魔術講義~儀式魔法~
この話の中での、魔法について書いてみました。
初めての魔法の授業。
今回の担当は、能力テストで私の術を見た、クロード先生だ。教師の中では、若い方。
インテリ系イケメンだ。この学園、イケメンが多いな・・・。
「疑問に思ったのですが、毎年、全グループ合同で『実戦魔法基礎』の講義があるのですか?」
「いや、今年は特別だ。ここまで、実戦魔法を使えないことは無かった・・・」
先生が、ため息をつきました。
女生徒が儀式魔法しか使えないのは毎年のことらしいのだが、男子生徒で使えないことは今まで無かったらしい。
「軍人の家系だったり、親が辺境伯だったり、害獣や魔物が住む地域がある領地出身の者はある程度実戦魔法を習得しているのだが、今年はそういった家系の者がいないのだ・・・」
「先生も大変ですね」
「ああ、君の存在が私達教師の救いだ。入学時に、攻撃・防御・治癒が中級以上というのも珍しい。教え甲斐がある」
普通は、初級ぐらいらしい。
「話はここまでにして、授業を始めよう」
本日の授業は、儀式魔法について。
「儀式魔法は、儀式の時に使う魔法のことですよね?」
「その定義は、半分間違っている」
私は首をかしげた。
「儀式魔法は詠唱魔法だというのは、分かるな」
「はい」
「詠唱魔法は、魔法を発動させるための手順を呪文としたもので、初心者向けの魔法だ」
先生の説明によると、
1、属性の確認
2、魔法を使用する理由
3、規模(範囲)
4、発動の言葉(術の名前)
で構成される。
「例えば、ファイアボールで、1体の魔物を倒す場合はどうなるか?」
「えーと、1、火属性で 2、魔物を倒すため 3、対象は1体 4、ファイアボール」
「多少、順番は入れ替わってもかまわないから、それを呪文として言うとどうなるかな?教室内は、魔法を発動できないようになっているので、呪文を唱えても大丈夫だから」
「火属性で魔物を倒す。対象は1体。打て!ファイアボール!・・・こんな感じですか?」
先生は、嬉しそうだった。
「正解。ちゃんとコレが反応したから、効果有りだね」
先生が『コレ』と言ったのは、水晶球のような物。魔法が発動できない代わりに、効果があるか判定する道具だそうだ。
「実際、この呪文で戦うとどうなる?」
「雑魚の魔物ならば大丈夫ですが、レベルが高く、動きが早い物では呪文を唱えている間に攻撃されますね。確実に」
「さすが、実戦経験者。それが分からない馬鹿もいるんだよね~。はぁ」
先生、言葉遣いが砕けてきた上にため息ですか。
「この様な、手順を覚えることによって、1~3の言葉が4に集約されて、実戦魔法となるわけだ。ここまでは理解できたか?」
「はい。どの様な術か理解して、発動しやすくするために言葉にするのですね」
「まあ、そう言うことだ。では、何故、儀式魔法といわれるようになったかだ」
いよいよ本題だ。
「戦いには不利な詠唱魔法だが、生活の場では利用できる。例えば、畑に雨を降らせるとかだ」
「確かに便利ですね。広範囲に降らせることが出来れば、それだけで仕事が楽になります」
「例えば、日照りで、かなり広範囲に雨を降らせなければいけなくなったとしよう。それが可能な者は数少ない。初級程度の魔法しか知らない者にとっては、奇跡を起こす儀式のように見えたらしい」
なんとなく、先生が言いたいことが理解できた。
「儀式らしく見せるために、詠唱魔法に手が加えられた」
1、各属性の精霊または神の名前
2、魔法を使用する理由
3、規模(範囲)
4、術者の名前
5、発動の言葉
「属性の精霊の名前って何ですか?」
「まあ、各地によって違ったりするから、だいたいは『水の精霊』とか『火の女神』とかになるが」
「あと、術者の名前って・・・」
「目立ちたいのだろうな・・・」
先日の、能力テストでの王子の魔法。確かに入っていたわ。名前。興味が無いからスルーしたけど。
あれ、でも、クリフは入っていなかったよね。
「先日の能力テストのことですが、クリフの魔法は、正確には儀式魔法ではなく、詠唱魔法と言うことですか?」
「そのとおり。Aグループの中で、君の次に彼が優秀だった。詠唱魔法は呪文が長くなるに従って、魔力の消費が多くなったり、術の制度が落ちたりと、色々と不利になる。短い呪文で、いかに効果的な魔法を出せるかが、先日の実技テストで見たかったのだが・・・・」
王子をはじめ、他のメンバーも呪文が長かったし、名前入っていたし・・・。
「儀式魔法が、貴族の嗜みとして進化してしまったのも原因なんだ・・・」
「貴族の嗜みですか?」
「そう。貴族が儀式魔法を学ぶに当たり使用する教科書みたいな物がこれだ」
先生から、一冊の本を渡される。
「うわぁ。詩集じゃないですか。コレ」
属性の部分だけで、数行ある。
「貴族の間では、コレを暗記して、お披露目する会があるそうだ・・・・。自分で作った呪文を披露する会もあるらしい・・・・」
「実際、コレ、効果有るのですか?」
「自分で試してみると良い」
私達は、屋外の実践場に移動した。
「この本の、雨を降らせる魔法を詠唱して、次に、同じ魔法を自ら作った詠唱魔法で、最後に実戦魔法でやってみてくれ」
先生に言われたとおりにやってみた。
結果は、実戦魔法が使い慣れているおかげで強力で、わずかに劣って詠唱魔法、本の儀式魔法は・・・・。
実戦魔法と詠唱魔法が野球場ぐらいの範囲に雨を降らせることが出来たのに対し、儀式魔法は、2メートル四方・・・・。王子の魔法も確かこの位・・・・。
「この学年、大丈夫ですか?」
他人事ながら、心配になってきた。
「Eクラスの三人は、少し訓練すれば大丈夫だが、他のクラスはどうだろうな?詠唱魔法ですら出来ない者もいるかもな・・・・」
先生が遠い目をしている・・・・。
「アイリス!!我々教師は、非常に君に期待している!!君が卒業するまでに、我々の持つ知識をすべて伝授する。君はそれが可能だ!宜しく頼む!」
先生に、両手をガシッと握られた上、頭を下げられてしまった。
ちょっと期待が大きすぎやしないかと思ったのだが、上級魔術師の先生達の授業は、非常に楽しみだ。
思っていたより早く、更新することが出来ました。
ありがとうございます。