アイリス=アイリです
「それじゃあ説明してもらおうか」
パーティ会場を抜け出したものの、私がアイリだとジークにバレてしまったため素直に寮に帰してもらえず、生徒の憩いの場である小庭園でジークの尋問を受けている。
念の為、防音と遮蔽の魔法をかけてある。
「私がアイリだって事を黙っていたことについて説明すればいいのかな?」
ジークが頷く。
しばらく考えてみる。
「結論から言うと、学園生活と冒険者としての活動をはっきり区別したかったから?」
「なぜ、疑問形?」
「うまく説明できないから。一生平民として暮らすはずの私にとって、貴族階級の人達は別世界の住人で、一生会うことが無いだろうから、仕来りやマナーなんて無関係だと思っていたわけで・・・。それなのに、予定外にこの学園に入学することになってしまって・・・。どうするかと考えた結果、出来るだけ貴族階級の人達との接触を避けようと・・・。一学期は上手くいったんだけどね。能力テストの時だって先生以外元E組の友人一人にしか術を見られていないし、その後の授業だって私一人だけ別だったから・・・。実習に同行することになった時も、3年生とは学園内でめったに会うこともないし、髪と瞳の色を変えてしまえば気付かれないだろうと思っていたんだけどね・・・。それに、先輩方も嫌でしょ?下級生の女子の使う魔法の方が威力が大きいなんて・・・」
とりあえず思いついたことを言ってみた。
「・・・・・・そうだよな。自分達より魔法が出来る生徒が下級生いるなんて思いもしていなかった・・・」
「なので、アイリとアイリスは別人という事でお願いします。学園内では『ジーク先輩』と呼ばせてもらいます。会ったときも挨拶程度で」
「分かった・・・。でも、アイリと話がしたくなった時は?」
「その時は、エレーナ先生を通じて、かな?」
保健室でジークに会ったときのことを思い出す。
エレーナ先生がジークに“アイリ”の事がバレるように仕向けたとしか考えられない。ならば、色々と協力してもらおう。
まずは、ジークと私の関係。
ジークが夏休みの間ライアン商会でバイトをしていたアイリスを見かけたことにしておいた。
保健室で似た子(私)を見て気になっていた。
で、今日、話す機会があって確認できた。
「と、いった筋書きでいいですか?」
「そうだね。そのドレスを見てアイリで間違いないと思ったのは確かだし。まぁ、ヒルダさんの名前が出るまでは、ちょっと自信が無かったけど」
「そんなにこのドレス、分かりやすかった?」
「今日、会場を見て気付いただろ?今の流行がどんなものか。その逆じゃないか」
現在の流行は、フリルをふんだんに使ったプリンセスライン。色も鮮やかな物が多かった。髪型は盛り髪で、髪飾りも大きな物が主流。
対して私は、装飾の少ないAラインで、色も桜色。髪型は、ゆるふわに編んだ三つ編に小花の髪飾りを散らしたように付けている。
「え~。だって、フリルが多いの好きじゃないから。動きにくいし」
「アイリらしいよね。普通はさ、流行のドレスを選ぶでしょ。それに、流行からはずれるような物をお店の人は勧めないよ。流行と違った物が選べること自体不思議だと思うよ。それが出来るって事は、特別なお店で作ったって考えるよね。それに、その生地。それ、冒険者の間でしか使われていないから」
「え?そうなの?」
「そうだよ。俺だってライアン商会に行くまでは見た事無かったから。それ、“魔物シルク”を混ぜた生地だよね。特別な道具が必要となるから一般的な店では取り扱えないんだよ。ミライさんから聞いた」
“魔物シルク”とは、文字通り魔物化した蚕から取れる絹糸だ。
特徴はシルクなのに金属の特性を合わせ持っていること。色はシルバー。魔物シルク100パーセントだと染色できないから、綿や麻など他の素材と混ぜて使われる。
「魔物シルクがどれぐらいの割合か知らないけれど、踊っている時、光の当たった部分がシルバーに輝いていたよ。結構目立ってた」
光沢のある生地だからドレス向きだと思って使用したんだけど・・・。金属的な光沢だったようだ。
「あえて流行をはずしてして、“流行に疎い地味な人”を演出したつもりなんだけど・・・」
流行に敏感な人達から相手にされないために。
「まあ、大半の生徒たちからの反応はそうだったけどね・・・」
「私の地味で平凡な学園生活が・・・」
「アーサーに気に入られてしまったようだから無理だね」
「そんなぁ・・・」
後、2年半もあるのに・・・。




