃんの方が百八倍格好いいからね」


「まったくまったく」


 幼馴染ーズが僕を絶賛する。


「一応僕はVRオタクでスミスはスクールカーストの天辺なんだけど……」


 どちらがリア充かは明確に定義できる。


 僕はネト充だ。


 先述した通りのVRオタクですから。


「ハイド……謙遜は時に皮肉ですよ?」


「そんなつもりはないけどなぁ」


 茶を飲んでほけっと言葉をもらす。


 だいたい自分の顔なんて毎朝(というと語弊があるんだけど)確認してるんだから善し悪しの客観性を持てようはずもない。


 秋子と量子はともあれ夏美が僕に惚れている以上、少しは「そんなものかな」って自覚くらいは生まれていたけど基本的に精神が擦れているためどうしても自重自虐が基準となってしまう。


 蓼食う虫も……という可能性もないではないのだ。


 僕としては後者の方がしっくりくるけど。


「そんなことないよ?」


 とコキア。


「そうなの?」


 と僕。


「ハイドちゃんは控えめな性格だから自認したくないかもしれないけど十分美少年の範疇なんだけどにゃ~」


 シリョーが、


「さも当然」


 と言ってくる。


「ハイドを好きな私たちを信じて」


「と言われましても……ねぇ?」


 とりあえず、


「それについては後世の研究家に任せるとして。デートの計画を立てよう」


 閑話休題。


「私はとりあえずオルセーに行ければいいかな?」


 とミツナ。


「はい!」


 と元気いっぱいにシリョー。


「香水選ぼうよ」


 せっかくのパリだしね。


「モンマルトル……とか?」


 これはコキア。


 芸術の都だね。


 成人してればシャンソン酒場にも行ってみたいけど生き急ぐこともないだろう。


 そんなわけでパリに行くことになった。


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