試験の結果
休み明けの登校は、少し緊張する。
カーティスには一応口止めはしたけど、大丈夫かな?
「おはようございます」
教室には、王子達三人がすでに来ていた。
「おはようアイリス」
まず、返してきたのが王子。次にブライアン、そしてカーティス。カーティスは、挨拶したあと私から目を逸らした。
「アイリスさん。一昨日は急に店を訪ねて申し訳ありませんでした。アーサーが貴女の話を聞いて、どうしても行ってみたいと言ったので・・・。僕も興味があったので付いていってしまいました・・・」
ブライアンが申し訳なさそうな顔で謝ってきた。
『王子お前のせいかー!!』と、心の中で思いつつ、まぁ、会話の中でお店の宣伝をするようなことを言ってしまったのは私だし・・・。興味を持ってくれたのは良かったかな?
「私こそ、店内を案内出来なくて・・・。何か気になる品とかありましたか?」
「ああ。君のドレスと同じ生地・・・色は違うが・・・それで服を作ることにした。他にも気になる生地があったので、そのサンプルを王宮に届けてもらうようお願いした」
ユリウスさんが忙しそうだったのは、その所為か・・・。
あのドレス、一回しか着ていないから、アレンジして来年のダンスパーティでも着る予定だったけど・・・・・・封印しよう。
途中から、クリフも加わってライアン商会の話題で盛り上がったけど、その間、カーティスは一言もしゃべらなかった。
試験明けなので、授業では試験の答案が返却される。
今は【総合】の時間。【総合】とは、二年生から始まる専門授業の基本知識を学ぶ時間で、今回は【薬草学】だった。
一年生で習うのは、“基本の薬草20種”だ。
この20種は、“常備薬草20種”とも呼ばれ、一般家庭では必ずと言っていいほど常備されている。
栽培も比較的簡単なので、庭先や鉢植えで育てている家庭も多い。孤児院でも畑の片隅で栽培していた。
また、あらゆる薬の原材料としても使われているので、正に“基本”の薬草なのだ。
試験の問題も、この20種の薬草に関する問題で、効能や使用方法についてだけではなく、
【次の薬草は学園内の何処に植えられているか、答えなさい。】
なんてモノもあった。
“基本20種”なので、当然、学園の薬草園に全て植えられているのだが、ただ【薬草園】とだけ回答しても5点中の1点しかもらえない。
まず、薬草園は第一から第五まである。“基本20種”は第一薬草園と第二薬草園に植えられているので、この、第一と第二まで書けてやっと2点。
それぞれの薬草園内は、薬草の好む環境に合わせて幾つかの区画に分かれているので、その区画まで書くと3点なのだ。
王子達三人もココまでは書いたらしい。
では、残りの2点は?と、言うと、問題になった薬草は実は校内のあちこちに植えられていた。
一番分かりやすいのが各寮の花壇。コレさえ書けていれば5点中4点はもらえるのだ。
最後の1点は、それ以外の場所。
例えば、食堂入口の鉢の寄せ植えに他の花に混じってさりげなく植えられていたり、実践場側の並木の下草にまぎれていたり、保健室から一番近い花壇には20種全てがさりげなく植えられているのだ。
幼い頃から見慣れている薬草な上に、ヒルダ姉さんの特訓の成果なのか、気付いてしまうのよね。無意識で探しているのかな?
入学当初、人が少ない場所を探すために校内探検をしていた時に気付いたのよね。
植えられている場所も実に合理的で、食堂側は消化促進や解毒作用の有る薬草、実践場側は怪我ややけどに効果のある薬草と、応急措置が出来るようになっている。
「この問題で満点はアイリスのみ。惜しかったのがC組のゼン。クリフとC組のサラは寮までは書けていた」
元E組のメンバーだ。
「ちょっと意地の悪い問題ではあるが、君達が普段どのくらい授業で学んだことを生かせているか試す問題でもある。アイリス以外の者達は1週間以内に薬草園と寮以外の場所を探してレポートにまとめてくるように。他の組でも言ったが、植えられている場所は一箇所ではない。出来るだけ多くの場所を探し出した者には評価を少しプラスしてやる。あと、アイリスは他の者に場所を教えない様に。本人達のためにもな」
「はい。分かりました」
探索能力を上げるためにも必要なことだしね。
昼休み、保健室でエレーナ先生と昼食を取った。
いつもの様に愚痴を聞いてもらっていると、ドアがノックされた。
ここ数日、教室内では、出来るだけ王子達と親しく話すように心がけていたら、『放課後、一緒に勉強しないか』とのお誘いがあり、速攻でお断りしたことを報告し、どうしたら、適度な距離で接することが出来るのか?そもそも、何故、私とそう親しくしたいのか?などといった内容だったので、他人、特に王子と親しくなりたいと思っている女生徒には聞かせられないので、保健室の防音機能をオンにしていた。この状態だと、エレーナ先生の許可がないと保健室に入れない。
「はい、どうぞ」
話を一旦中断して、エレーナ先生が入室許可を出す。
「失礼します。あ、やっぱりここにいた」
入って来たのはジークだった。
「あら、ジークじゃない。いらっしゃい。じゃ、アイリス、続き話して」
「え、ちょっと、エレーナ先生。俺、アイリスに用があって来たんだけど」
エレーナ先生、ジークの扱いがちょっと雑。一応、将来の公爵様ですよ、ね?
「え~?面白かったのに。で、何?」
先生、私の悩みを面白いなんて、酷い。それに、ジークが用事があるのは私ですよ。
「職員室前に行った?」
今回の試験の結果が張り出されているはず。
「いいえ、まだだけど?」
人が多そうなので、避けてきた。
「今、すごい騒ぎになっているから、近寄らないほうがいい」
「へ?何故?」
「アーサーに10点以上の差をつけて、君が一年生の一位になったからだよ。アーサーって噂に聞く限り、今まで一位の座を誰にも譲ったことはなかったらしい。それを君があっさりと抜いて、さらにその事に対してアーサーが『彼女の学問に対する真摯な態度がもたらした結果だ。彼女と競い合えることを嬉しく思う』などと、君の才能を認める発言をしたものだから・・・」
ジークが額に手をあてて、ため息をつく。
「え~と、それって、ライバル認定って事でいいんだよね・・・?」
私の発言を聞いたエレーナ先生が笑い出した。
「まぁ、アイリスからすればそのような受け取り方になるわね・・・。だけど、人によって受け取り方は違うわよ。ふふふ・・・」
「エレーナ先生の言うとおり。発言したのがブライアンあたりだと素直にそう受け取っても構わないのだが、アーサーだからね・・・・・・。側近候補ならまだいいが、ヘタすると婚約者候補と受け取られた可能性がある・・・・・・」
「そんな~~」
私はその場で崩れ落ち、その横でエレーナ先生が、
「面白い事になりそうね~」
と、楽しそうに笑っている。
そんな私とエレーナ先生の様子を見たジークが、
「・・・いざとなったら俺が親父に頼んで何とかしてもらうから・・・」
と、慰めてくれた。
アイリスの災難(人災、原因:王子)は続く・・・。




