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学園の授業

 この国の学校制度は、平民と貴族で違う。


 まず、平民だが、6年間の基礎教育の後は、そのまま職人に弟子入りする者もいれば、3年間の専門学校に通う者もいる。

 専門学校には、事務養成科、魔術養成科、騎士養成科、執事・侍女養成科など様々な科がある。専門学校を卒業する年齢は15歳。その後は、就職したり、働きながら夜間学校で学び大学に行く資格を取る人もいる。一部は冒険者になる。


 貴族は、6年間の初等科、3年間の中等科、3年間の高等科がある。

 魔法学園は、この高等科にあたる。魔法学園は、魔力が無いと入学できないので、魔力が無い貴族は他の学園に通うことになる。

 高等科卒業後は、私は詳しく知らない。だって、貴族じゃないもん。


 私の場合、事務養成科に通っていた。当時は魔力はあっても、使えなかったから、魔術養成科には行かなかった。

 事務養成科は最後の1年は、週に1度出席するだけで、就職先での研修となる。私は冒険者ギルドに就職することになっていた。

 そんな時に、暴走馬車事件。そして、この魔法学園に通うことになった。


 学園の授業は、貴族の学校の延長なので、Eクラスの私達が学んでいない科目がある。

 数学、地理、歴史、音楽、芸術など。それに加えて、ダンスと作法・・・。

 私達がこれらの授業を受けている間、AからDクラスは中等科の復習と、今年は特別授業、“儀式魔法の呪文から詠唱魔法の呪文を作る”が加わったらしい。


「クリフは、専門学校は魔術養成科ではなかったの?」

 専門学校の魔術養成科なら、詠唱魔法を教えるはずだけど。

「ああ、僕は執事養成科に通っていたんだ。魔術は両親が教えてくれるからね」

「それなら、私も同じ。ママが魔法を教えてくれるから、侍女養成科に通っていた」

 クリフとサラが作法の授業を難無くこなしている理由が分かった。私とゼンは苦労しているのに・・・・。私はまだ前世の記憶のおかげで、テーブルマナーは何とかなっているけどね。貴族式の作法は苦手。


「アイリスは事務養成科だったから、数学が得意なの?」

「ええ・・・。そうね・・・・」

 事務養成科は、他の科に比べたら計算の授業などはあったけど、数学が得意なのはどちらかと言えば、前世の記憶のおかげだ。中等科で習う数学は、日本の小学生程度。理系だった私にとっては、簡単すぎる。

「地理と歴史も得意だよね」

「それは、冒険者ギルドで研修していたからだと思う」

 冒険者ギルドには、この国だけではなく周辺の国の情報も集まってくるから、地理は自然と覚えることになる。歴史も遺跡があるから、どの時代の遺跡か確定するためにその知識は必要となる。気付いたら、授業以上の知識があった。

「音楽と芸術も・・・・」

「それは、興味があったから・・・・」

 両方とも鑑賞の仕方だった。

 音楽は、楽器の名称や曲名を覚えればよかったし、芸術も有名な絵画の作者名を覚えるだけだった。

 楽器の演奏が無くて良かった・・・・。前世で小学校で習ったリコーダーでさえ、この世界では貴族が家庭教師を雇って学ぶものらしいから、平民の私が出来たら不信がられる。

「ダンスは苦手だよね」

「・・・だって、やったことないし・・・・」

 それに、男子とあんなに密着しないといけないなんて、無理っ!!

 前世じゃ、彼氏もいなかったんだよ。その前に、同年代の女子と比べて恋愛に興味なかったけど。

「9月の実力試験には関係ないし、出来なくても別に構わないじゃない」

 開き直る。

「実力試験には関係ないけど、試験の後に行事でダンスパーティがあるから、少しは出来るようになっておかないと」

「私、欠席する」

「上級生との顔合わせも兼ねているから、無理だよ。それに、王子様と踊れるかも知れないチャンスだよ!」

 サラはすごい楽しみにしているようだ。

「僕が協力してあげるから、がんばろう」

「ありがとう。クリフ・・・」


 このクラスの中で、ダンス初心者は私だけのようだ。

 クリフとサラ、そして騎士養成科だったゼンも専門学校で基本は習ったらしい。

 ダンスの授業用の衣装は、くるぶしが隠れる長さのスカートとヒールのある靴。前世でも現世でも着慣れていない。ダンス本番は、ドレスになるんだよなぁ。あ、ドレスはどうしよう。後で、先生に聞いてみよう。レンタルなんてあるのかな?

「いっ・・・」

 そんな事を考えながら踊っていたら、クリフの足を踏んでしまった。

「ごめんなさい」

「大丈夫」

 クリフが優しく笑ってくれた。

 踊っているから、顔が近い。クリフって美形だな。

 目は切れ長で、瞳は緑がかった黒。睫毛が長い・・・。

 サラサラな銀髪の前髪の間からのぞく瞳が切なそうな表情を作る。

 ミステリアスな美形だ。


「僕の顔に何か付いている?」

 私が顔を凝視しているのに気付いて、クリフが照れながら尋ねてきた。

「ううん。本番の時も相手よろしくね。クリフとだったら私、うまく踊れそう」

 今のうちからお願いしておこう。

 私のダンスの腕前を知っているクリフなら、何とかなりそうだから。

「・・・・僕こそ、宜しく・・・」

 さらに照れたクリフを可愛いと思ってしまった。


  

 

本日も無事、投稿できました。


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