先生方の悩み
合同授業の様子をちょっとだけ書いてみました。
放課後、クロード先生に呼び出された。
魔術講師専用の職員室に行くと、疲れきった先生達がいた。
「どうしたんですか?」
「合同授業が散々だったらしい」
クロード先生が、私にお茶とお菓子を勧めながら言った。
「で、何で私が呼ばれたんですか?」
「俺達に愚痴を聞いてほしいらしい・・・・」
生徒に愚痴って・・・・。それほど酷かったんだ・・・・。
合同授業でも、魔法の成り立ちの講義からだったらしいのだが・・・・。
「貴族の魔法の家庭教師は、いったい何を教えているのだか・・・」
まともに成り立ちを知っている者はいなかったらしい。合同授業担当だった先生が、大きなため息をつく。
「いきなり、例の本の暗記かららしい」
例の本。あの詩集ですか。
「まあ、読んでいるうちに一応出来るようにはなるからな」
「すごい手抜きですね」
「まあ、儀式魔法以外の魔法を見たことが無い人間にとっては、儀式魔法が出来たことだけで自分は出来る気になるらしいからな」
「そうかも知れませんね。Eクラスの三人はどうだったのですか?」
ゼンとサラとクリフは、親が冒険者だから儀式魔法以外の魔法も知っているはず。
「ああ、彼らは途中から別講義だ。貴族の儀式魔法自慢に付き合わせるのも可哀想だったんでな。この三人は理解が早い」
クロード先生の次に元気そうな先生が言った。途中から、E組に教えていたらしい。
「儀式魔法自慢って、何ですか?」
「私語が多くてな。例の本を自分はどこまで覚えているなんて話始め出して・・・・。それを治めるのが大変だった・・・・」
「魔法で何とかできなかったんですか?」
「大講義室だから、魔法の発動が出来ない」
「あ、そっか」
先生方、お疲れ様です。
「学園に入学したら、どうせ教わることだからと、とりあえず教えてもらっていたみたいだな」
先生達が一斉にため息をついた。
「で、結局どこまで講義は進んだのですか?」
「ああ、Eクラスは詠唱魔法の呪文作成。ちょっと苦労してはいるようだが、本人達はがんばっている。他は詠唱魔法と儀式魔法の違いについてだ・・・が、いったい何人理解できているのか、疑問だ」
なかなか、大変そうだ・・・。
「呪文についてなんですけど、こんな方法はどうですか?」
私は、先生から紙とペンを借り、例の本の一番短い文章を写した。
魔法でコピーも出来るのだが、先生の前で使うのはやめておこう。
書き写した文章から、余分な部分を消していく。残ったのは、詠唱魔法の呪文に必要な単語だけ。
「コレを、次の授業で使うのです。ゼンとサラに、コチラの儀式魔法の文章と、余分な部分を削った呪文を、皆の前で実際に見せてみるのです。今日、私が実際に試したところ、儀式魔法と詠唱魔法では、明らかな威力の差が出ました。魔力がBグループのゼンとサラが行うことで、Aグループが危機感を持つと思いますよ」
まずは、Aグループにいる王子の意識改革をしなければ、他の貴族は無理だろう。
「よし、次回はこの方法で授業を進めていこう。アイリス、次回も宜しく頼む」
先生達は、少し元気を取り戻したようだ。でも、その次回って何ですか?
その後、ちょっと気分が良くなった先生達に実践場へ連れて行かれ、魔法をいくつか披露させられたのだった。
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合同授業は、途中から僕達Eクラスは別の教室での講義となった。
サラは王子と別になったことに、少し不満そうだったが、僕とゼンは喜んだ。
あそこでは、一向に進まない。
アイリスの魔法を見た僕にとっては、早く彼女のような魔法を使えるようになりたい。その為には、早く講義を進めてもらいたい。
僕達は、詠唱魔法の呪文作成の講義を受けた。
自分で呪文を作るのは、初めてだ。
なかなかうまく出来ない。
出来たとしても、発動を判定する道具の反応があまり良くない。
次の日、先生から事情を聞いたらしいアイリスが、簡単な方法を教えてくれた。
儀式魔法の呪文から、いらない単語を消していくという方法だ。残った単語を書き出し、判定してみる。
明らかに、反応が良くなった。ゼンとサラも驚いている。
「この方法を続けていけば、自分でも簡単に作れるようになるよ」
アイリスの言葉に、ヤル気が出た。
儀式魔法の呪文の本を、半分ほどやったところで、なんとなくコツが掴めてきた。
前回、先生から出された課題、反応がイマイチだった呪文を作り直してみる。
ちゃんと道具が反応した!!
「自分の言葉で詠唱魔法の呪文を作ることが出来れば、実戦魔法の習得は簡単になる」
先生がそうおっしゃって下さった。
僕は、アイリスに一歩近付けただろうか?
読んで下さってありがとうございます。