続遺跡探索
年内に更新することが出来ました。
経験の少ない私が探索できるのは、せいぜい半径10メートルの範囲。
今回はそう大きくない建物だったので、簡単に見つけ出すことが出来た。
祭壇の下に空間が見え、その空間をよく観察すると、階段状の構造物が確認できた。
そして、その先を辿っていくと、この建物の地下数メートルの所に縦・横5メートル四方の空間が確認できた。私の能力では高さまでは確認できない。ついでに、何か物が置かれているのも確認はできるが、それが何なのかまでは判らない。
隠された入口を探すため、祭壇の辺りを調べることにした。
祭壇は木製で、縦約1メートル、横約2メートル、高さが約1メートルほどの大きさで、側面と入口側の面には植物をモチーフにした彫刻が刻まれているが、残る一面、入口から見えない部分は布だった。
その布を捲ってみるが・・・・・・、当たり前なんだけど入口らしき物は見当たらず。
祭壇の下にもぐりこんで、祭壇の裏側を調べて見ると・・・・・・、天板の隅に魔石がはめ込まれた金属製の金具があった。
金具はスライド出来るようになっていたので、祭壇の下から出て動かしてみることにした。
動かした途端、落ちたら嫌だからね。
魔石に魔力を流し込み、ゆっくりと金具をスライドさせる。
すると、思っていたとおり床の一部が開き、そこから下へと続く階段が現れた。
三人で下りては、何かあった時に拙いので、先ずは私とベルさんが確認のために下りることになった。
階段を数歩下りたところで、天板の裏に付いていたのと同じ仕掛けを見つけた。
上にいるクロード先生に一声かけて、動かしてみると床が閉じた。すぐに反対にスライドさせると、ちゃんと床は開いたので、壊れてはいないようだ。
階段は途中で直角に曲がっており、踊り場には小さな魔道具のランプが取り付けられていて、それがかすかに光っていた。
暗い中をランプの明かりを頼りに20段ほど下った先にあったのは、想像していた物とは違っていた。
明らかに宗教施設っぽい建物の地下にあるものといえば、多くの人は高貴な人のお墓を想像するはず。
前世の記憶から、偽札工場なんてモノを想像してしまったが、この世界には今のところお札は存在しない。
そんな訳で、地下にある品は棺と副葬品だと考えていたのだけれども・・・。
「まさか、書庫?資料室?だとは思いませんでしたね」
「ええ・・・。本だけではなく、石版もあるようね・・・」
空間の中央には大きなテーブルが置かれ、それをコの字に囲むように大きな棚が置かれていた。
棚には、羊皮紙の本だけではなく、ベルさんが呟いたように、石版や木の板(木簡?)土器のような物まで置かれていた。
そして全ての棚に状態保存の魔方陣が刻まれていた。
「ここ意外に隠し部屋や通路らしいものはあるかしら?」
「私が探索できる範囲ではないですね。残念ながら」
「そう、では、私は上にいるクロード氏と交代して来るわね。あの人の方が専門でしょうから。私は上の部屋にあった彫刻類が気になるわ」
棚やテーブルに置かれている物を一通り見て回ったベルさんは、そういい残して階段を上って行った。
テーブルの上には古代魔法文字と、アルクリア文字と名付けられた古代大陸文字が書かれた紙が散乱していた。
アルクリア文字は、この国が出来る以前の物と思われる遺跡で見られる文字で、イーリア国などこの大陸にある他国の古代遺跡でも見つかっている。
この部屋の主は、古代魔法文字の研究者か使い手だったのだろう。アルクリア文字が書かれている方は、漢字の説明だった。
「古代魔法文字だと?!」
私が紙に触れないように、最新の注意を払いながら文字を観察していると、興奮したクロード先生が階段を駆け下りてきた。
「はい。上にあった紙と同じような文字が書かれています」
一応、状態保存の魔法はかけられてはいるようだが、効力が切れている可能性はある。
触れた途端に崩れてしまってはいけないので、クロード先生も私と同じ様に紙に触れないように書かれている文字を読んでいく。
「これらに書かれているアルクリア文字は魔法文字の説明だろうか?」
「そのようですね。この二文字は“そのままの状態に保つこと”らしいですよ」
私は【保存】の文字を指しながらアルクリア文字を読んでいく。
「アイリス、君はアルクリア文字が読めるのか?!」
「え、ええ・・・、冒険者ギルドで教えてもらいました・・・。たまに、鑑定依頼の品が持ち込まれるので・・・」
前世を思い出す前は、辞書を使用して何とか解読できた古代文字が、思い出してからは何故かすんなり理解できるようになっていた。
「ほう・・・。ならば、私がこちらにある紙を調べるから、君はそちら側を調べてくれ」
私の調べた側にあったのは、“漢字”を使用した魔法陣の構成を考えるためのメモらしきものと、“漢字”を練習したと思われる紙がほとんどだった。
一方、先生のほうには何か重要な物があったのか、一箇所に留まったまま動かない。
「アイリス・・・。これを・・・・・・」
先生が指した紙には、筆者がかなり焦っていることが伺える、そんな文字が並んでいた。
【研究資料を全て残したまま、ここを離れなければいけないことが心残りだ。この建物に保存の魔法をかけては行くが、私がここに再び戻ってくるまでに効力が続いているか・・・。たとえ、私が戻ってくることが叶わなくとも、資料が無事であるならば、発見した者にここにある全ての物を託そう。グラン・アイザイア】
この紙が残っているって事は、ここの主であるグランさんは戻ってこれなかったんだろう。
「アイリス!!すごい発見だよ!!あのグラン・アイザイアの研究室だとは!!早速、マリアベルさんに報告しなければ・・・」
クロード先生は、ここに下りて来た以上の興奮状態で階段を駆け上って行った。
慌ててクロード先生の後を追うと、先生と同じ位興奮したベルさんがいた。
「早速、砦に連絡して、魔術研究所に“グランの失われた資料発見”の連絡を入れてもらいましょう!!ああ・・・、アルクリア文字を学ばなかったことが悔やまれる!」
クロード先生とベルさんは『大発見だー!!』と、大人とは思えないほどのはしゃぎ様。
「あの~、大変盛り上がっているところ、申し訳ないのですが、その【グラン・アイザイア】ってどのような方なのですか?」
二人の興奮具合から、すごい人であるとは解るのだけど・・・。
私の素朴な疑問に、二人は『え?知らないの?』と、言いたげな表情で見つめてくる。
「・・・ああ・・・、一年生では教えないから、知らないのは当然か・・・」
防御や治癒などの魔法がある程度使える様になった二年生の二学期に教わるそうだ。
「君の場合、一通り使えるから知っているものだと・・・」
その後、レオンハルトさん達が戻ってくるまで、【グラン・アイザイア】がどれほど偉大か語られてしまった。
要約すると、【現代使用されている魔法の基礎を築いた人】らしい。
魔術研究所は、この人の孫弟子が創立したそうだ。
先生の様に、古代魔法を研究する人にとっては神様のような存在で、彼が厄災から逃れてきた時に残してきた資料は伝説になっていたそうだ。
その伝説の資料が、ここの地下の資料だったらしい。
森の探索から戻って来たレオンハルトさんも、先生達ほどではないが伝説の資料に興奮していた。
「では、私達はもう少し詳しく調べてくるから」
クロード先生とベルさんは、再び地下へと下りて行った。
レオンハルトさんも一緒に下りて行ったが、すぐに戻って来た。
「いても邪魔になるだけだから」
との事だった。
私は、兵士さんと一緒に食事の仕度をすることにした。
レオンハルトさん達が、魔物化したウサギや鳥をいくつか取ってきてくれていた。
ここに来るまでクジャク以外の生き物と遭遇しなかったので、夕食は保存食と途中採取した果物だけかと思っていたのだが、ちょっと豪華な食事にありつけそうだ。
「森の調査はどうだったんですか?」
取ってきた獲物を捌いてくれている兵士さんに尋ねた。
「それがですね、来た道を除いたこの広場の周囲には立ち入れないんですよ」
まるで透明な壁に阻まれているようで、先に進めないそうだ。さらに、霧がかかっていて奥の様子も分からなかったそう。
そこで、来た道の周囲を探索したそうだが、道の両側数十メートルほどで同じように透明な壁と霧に行く手が阻まれたらしい。
「紅白の鳥と出会った場所までは戻ることが出来たので、帰りの心配はないですが、不思議ですね」
あれ・・・?私の魔術師昇格試験でこの森に来たはずだよね・・・?なんだか、それどころでは無くなっている気がする・・・。
このままでいいのかなぁ~?と思いながらも、聖なる樹と伝説の資料発見で浮かれている大人たちには黙っていることにした。
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それでは、良いお年を。




