あなたは夕立の様で3
さてさて、
「何処に行こうか?」
となった時、
「都会まで足をのばさない?」
なんて積極的な秋子の提案でその様に決まった。
そして秋子は一旦ねぐらへと戻る。
三十分後。
オシャレをして出てくる秋子だった。
こういうところは乙女心を持つ人間の大変さだ。
業とも言う。
そんなわけで近場の駅へと歩き到着すると、
「…………」
秋子が口をへの字に歪めた。
「…………」
僕も沈黙を選んだけど秋子と意識の共有は出来ていない。
「さもあろう」
あえて言葉にするならそんなところか。
僕はフィジカルを秋子に支配されているけど、それ以外ではもう一人の乙女に支配されているのだ。
ソイツにとってみれば僕と秋子のデートを看破して嫌がらせするのは呼吸をすることと同義だろう。
量子がいた。
無論ブラックセミロングツインテールではない。
最近お気に入りの紫色のセミロングの美少女アバター。
立体映像故に汗をかくこともないため少々重武装。
「なんとまぁ……」
意外なおまけまで付いてきた。
麦わら帽子を被って簡素なタータンブラッドのワンピースを着た赤髪赤眼の美少女。
氏名を信濃夏美と云う。
「雉ちゃーん!」
僕の姿を見つけた(と言っても白々しい。どうせ僕の動向は逐一チェックされているのだろう)量子は助走をつけて駆け寄ってきて、僕に抱き付いてきた。
アシストを切っても良かったけどとりあえず害はないだろうということで量子を受け止める。
「雉ちゃん雉ちゃん雉ちゃん!」
はーいはいはい?
「大好き!」
「奇遇だね」
僕も量子が好きだ。
「ていうかどうせ量子の思惑なんだろうけど……なんで夏美?」
「嫌がらせ!」
「清々しいね君は」
「えへへ。それほどでも」
あんまり褒めてはいないんですけど……。
言っても詮方無き……か。
「量子」
「はいな!」
「夏美」
「何でしょう?」
「君らも僕とデートするってことでいいのかな?」
「いいよ!」
「そのつもりです」
「駄目だよぅ……」
最後の言は当然秋子。
唇を尖らせて拗ねてみせる。
まぁ二人きりのデート日和がいきなり三股デートになって不満を感じないならそっちの方がどうかしてるけど。
「大丈夫」
僕はクシャッと秋子の黒い髪を撫ぜる。
「どっちにしろ僕のスタンスは変わらないから」
誤解を受ける言葉だね。
十分どころか十全に理解しています。
「あー……」
量子がそうぼやいて、
「うんうん」
と頷いた。
皮肉だろう。
第三者だから気楽なものだ。
その分傍目八目を体現してるんだろうけどもさ。
そして立体映像に抱き付かれたまま僕は秋子と夏美の手を取っていざ都会へ。
ランドアークシステムの発達によって移動手段に金銭は発生しなくなった。
その代わりとばかりに視界モニタにスポンサーの広告がいくつも展開されるのが鬱陶しいと言えば鬱陶しい。
「広告・即・斬」
の要領で次々と意識でイメージコンソールを操作して閉じていくんだけど。
「やれやれ」
広告を全て消し終えた後にヒロインズを見やると、
「あううぅ」
「ふええぇ」
秋子と夏美が真っ赤になっていた。
どうやら手を繋ぐのは早急すぎたらしい。
「憎いね。このこの」
面白おかしそうに量子が肘でつつく。
「楽しそうで何より」
「それだけおもろい映像だよ」
「目の付け所がシャープだね」
皮肉のつもりだけど、
「まだキス一回分残ってること忘れないでね」
伝家の宝刀は抜かないことが前提だからソレについて僕は大して脅威を覚えてはいないのだけど。
「春雉……?」
「なんですか?」
その三点リーダとクエスチョンマークが怖いんですけど。
「量子ちゃんとキスするの?」
「ぶっちゃけ今更」
何を言ってるんだって感じ。
「あう」
そしてまた酩酊したように顔を赤らめて握った僕の拳にギュッと力を加える。
完全に嫌がらせだよね……これ?




