先生方、喜ぶ
先生方説明による合同授業の様子です。
本日も放課後、職員室に呼び出された。
まあ、予想はしていたけどね。
クリフの話だと、合同授業をしていた実践場からも花火が見えていたらしい。
たぶん、そのことだ。
「失礼します」
職員室に入ると、前回と違って先生達の機嫌が良い。
席を進められ、お茶とお菓子が出される。
私、生徒だけど、いいのかな?
「今日の授業は成功だったよ」
合同授業担当の先生が嬉しそうに言う。
先日、私が提案した、ゼンとサラによる詠唱魔法の実演。
他の生徒達には、衝撃だったらしい。特にAグループ。
そこに、クリフの追い討ち。
Bグループのゼンたちよりも、さらに威力の大きい魔法を見せたらしい。
「その直後、君の魔法が見えたんだよ。いやぁ、彼らの呆然とする顔を君に見せてあげたかった」
満面の笑みの先生達。前回、苦労させられた分、今回の彼らの茫然自失の表情を見れたことが嬉しかったらしい。
「君の魔法を例に、儀式魔法、詠唱魔法、実戦魔法を説明したんだよ」
まず、儀式魔法ではあの大きさの火球をあの高さまで打ち上げるには、かなりの魔力が必要なことを説明。せいぜい一発を打ち上げるのがやっとだろう。色付きになると出来る可能性は皆無。
詠唱魔法では数発は可能だが、連続は難しい。色付きや形が変化する呪文も作るには、かなり訓練が必要だと。
「一部の馬鹿が、いきなり実戦魔法を教えろと言ってきたが、面白かったぞ」
『ファイア ボール』を唱えさせたらしいが、形にさえ成らなかったらしい。
対して、Eクラスの三人は火球を作り出すことが出来、ゼンとクリフはわずかだが飛ばすことが出来たらしい。
「おかげで、詠唱魔法をある程度習得出来ないと、実戦魔法は無理だということを分からせることが出来たよ」
その馬鹿は、いったい誰なんだろう?
「まずは、君が提案してくれた、儀式魔法の呪文を詠唱魔法の呪文にしていく作業からだね。期限は一ヶ月。出来具合で一回目のレベル分けをする予定だよ」
先生達が元気になってよかったです。
「ところで、あの“火球がはじけて色々な形になる”魔法はどうやったのか?」
やはり、花火を見た事が無いようだ。
「えーとですね、小さい頃、どこかの国の旅の人から聞いたことがあったんです・・・」
先生達は、私が孤児で、教会で育ったことを知っているから、たぶん、この説明で誤魔化せるはずだ。
「絵を描いてくれたので、よく覚えていたのです。“花火”っていうそうですよ。魔法で出来ないかなと思ったら、出来ました。夜に見るものらしいです」
「その国は、何処なんだ?」
「聞いたことが無いところでした」
異世界の“日本”という国ですけどね。
私の説明に、先生達は一応納得したようだ。
「夜か・・・。早速、夜に実践場を使用できるように手続きしておこう」
「夜の使用は、理事長の許可がいるから、数日はかかるかもしれないな」
先生達が相談している。かなり、乗り気だ。
「許可が出たらすぐに連絡するから」
翌日には、許可が下りた。
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―― 理事長室 ――
教師達から、夜の実践場の使用申請があった。
理由は、
『アイリス・ソーマの開発した魔法の検証』
と、なっていた。
「いったい、どういった魔法なんだ?」
申請書を持ってきた教師に尋ねる。アイリスの担当をしている教師だという。
「火球を空で弾けさせ、火花で色々な形を描き出す魔法です。子供の頃、異国の旅人から教えてもらった物を魔法で再現したそうです。昼に見ましたが、今までに見たことが無い魔法でした。夜の方が見えやすいらしいので、他の教師達も今後の指導の参考にするために見学したいと言う事になりました」
「分かった。許可しよう。私も是非見てみたいので、この部屋からでも見える実践場を選んでくれ。今夜でも構わないか?」
「はい。早速、本人に連絡を入れます」
その夜、理事長室の窓から見た夜空は、素晴らしいものだった。
夜空に昇っていく青や緑、黄色の火球。
それが弾けると、その色の火花が放射状に広がっていく。まるで、花が咲くかの様に。
噴水のように火花が広がる火球や、蝶の羽のような形が現れる火球もあった。
一球、一球、打ち上げられていた火球が、複数同時に打ち上げられ、次々と夜空に花が咲き乱れる。
最後に、大きな金色の火球が打ち上げられ、夜空一面に金色の大輪の花が咲き誇った。
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