噂 一応収束する
ウィル、久々の登場。
例の噂は、以外と早く話題に上らなくなった。
噂を耳にしているであろう王子が否定も肯定もしていないからね。
王子本人に噂の真相を確かめる猛者はいないわけで、代わりに聞かれたカーティス達も適当にはぐらかしているそうだ。
協力してもらっているお姉さまたちも、
「面白いわよぉ。噂をしている人を見かけたら、『アーサー様がお話にならないのには何か理由があるのではなくって?未だに話題にしていることがアーサー様のお耳に入ってしまったら・・・・・・』って、言うの。すると途端に黙るのよねぇ。うふふ・・・」
と、とても楽しそうだ。
事情を知っている先生方も、噂話をしている生徒を見かけると、適当な理由で声をかけて話を中断しているそうだ。
こんな事を数日も続ければ、生徒達も、「この話、噂にしてはいけないヤツだ」と理解したらしい。
「『やはり私達の推測は正しかったのですね』なんて自信ありげに言ってたのを聞いたときは、笑いをこらえるのが大変だったわ」
セシリアお姉さまから、そのご令嬢達の名簿を貰いました。
「これ、どうするの?」
お姉さまから貰った名簿をカーティスに渡しながら尋ねた。
「ああ、これ?この人達、アーサーの婚約者候補から除外することになったんだ。噂好きが国の中心に近いところにいるのは不味いからね。自分達の都合の良い様に話を作り上げ、それを真実の様に流布するのも問題かな。まぁ、偽の情報を流す時は便利な人達だね。アーサーの計画通りに動いてくれたし・・・」
“噂を利用する”って、こういう意味もあったのね・・・。
久々に、ウィルさんのいる図書室にやって来た。
どれぐらい久しぶりかって、前回訪れたのが夏休み前だから、約三ヶ月ぶり。
理由は、ウィルさんがいなかったから。先日、やっと、「学園に戻って来た」と、連絡を貰ったのだ。
イーリア国って、お隣の国じゃなかったっけ?
「まず、ここから国境まで馬車で10日ぐらいかな。そこから、イーリア国の中心地まで同じぐらいかかるね」
行きだけで約3週間。往復だと、一ヶ月半もかかるのか・・・。
「久々の訪問だったから、イーリア国の主要な都市をいくつか巡ったんだけどね、日程の半分は移動だったね・・・」
イーリア国に行くのには、最低でも二ヶ月は必要かな?
「それで、どれぐらいの費用がかかったのですか?」
これ、重要。
「ああ・・・、今回は知り合いの商人の仕入れに通訳として同行したから、いくらかかったのか分からないんだ。それに、国境までの行き方は何通りかあって、それによって費用も日程もかなり変わってくるから、答えられないんだよね。僕よりも、冒険者ギルドで実際に旅をしている冒険者の人達に聞いたほうが確実かもしれないね」
以前は、この国から出ることなんて全く考えていなかったから気にしていなかったけど、この世界の交通事情、以外と身近に情報元はあったのね。今度、帰った時にでも聞いてみよう。
「それよりも、僕がいない間に面白い噂が流れているね」
最近、学園で流れている噂は一つだけだ。
「ナンノコトデショウ?」
無理やり笑顔を作り、素知らぬフリをする。
「僕も君のドレス姿、見たかったな」
ゴンッ。
「大丈夫?」
恥ずかしくて机に突っ伏したら、勢いあまっておでこをぶつけてしまった。
「ハイ、大丈夫です。どこからその噂、聞いたんですか?」
おでこに治癒魔法を施しながら尋ねた。
「ああ、先生の情報網。僕が君以外の生徒と関わることはほとんど無いけど、すべての生徒の情報は共有されることになっていて、一応、僕の元にも情報が来るんだ。噂を利用する計画のことも知っているよ。でも、よく考えついたよね。否定も肯定もせずに適当にあしらうことで、君からの関心を逸らし、ついでに、将来、国にとって必要となる人物かどうかをある程度判断できるからね。王子の将来が楽しみだね」
そこまで伝わっていたとは・・・。
「今回の噂は、かわいいものだったから、王子の計画に協力するだけで、学園側が動かず済んで良かったよ。間違った噂を流すことは混乱を招くことだから、真実を確かめ、内容によっては厳しい処分をすることになっているんだよ。今回の処分は、王子の婚約者候補から外されたことになるのかな?彼女達が事実を知る事になるのはいつだろうね」
ウィルさんの笑顔がいつもの癒される様な笑顔ではなく、心なしか黒く見える。
それに、学園の裏事情のようなものを聞いてしまったような・・・。
「あの・・・、良いんですか?私にそんな事を話して・・・?」
おそるおそる尋ねる。
「ああ、理事長も了承済みだから。あ、それから理事長も君のドレスを見たいって」
噂は、理事長にまで届いていた・・・。




