試験休み (2)
「・・・・・・まさか、王子が来ているとは思わなかったから驚いちゃって・・・。前もって教えてくれてもいいと思わない?」
休暇2日目。
今日と明日はジークと冒険者として活動することになっていた。
依頼で指定された場所に行くまでの間、ジークに昨日の事を愚痴ることにした。
「だけどさ、アイリのことだから、前もって教えられていたら理由をつけて行かないだろ?」
「だって、食事の時のマナーなんて一学期に習ったぐらいだもん。その程度で王子達と食事なんて恐れ多い!」
本当は面倒なだけ。
「プライベートではそこまで気にするヤツではないと思うけど・・・。アイリがそんな感じだから、ちょっと強引な手段に出たんだろ」
「うっ・・・。そうらしい・・・」
学園では一緒に食事なんてしないからね。
「で、どうだった?楽しかった?」
「う~ん・・・」
王子が来ているって事は、もちろんブライアンもいた。
クラス全員(って言っても5人だけど)で食事をしたかったらしく、急遽、企画したらしい。
急遽決まったことなので、警備の関係上、お店は無理。いくら王子の友人であっても、平民の私達が王宮に入るのには許可が必要になるから無理。
それにブライアンの家は公爵家なので、伯爵家であるカーティスの家なら、私とクリフが気兼ねなく過ごせるのではないかということで、カーティスの家に決まったらしい。
三人の中では、カーティスと親しいのは確かだけど、それでも緊張はするよ。
だって、こんな豪邸は前世でも無縁だったもの。
学園の建物も豪華だけど、校舎は美術館、寮はちょっとした高級ホテルって感覚で過ごすことが出来るからね。
けど、個人の邸宅でここまでだと・・・。王子やブライアンの家ってどんなんだろう・・・?
昼食は、伯爵夫妻も一緒だった。
ちょっとしたコース料理だったけど、前世の知識とマナーの授業のおかげで何とか乗り切れた。
昼食中は、伯爵夫妻から色々と質問された。
家族について聞かれたときは、正直に孤児であることを話した。
母と共にカール神父様の教会に保護されたこと。そして5歳の時に母が亡くなって、それからは教会の孤児院でお世話になっていたことを。父は、私が2歳になる前に魔物討伐に行って帰って来なかったと、母が言っていたと神父様から聞いた。
それを聞いた伯爵夫人が涙ぐんでいた。
神父様やシスター達がとてもいい人達だったのと、冒険者街にある教会だったからか、周囲の人達が親切だったので、辛い思いをした記憶があまり無い。
「あの方の元で育てられたのか・・・」
と、伯爵が呟いていたけど、神父様ってそんなに有名な人なんだろうか?
食事の後は、場所を応接室に移動して、5人でお茶することになった。
この時、初めて自分の姿を鏡で見たのだが、
「別人だよ・・・」
と、自分で呟いてしまった。
「へ~~。見てみたかったな」
「自分で言うのもなんだけど、すごかったよ。大人っぽくなっていて。このままだと帰った時に驚かれると思って、帰るときに化粧は落としてもらったけどね」
教室以外で5人で話すのは初めてだった。
話の内容は、普段はあまり話さない寮での生活の事や、休日の過ごし方など。
会話の中心、と言うよりも、よくしゃべっているのはカーティス。そして、よく話を振られるのは私。そして時々クリフ。王子とブライアンは聞役が多いような気がする。
今回だって、カーティスが「アーサーはどう?」って、言わなければ自分から話さない。何故?
「あ~~、うん。なんでだろうね?」
ジークが苦笑していた。
話している間に、依頼の場所に着いた。
今回の依頼は『増えすぎた(魔)アナウサギの駆除』だ。
(魔)とは、魔物化した野生動物のことだ。野生動物が魔物化する仕組みはまだ解明されていない。
普通のアナウサギとの違いは成長の早さと毛の色。
毛の色がパステルカラーなのだ。一番多いのがピンク。次いでイエロー。毛皮は高級素材だ。
繁殖期は春と秋らしいのだが、成長が早いため、春に生まれたウサギが秋には繁殖可能なまでに成長しているそうだ。
だから、頻繁に駆除しなければならない。
平原には、あちこちに巣穴の出入り口であろう穴が見える。
付近の畑にも穴の被害があるそうで、その穴に人間や家畜などが足を取られて怪我をしているそうだ。
畑や家畜の持ち主などが駆除をしたり、穴を埋めたりしてはいるらしいが、埒が明かないらしく、国に駆除の要望書が上がり、国からギルドに依頼がきたそうだ。
魔物ではあるが普通のウサギとそう変わらないので、低ランクの冒険者でも出来る依頼ではあるけれど、数が多いのと、穴もある程度埋めなければいけないので、ギルド長もどう扱うか迷っていたらしい。
そんな時、私とジークが来たものだから、それはもう、とても良い笑顔で、
「ハイ、これ依頼ね」
と、有無を言わさず渡された。
場所もそう遠くないから、今日と明日に出来る分だけ引き受けることにした。
先ずは、被害のあった畑にお邪魔する。
魔法で地下の様子を探る。
畑の地下の穴にウサギがいないことを確認できたので、まず、畑と平原の境の地下に壁を作る。そう簡単には穴が掘れない様にした。
次に地下の穴を埋める。ウサギが穴を掘った時に出来たであろう小山が平原のあちこちにあったので、そこから土を持ってきて埋めた。もちろん魔法で。
で、次は平原なのだが、(魔)アナウサギは食用にもなるため、全てを駆除してしまったら付近の村人達が困ってしまうので、若い個体は残すようにする。
(魔)アナウサギの寿命が7~8年ぐらいだということと、すぐに繁殖可能になることを考えて、生後3年ぐらいまでのウサギを残すことにした。
巣穴ごとに魔法で探り、ウサギがいるのを確認する。
巣穴の何箇所かある出入り口を一箇所だけのこして蓋をして、穴の中の若い個体は眠らせ、それ以外を残した穴から出て行くように脅かす。
出てきたところを、ジークと村人達が仕留める。
二人だけで駆除に来た私達を見兼ねて、村人達が協力してくれることになったのだ。
使われていない巣穴や、主がいなくなった巣穴はどんどん埋めていく。
途中、何度か休憩しながら、夕方にはほぼ完了した。
狩ったウサギは、私とジーク、それぞれ十匹ずつ貰って残りは協力してくれた村の皆さんの分にしてもらった。駆除したウサギは好きにしていいって言われていたから。
二十匹減ったとはいえ、それでも百匹以上残ったウサギを見て村人達は驚いていた。
「ありがとうございます。後は、私達でも対処できるまでに数が減りました」
思っていたより早く、依頼完了となった。
今回の依頼は、要望書を元に国から依頼されたものだったので、要望書を出した方から依頼完了のサインを貰う。
「本当にありがとうございます。こんなに多くのウサギを頂いて・・・」
私達のランクじゃアイテム袋に全部は入りきらないのよね。
今回はお金を稼ぐためではなくて、学園ではあまり大きな魔法が使えないのと、王子がらみの色々な事でストレスがたまっていて、それを発散するために受けたようなものだからね。
それに、協力してもらったんだからお礼をするのは当たり前だよね。
村人達に感謝され、野菜や村特産のチーズをお土産にもらい、ギルドに戻った。
「あら、以外と早かったのね」
ヒルダ姉さんが迎えてくれた。
「ジーク。お家から手紙を預かっているわ」
「何だろう?何かあったのかな?」
不思議そうに手紙を開き、読みだした。
「何て書いてあったの?」
「『今日は家に戻ってくるように』だって。何だろう?今日はヴィクターさん家に泊まる予定だったのに。
今日中に用事が済めばいいけど・・・。何かあったら朝イチで連絡する」
ちょっとだけ、嫌な予感がした。




