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うちの職場には超能力者がいる  作者: 卯月の猫
3/3

私、本領発揮しちゃいます

「道路整備?」

「そ、まぁ道路整備と名前をつけちゃいるが道路以外の整備もするんだけどな」

目的地を目指す大型の車に揺られながら超能力者の伊月奈々美は俺に質問してくる。

今回の仕事は内容自体は単純だが、非常に体力と筋力に物を言わせる仕事だ。

実は伊月が入社する1週間前に大型の台風が俺たちの住む地域に直撃しており、いまだに復旧が追いついていない地域が多いらしいのだ。俺たちが勤めている会社は土地が狭いため整備などの復旧は2日で終わった。

「復旧って、ごみの除去とかが主な内容になりますよね」

「それもそうなんだが、ごみの量が今回はひどい上に、俺たちは園芸の会社なのに電気の復旧まで依頼されているんだ。その内容も知っていながら了承した社長も社長っていう話なんだがな」

「私たちの管轄外ですよねそれ」

「あぁ、まったくだ」

目的地が近づき、ゆるやかにスピードを落として現場近くの駐車場に止めた。

「あぁ、こりゃひでえな・・・」

「ここほんとに人が住んでるんですか・・・?」

そこにはまるでどこかのRPGにでてきそうな、廃街のように廃れていた。

木々はなぎ倒され、建造物にはおびただしい数のヒビや傷が入っていて、廃墟同然だった。

「これほんとに1つの台風にやられた被害かよ・・・」

今回の仕事の依頼に対して派遣された従業員は俺を含めて6人、それに対して街はこの有様である。

「これ1週間で終わるかすら疑問ですね」

「これほどまでにない絶望感だな」

今回少人数で来たのには実は理由がある。

この超能力者、伊月の力を見たいがためだ。

超能力者というからには念力とかそういうまさに漫画みたいなことができるはずなのだ。

「この量を6人で捌くのはきついですし、私が少しばかり本気にならないとだめみたいですね・・・」

「ん、超能力のお披露目ってか?」

「あんまりじろじろ見ないでください、ちょっとばかり恥ずかしいので」

そういうと彼女はポケットからチョークを取り出し、がりがりと線を書きながら歩き始めた。

「なにをしているんだ」

「範囲を決めているんです、決めておかないとやりづらいので」

なにがやりづらいのかは聞かず、なんとなく着いていってみることにした。

「何で着いてくるんですか?作業してればいいじゃないですか」

「とは言ってもね、君が意味深にそれをしておいて俺から離れたところでサボるっていう可能性もなくはないからね」

「信用されてないですね、私・・・」

「そう言うなよ」

10分ほど歩き、歩くのをやめたと思ったらチョークで書き始めた場所に戻ってきていた。

「ん、戻ってきちまったが?」

「だから言ったじゃないですか、範囲を決めたんです。今上からこの街を見たらチョークの白い線で囲まれていると思いますよ」

言いながら彼女は跪くようにして地面に伏せ、両手を線の近くに置いた。

「・・・・ふぅ」

ため息をついたかと思うと次の瞬間。

「んっ!」

チョークで書かれた線が地面からオーロラが出ているように光りだした。

「うおっ!!なんだこれ!」

「少しばかり離れていてください!」

彼女が叫んで注意を促している最中にも、線で囲まれた街はすでに修復が始まっていた。

倒れていた木は再生し、建造物の傷は癒え、散乱していたごみもどこか絵と消えていた。

「あ・・・・あぁっ!!!」

彼女が叫んだ次の瞬間には、街は完全に修復されていて、線も消えていた。

「・・・ここまでとはな」

「1週間なんていわずに、ものの一瞬で終わらせて見せましたよ・・・?これで私のことも信用できるはずです」

たしかに実際俺はまだ彼女のことを疑っているところはあった。

まだ俺は嘘でも疲れているのではないかと。

「あぁ、もう十分だ。ありがとうな」

「けど、お前自分の超能力あんまり隠さないんだな」

「隠してはいますよ?」

俺が質問すると、彼女はなに言ってんだこいつみたいな目線で俺を見て返答した。

「いや、でもだってここ街だし人もいるし・・・」

「えぇ、確かに今は隠していません。でも、」

「記憶を消してしまえばいいのです」

「えっ」

「台風後の被害は私たちの迅速な行動力のおかげで完璧なまでに復旧でき、超能力なんて一切使ってなんかいない、という風に記憶を改ざんしてしまえばいいのです」

詠うように、彼女は説明をした。

「お前記憶すらも操れるのか・・・」

「えぇ、まだ会社内の人には使ってないですけど」

今までニュースで超能力の存在を知らしめるようなものはなく、彼女もまたその能力を世間に知られないようにしていたのだった。

「これがお前の秘密かって感じかな・・・」

超能力の存在を再確認しつつ、俺たちは帰る準備を進めるのであった。

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