魔術講義~実戦魔法~
昨日に引き続き、更新です。
今回も魔法の授業の担当は、クロード先生だ。
「実戦魔法について、一応、講義をする」
「そうですね。使えますが、出来た過程などは知らないので」
「君の担当で本当に良かった」
先日、他の先生の愚痴を聞かされたからね。合同授業と比べると、やり易いんだろう。
「まずは、復習。詠唱魔法の呪文の構成は?」
「1、属性の確認 2、魔法を使用する理由 3、規模 4、発動の言葉 です」
「はい、正解。では、この中で重要なのは?」
「4の発動の言葉です。そのまま、術の名前になったりもしますから」
先生は、嬉しそうに頷いた。
「詠唱魔法の4の部分だけで発動できるのが実戦魔法と言えるのだが、そう簡単に出来るものではない。何故だと思う?」
しばらく考えてみるが、思いつかない。
「君の場合、自然に使いこなしているから思いつかないかもしれない。では、『ファイア ボール』と聞いて、何を思い付く?」
私の思いつく限りの言葉を並べていく。
まずは、形状。当たり前だが、火の球だ。
使い方は様々。火が弱点の魔物を攻撃するのに使うほか、離れた場所の物を燃やす事も出来るし、頭上に放てば合図にもなる。色によって意味を持たせると便利かも。あ、今度応用で花火の術を作ってみよう。
話が少し逸れてしまったが、球の大きさによって威力も変わる。小さい獲物に大きい球では、魔力の無駄遣いだし、逆に大きい獲物に小さい球では、相手を倒す前に反撃されてしまう。
距離と速度も重要だなぁ・・・。
「もういい。十分だ。まぁ、途中で言った合図については後で試してみるとして、今の説明には、詠唱魔法の1から3までがすべて含まれている。術の名に情報をどれだけ組み込むことが出来るかで、術の性能が大きく変わる」
「同じ術の名でも、使用する人によって違うって事ですか?」
「同じ『ファイア ボール』でも、“火の球”としか情報が無ければ、火の球は出来るが、それを操ることは出来ない」
納得できた。
「だから、実戦魔法を習得するには、詠唱魔法を使いこなせるようになる必要がある。その後は、まず、属性の確認を省く」
「術の名前で分かりますもんね」
「これは簡単だ。次は使用する理由を省く。ここまでは、難無く出来るようになる。ただし“詠唱魔法を使いこなせるようになっている”事が前提だ」
確かに。使いこなせないと出来ない。
「理想は4だけでの発動だが、3を省くには、経験が必要となってくるので、学園では3と4だけで発動できれば、実戦魔法を一応習得したことにはなる」
それなら、結構簡単に習得出来そうだ。
「と、言うわけで、実戦魔法の講義は終了する。では、早速、実技だ」
先生の笑顔、ニヤッて感じ。
「さっき、君が言っていたヤツを試してみようか」
今日の講義は、実践場の休憩室だったので、すぐに魔法を試すことが出来るのだ。
「ファイア ボール!」
掌を空に向けるように腕を伸ばし、叫ぶ。
イメージとしては、サッカーボールぐらいの大きさの球が頭上に飛んでいく感じ。ある程度上がったところで、ポンって弾けるようにした。
「ファイア ボール!」
続けて、同じようなイメージで、さらに青色をイメージしたのだが・・・・。青っぽいんだけど、思っていた色とは違う。
他の色も試したけど、同じ。イメージしていた色と微妙に違う・・・。
魔法で何とかなると思ってたんだけどな・・・。
それでも、先生はかなり感動している。
色の件は、後で検証することにした。
「花火!!」
まずは、菊。その次は柳と、思いつく形を打ち上げてみる。
夜じゃないのと、一色しか出来ないのが少々不満だが、しかたが無い。
最後は、一々叫ぶのが面倒になって、
「花火・連続!!」
花火大会でスターマインと呼ばれる物だ。
両腕を上げて、一応ポーズをとる。
一応、色もつけた。それぞれ一色ずつだけど。
前世で見た花火と比べたらかなり質は落ちるが、この国で花火を見た記憶が無いから、たぶん珍しい物だとは思う。
先生を見ると、呆然としていた。
ちょっとやり過ぎちゃったかな?
「アイリス!!!」
「はいっ!」
先生にハグされた。
「こんな素晴らしい魔法を見たのは初めてだ!!」
えらく感動したのか、先生の腕に力がこもる。
「うっ・・。せん・・せ・・い。はな・・し・・て・・もらえ・・ま・・せん・・か?」
「ああ、すまない。つい、感動してしまって・・・」
私の魔法に興奮したせいなのか、先生の顔がちょっと赤い。
「夜に見るともっと綺麗ですよ」
「夜か・・・。他の先生に相談してみるか・・」
苦労している先生方を喜ばせる為にも、もっと綺麗な花火が出せるように研究しておきますね。
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今日の授業で、ゼンとサラが皆の前で詠唱魔法を披露することになった。
アイリスの提案らしい。
まずは、儀式魔法をサラが披露する。
他のクラスの生徒達から、「あれぐらい私でも出来ますわ」とか「俺のほうがすごいぞ」と言った声が聞こえる。それが、どうした。
次に、今の魔法の余分な単語を消した詠唱魔法をサラが唱えた。
先ほどの自慢はどうした。誰も言葉が出ないようだ。
それもそのはず。
儀式魔法の数倍の威力の魔法だったからだ。
同じ様に、ゼンが儀式魔法、詠唱魔法の順に披露する。サラの時とは違って、誰もしゃべろうとはしない。
僕は、Aグループのほうを見た。
王子たちが呆然としている。彼らよりも魔力が少ないサラとゼンが、能力テストで彼らが見せたよりも威力の大きな魔法を使ったのだ。
詠唱魔法が儀式魔法よりも威力の大きい魔法だということに、気付いたはずだ。アイリスの狙いどおり。
一応、僕も披露した。
Aグループの僕だ。サラやゼンよりも威力が大きいのは当然。
王子たちは、さらに自信を無くしたようだ。
だけど、僕の魔法ごときで驚いているようではダメだな。
「あれは何だ!!」
一人の生徒が、空を指差し叫んだ。
あの方向は、アイリスがいる実践場だ。
空には、火球が次々と打ちあがっていく。それも色付き。初めて見る。
しばらくすると、今度は火球が弾け、花の様に光の筋が広がり消える。次は、横に広がり下に下がって消える。火球が弾ける毎に、色々な形の光の筋が現れる。
最後には、多くの火球が次々と弾け、色付きの形が現れ消えた。
周りの生徒達の呆然とした顔。口を半開きにして、火球が弾けた空を見上げていた。普段はあんなに気取っている姿との差が激しすぎる。
さすが、アイリス。
僕の想像を超えた魔法を見せてくれる。
「放課後、呼び出しましょう」
「そうだな。詳しく説明してもらわないと」
僕の横で嬉しそうに相談する先生達がいた。
読んで下さり、ありがとうございます。
ブックマークの登録件数が増えていたことに、驚いています。