乙女心は麦の様で1
それはとある夏の日の出来事。
「雉ちゃん!」
「嫌」
次回をお楽しみに。
「勝手に終わらせないでよ!」
だってさぁ……。
ブラックセミロングツインテールの女の子……国家アイドル大日本量子ちゃんは絶賛我が家で昼食中。
それは僕もそうだし秋子もそうなんだけど。
ちなみに今日の昼食は握り寿司。
節税対策の一環だ。
「き~じ~ちゃん~」
「……………………なに?」
「今日の夜ね」
夜ね。
「夏祭り行こ?」
「どっち?」
「セカンドアース!」
「そっちなら……まぁいいか」
「何か不都合が?」
まぁ色々と。
「私も行く!」
「ほら。賛成二票」
なにが「ほら」か。
「量子のスケジュールは大丈夫なの?」
「今日のために調整した!」
そう言われると断りにくいなぁ。
「雉ちゃん」
こっちは秋子。
「一緒に行こ?」
「花火もあるよ?」
ロマンチックだね。
「というわけでけって~い」
まだうんともすんとも言ってないんだけど。
乙女フィルターは無敵だ。
まぁそんなことは百も承知なんだけど。
ウニを頬張る。
湯呑で茶を飲む。
うむ。
美味い。
「今日一日は暇だから」
「だから何よ?」
「浴衣選ぼ?」
「僕の意見なんているの?」
「それは……まぁ……」
照れ照れ。
可愛い可愛い。
「私も! 私の浴衣も見繕って!」
秋子も強硬に主張する。
やれやれ。
「僕の意見でいいのなら」
「やた」
「やった」
秋子と量子がハイタッチ。
僕はヒラメを放る。
中略。
夏美にメッセージを送った後、僕と秋子は別室で寝転んで電子世界に。
量子は元より電子世界の住人だ。
「ログイン」
「ログアウト」
という概念が存在しない。
ある意味逆転的で、
「現実世界にログイン」
「現実世界からログアウト」
と言えるかもしれない。
で、そんなことはともあれ。
僕と秋子と量子は和服専門店に顔を出した。
ここを利用するのも初めてではない。
言ってしまえばしがらみなんだけどマイナス要素は無い。
単に利用しているし店員さんとも顔馴染みってだけだ。
それからより取り見取りの浴衣を前にキャッキャと秋子と量子ははしゃいだ。
ここはセカンドアース。
電子世界であるため試着も一瞬だ。
まるでコマ落としのようにパッパッと映像が切り替わる。
この場合は秋子と量子の浴衣姿のこと。
と、
「お待たせしました」
信濃夏美さん登場。
僕の恋人だ。
まだ秋子と量子には言ってないけど。
「おや、夏美ちゃん」
「どうしたの?」
聞く?
そういうことを普通。
「もしかして雉ちゃん?」
「想像通りです」
「何でライバル増やすのよう!」
「イレイザーズのメンツとして呼ばないのもふぐりかなって」
「不義理……ですね」
打てば響くツッコミありがとう。
さすがマイスイートハニー。
「墨洲くんは?」
「呼んでほしいなら呼ぶけど?」
「やめて」
でしょうね~。
そしてイレイザーズの面々は浴衣を選んで着た。
どの子も地が良いから浴衣が抜群に似合っているのは否定できないことではあるんだけど……ね。