ダンスパーティー
遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
「あら、ひどい顔色ね」
エレーナ先生に言われてしまった。
「そこの椅子でしばらく休んでいなさい。彼女の事は心配いらないから、君は戻りなさい」
王子と踊った後、顔色が悪くなった私を心配して、エレーナ先生の元までクリフが付き添ってくれた。
「でも・・・」
クリフが私を見た。
「クリフ。大丈夫だから。カーティス達の所に戻ってあげて。ここまで連れてきてくれてありがとう」
「うん・・・。じゃあ、行くね。後でまた来る・・・」
そう言うと、何度かこちらを振り返りながら、人だかりの中に消えて行った。
横になるわけにもいかず、長椅子の肘掛にしな垂れかかる。
「今すぐ部屋に返してあげたいところだけど、もう少し顔色が良くなるまではここで休んでいなさい」
そう言って、エレーナ先生がブランケットを肩にかけてくれた。
演壇前のダンスフロアーから離れていることもあって、生徒はいない。いるのは先生が数人だけ。
豪華な布張りの椅子は、座り心地が良い。
そのまま肘掛にうつ伏せになり、目を閉じた。
もし、前世の記憶を取り戻す前のアイリスなら、この状況をどう思っただろう。
ダンスパーティだって、今よりは楽しめたかもしれない。
そんな事を頭の片隅で考えながらウトウトしていたら、隣に誰かが座る気配がした。
多分エレーナ先生だと思い、気にすることも無くそのまま心地良いまどろみに身を任せていた。
「アイリス。冷たい飲み物持ってきたから、飲みなさい」
「・・・・・・ありがとうございます・・・・・・」
身体を起こし、飲み物を受け取った。
それにしても、いつの間にエレーナ先生移動したんだろう。
そう思いながら隣を見ると、
「やあ。具合悪そうだったけど、大丈夫?」
ジークがいた・・・。
「・・・!先輩はどうしてここに・・・?」
「向こうは香水の匂いがきつくてね。避難してきた」
それに関しては私も同感。気分が悪くなった原因の一つだ。
「以前、保健室で会った時も気分が悪いって言っていたけど、よくある事なの?」
「いえ・・・、体が弱いって訳ではないです。色々考え事をして、あまり眠れなかった所為です」
「考えごと?」
「いかにして、踊らずに済むかです!本当は参加さえしたくなかったんですけどね・・・」
このパーティ、とても重要な行事らしく、よほどの理由が無い限り休むことは不可能。
ならば、ダンスに誘われないよう、いかに存在を消すかを考えていた。
「そんなにダンスパーティに出たくなかったの?」
「はい!だって、男の人と向かい合って、あんな至近距離で踊るなんて・・・。庶民の間では結婚したばかりの男女がお披露目で踊るものなんですよ!」
そう。庶民の間でダンスと言えば、フォークダンスに似た踊りだ。これだったら、私も普通に男の人と踊ることが出来る。
「ダンスの授業で練習に付き合ってくれた人だったら何とか踊れたんで、その人と踊る約束をしていたんですけどね・・・」
クリフとだけ踊ってあとは目立たない場所に潜み、時間が来たらさっさと会場から出る予定だった。
「だけど、君、アーサーと踊っていたよね?アーサーは一曲目は誰とも踊らないはずだったんじゃ・・・?」
「それがですね、昨日、急に決まったんです・・・。はぁ・・・」
つい、ため息をついてしまった。
「その事については、私が説明してあげる」
私達の会話を横で聞いていたエレーナ先生が助け舟を出してくれた。
「・・・大変だったね・・・」
一通り、エレーナ先生の説明を聞いたジークが同情してくれた。
「はい・・・。出来れば踊りたくなかったです」
「君って変わっているね」
ジークが楽しそうに言った。
「どういう意味ですか?」
「女性は皆、アーサーと踊りたがるものだと思っていたから。普通は王子様って憧れるんじゃないのかい?」
「まぁ、多くの女性はそうかもしれませんが、私は無いですね」
前世でもアイドルとかに興味なかったからね。
冒険者の街での生活に大満足していた私にとって、貴族とか舞踏会なんて別世界、別次元の事で、面倒そうだから関わりたくないなぁと、思っていたぐらいだ。
「やっぱり君って僕の知っている子にそっくりだ」
まさかそれって私じゃないよね?
「それで、アーサーとのダンスはどうだった?」
え?何故、それを聞いてくるの?
「あんなにご機嫌なアーサーを久しぶりに見た」
「あら。じゃあ私も聞きたいわ」
エレーナ先生もですか?
「緊張は特にしなかったんですけどね、精神的に疲れました・・・」
学園の行事らしく、学園長先生の開会の挨拶があった。
一列に整列することはなかったが、クラスごとに集まっていた。
私は目立ちたくないので、クリフの後ろに隠れるようにしていたのだが、何故か横に王子が立っていた。
で、先生の挨拶が終わると、王子はすぐに私の手を取り、迷わずダンスフロアの中心へと歩いていった。出来れば隅の目立たない場所で踊りたいんだけど。
そして、中心に着くと、
「アイリス嬢。僕と踊っていただけませんか?」
なんて、わざとらしく聞いてくる。
踊ることは決定しているわけだから、こんな、会場全員の視線を集める場所でわざわざ言わなくても。
「ハイ・・・。ヨロコンデ・・・」
他に返すセリフが思いつかず、ありきたりな返事をしたが、本当に喜んでいるわけではないからね。そこをしっかり理解してほしい。
音楽が始まると、
「そんなに離れていると、上手く踊れないよ」
そう言って私の腰をグイッと引き寄せる王子。
近い近い近い。
「今日は前髪を上げているんだね。いつもそうしたらいいのに・・・。君のアメジスト色の瞳を毎日見ていたい・・・」
「今日のアイリスは、花の精のようだ・・・。可憐で、美しい・・・」
普通のお嬢さんだったら頬を染めていただろう。
王子だから、こういったセリフが様になるのだ。
前世で同級生の男子が同じセリフを言おうものなら、その場が凍りつくのは間違いない。
もしかしたら、殴っていたかもな・・・。
私は、女性を甘い気分にさせてくれる男性より、頼りになる年上の男性が好みなんだけどな・・・。
そんな事を考えていると、
「僕と踊っている時は、僕だけのことを考えてほしい・・・」
と、切なそうな瞳で言ってくる。
普通のお嬢さんなら、力が抜けててしまうんじゃないかな?
それほど破壊力のある表情だ。さすが、王子スキル。
ただ、私には逆効果。
多分、表情固まっていたんじゃないかな?
鳥肌もたっていたし、「早く終わってくれー!」と、思うあまり、涙目になっていただろうし。
その所為で?踊り終わった私を見て、クリフが
「アイリス、すごい具合が悪そうだけど、大丈夫?僕の事はいいから、休んで」
すごく心配してくれた。
クリフ。ごめんね。原因はすべて王子の言動だから。
「へぇ~~。アーサーがそんな事を言ったのか・・・」
ジークの言い方は冷ややかだ。
「さすが、王子様ね。そんなセリフも様になるわねぇ」
エレーナ先生は面白がっている。
「他人事だと思って・・・。エレーナ先生は、言われてみたいですか?そんなセリフ」
「私は遠慮しておくわ」
即答だった。
「ですよねぇ。一曲があんなに長く感じたことは無かったです。私にとっては苦行です。まだ、ヒルダ姉さんの特訓のほうがマシ・・・。あっ・・・」
恐る恐るジークのほうを見る。
ジークの最上の笑顔に悟った。
バレた・・・・・・。
いや、バレていた?
あれは、決定的証拠を掴んだっていった感じの笑顔だ・・・。
「じゃ、じゃあ、エレーナ先生。気分もだいぶ良くなったので、帰ってもいいですか?」
一刻も早くこの場から逃げ出したい。
「そうねぇ。良いわよ。でも、まだ一人で帰すには心配だから、ジーク送ってあげてね」
エレーナ先生も最上の笑顔。
「はい。分かりました。じゃあ、行こうか。アイリ」
あ、目眩が・・・・・・。
他にも書こうかなと思っていたことはありましたが、うまくまとめられず、諦めました。
別の話として投稿します。




