イベント発生
2018/3/6 加筆・修正しました。
内容は以前と特に変わりはありません。
まあ、予想はしていたけれど、お約束のイベント“呼び出し?”がありましたよ。
昼休み、保健室でエレーナ先生とお昼を食べようかと思って歩いていたら、待ち伏せしていた5人に
「ちょっとよろしいかしら?」
と、腕をつかまれ、引きずられて行くことに。
で、連れてこられた場所は、人気の無い(と彼女達が思っているであろう)裏庭だった。
庭には確かに人はいないよ。けどさ、建物がわりと近くにあるから、話声とか多分聞かれちゃうよ。
それにさ、結構目立つ場所で声をかけてきたから、人が来るのも時間の問題だと思うけど。言わないことにした。
私を取り囲むのは、全部で8人。
組章からC・D組の令嬢達のようだ。
「貴女、自分の立場ってものを解っているの?」
リーダー格らしき令嬢が言い出した。
『そっくりそのままお返しします』と、言いたいところだが、とりあえず、彼女達の言い分を聞いてみようと思う。
予想どおり、私が王子達と同じクラスになったことに対しての僻みだった。
「貴女なんて、アーサー様に相応しく無いのだから近付かないで!」
同じクラスなんだから、無理でしょう。
「そんなに殿下と同じクラスになりたいのでしたら、私に構っていないで、勉強したほうがよろしいのでは?」
彼女達のありきたりの文句の数々に飽きたので、とりあえず、言った。
「何ですって!!!」
勉強が苦手な人に「勉強しなさい」は効くよね。見事に怒ってくれました。
パチーーン。
彼女の平手打ちの音が、裏庭に響いた。ちょっと、魔法でオーバーに聞こえる様にしたけど。
私はわざと避けなかった。
「あのー。そろそろいいですか?私、約束があるんで、さっさと終わらせたいんですけど?」
彼女達の後方に向って、大声で言った。
「あれ?気付いてた?」
「ひっ・・・。カーティス様・・・」
彼女達が驚くのも無理ないか。そこにいたのは王子の友人だ。
「いつからそこに・・・?」
令嬢の中の一人が尋ねた。
「結構、初めのほうからいらっしゃいませんでした?」
「そうだね。君達が彼女に声をかけた頃からかな?」
私の質問の意図に気付いたカーティス様が笑顔で答えた。目は笑っていない。
「でしたら、止めてくださればよかったのに・・・」
わざと、恨みがましく言ってみた。
「いや、初めはそうしようかと思ったんだけどね、君があまりにも平然としていたから面白くって」
先ほどとは違い、心からの笑顔だ。
「ディルモア伯爵家のセフィーラ嬢だよね」
リーダー格の令嬢にカーティス様が冷ややかな声で言った。
「そして・・・」
次々と令嬢達の家名と名前を言っていく。名前を呼ばれ、彼女達の顔色が青ざめていった。
これが舞踏会とかだったら、「カーティス様が私の名前を呼んで下さった」と、頬を染めるとこだよね。
「君達は『自分の立場』を理解しているのかな?」
いつの間にか、カーティス様が私の横に立っていた。
「学園の基本方針は【成果主義】。“各々の実力や成果を評価し、それに見合った権限を与える。生家の階級は関係ない”と、入学式で説明されたはずだが、聞いていなかったのか?」
“権限”って言い方はオーバーだけど、色々な面で優遇されるようにはなっている。
「聞いていなかった?または、理解できていないのかな?」
令嬢達は何も言い返せないようだ。
「君達に分かりやすく説明してあげるよ。学園では身分ではなく、実力試験等の上位の者が立場が上だってことだよ。A組の彼女のほうが君達よりも上だって事。君達の憧れの“アーサー様”と同等の立場って言ったほうが分かりやすいかな?アーサーもそのことを認めているよ」
「・・・・・・」
「それに、1対8って卑怯じゃないかな?アーサーってそういうの嫌いなんだよね」
令嬢達の顔が益々青ざめていく。
「彼女の言うとおり、まじめに勉強して来年同じクラスになるように努力したほうがいいんじゃない?かなり努力しないと、君達じゃ無理か・・・。あ、ちなみに彼女は、アーサーと同率で一位だったから。もしかして、正々堂々と勝負を挑むのが無理だったから、こんな事をしたのかな?」
カーティス様って容赦無いな。
「それから、僕が一人でここにいると思う?」
“不敵な笑み”ってこんなのかな・・・?美形でこれをされると、背筋が寒くなるよね。
「私達も、話は初めから聞かせてもらった」
王子とブライアン様が現れた。
「大勢で一人の人間を攻撃するなど、君達の言う“立場”に相応しい行動なのか?それとも、それが許されるとでも思っているのか?将来、人の上に立つことになるかもしれない者のすることではない。私の君達に対する評価は地に落ちた」
うわ~~。王子、令嬢達にトドメさしているよ。
そこまで王子に言われてしまった令嬢達は、崩れ落ちるように座りこんでしまった。
王子が現れた時点で、生徒達が遠巻きにこちらを見ているのを、彼女達は気付いているのかな?
「ねぇ、カーティス様。そろそろ、私、行っていいかしら?」
隣に立っていた彼に尋ねた。
「ん?聞きたい事があるんだけど?」
「後でいいかしら?人を待たせてしまっているから」
今頃、エレーナ先生がお腹を空かせて待っている。私が先生の分のお弁当も持っているから。
「分かった。頬、腫れているけど大丈夫か?」
「ああ、これぐらいなら・・・」
打たれた頬に手を当てる。軽く治癒魔法をかける。
「ほらね。じゃあ、話は放課後。それから、ありがとう」
一応、助けてもらったので、お礼を言う。
「・・・ああ。じゃあ、放課後・・・」
座り込んでいる令嬢達の横を通り抜け、王子達にもお礼を言って保健室へ。
「遅~~~い」
案の定、先生が頬を膨らませ、待っていた。
「いや~~、ちょっと、トラブル?に巻き込まれまして・・・」
貴重な休み時間の三分の二を取られてしまった出来事を説明する。
「大変だったわね。でも、頬は腫れていないわね」
「同級生が心配そうにしていたので、その場で治療しました」
「ふ~~ん。その子、驚いていたんじゃない?」
「驚いていたんですかね?」
反応が遅かったような・・・?
「アイリスは忘れているかもしれないけれど、あなたの治癒魔法はほぼ上級。カール神父様から直接教えていただいているから、ちょっと特殊なの。魔法使った時、呪文唱えた?」
「いえ。手、当てただけですけど」
「それが、王国内ではカール神父様ぐらいしか出来ない治癒魔法なのよ・・・」
「そうなんですか?冒険者の方達は驚かれなかったので、これが普通かと・・・」
「あの人達は神父様の魔法に慣れているからね・・・」
「神父様って、実はすごい人だったんですね・・・」
「冒険者街って、特殊な地域だからね・・・。ヒルダといい、あなたといい、馴染んでいることがすごいと思う・・・」
エレーナ先生が少し遠い目をしてた。
放課後。
約束どおり、カーティス様と食堂(夕食まではカフェメニュー)の隅の席で話をすることになった。
他の人に聞かれたくない話題もあるかと思い、前もって先生に“防音”と“結界”の魔法を使う許可を貰っておいた。学園の敷地内では攻撃魔法は基本禁止で、それ以外は事後報告でも大丈夫らしいのだけど念のため。
生徒が使うには、“防音”と“結界”の魔法はちょっと特殊な魔法だったらしく条件として、話の内容を報告するようにと、録音の魔道具を渡された。
「それで、話は何でしょう?カーティス様」
私達の周りに、防音付きの結界魔法をかけた。
カーティス様の表情を見て、「やっちゃた」と、思ってしまった。
3年の先輩が結界の魔法を使っていたから普通に使っちゃったけれど、1年生はまだ使えない魔法だったのかな?それとも“防音”を付加しちゃったのが不味かったかな?
「・・・ああ、カーティスと呼んでくれて構わない。かしこまった話し方もしなくていい」
「じゃあ、私の事もアイリスで」
敬語を使わなくていいのは助かる。
「今回の件は、『大変申し訳ないことをした』と、アーサーが。本当は、本人が謝りたかったようだが・・・」
何でも、王子達も同席したかったらしいが、丁寧にお断りした。
断っていて良かった。
食堂内は以外と人が多く、昼間のことが学園中に広まっているらしく、離れてはいるが、こちらを気にしてチラ見をする人の多いこと・・・。
そんな中で、王子に謝られたりしたら・・・。考えただけでもゾッとする。
「彼女達が勝手に起こしたことだから、責任感じることは無いと思うけど・・・。だから、謝罪など結構ですと伝えてて」
「いや、すぐに止めに入らなくて怪我させてしまったこと・・・」
「アレは、怪我には入らないよ。ほら、なんともないでしょう」
打たれた左の頬を彼に見せる。
「ホントだ・・・。確か君、手を当てただけだよね?」
「私に治癒魔法を教えてくれた人が、実はすごい人だったみたいで・・・。だから気にしていないってちゃんと伝えてよ」
「ああ・・・」
カーティスは、あまり納得していないようだったが、この話はここまでにしてもらった。
「で、聞きたいことって何?」
さっさと本題に入って終わらせよう。
「昼休みの件だけど、いつから僕達が君の跡をつけていたのに気付いた?」
「え~と、教室から?初めは、同じ方向に行くものだと思っていたんですけどね。歩幅から、途中で抜かれてもおかしく無いはずなのに、私との距離が一定だったので」
「そうか・・・。では、彼女達に声をかけられた後、僕達に魔法をかけた?君達の会話が聞こえるような」
「あ、気付いてた?たぶん、聞きたいんじゃないかなぁと、思って」
“遠耳”の魔法。数メートル先の音を聞き取りやすくする魔法だ。
「君が平然としていたのは、僕達が近くにいたのに気付いていたから?」
「まあ、それもあるけど、予測は出来ていたからね。クラス発表の時、結構、睨まれていたし。彼女達がどんな言掛りをつけてくるか興味もあったし。語彙の少なさに途中で飽きちゃったけどね」
「確かに・・・。アレはあまりに幼稚だった・・・」
カーティス達も呆れていたそうだ。
「聞きたいことはこれでお終い?」
「・・・えっと、君、3年のジークさんと知り合い?君が去って行ったあと、君の事聞いてきたけど?」
まさか、ジークのことが出てくるとは思わなかった。
「えーと、先日、保健室に行った時に、会ったと思う・・・。エレーナ先生に頼まれて、ちょっと怪我の手当てを手伝ったかな・・・?」
「魔法で?」
「ええ。骨折とかしていないか確認したけど・・・」
「なるほど、それでか・・・」
納得してもらえたようだ。
「あの、私からお願いがあるんだけど、いいかな?」
「出来る範囲のことならいいけど」
「今回の件もあるから、出来れば教室以外では話かけないで欲しいの。ほら、三人って目立つでしょう。今だって、睨まれているし・・・。挨拶程度の関係でお願いできないかな・・・?」
カーティスが周囲を見回した。
彼の視線に気付いて、慌てて目をそらす生徒達。
「・・・分かった。アーサー達にもそう言っておく・・・。また、言掛りをつけられた時は、伝えて欲しい。何とかするから・・・」
「ありがとう。じゃあ、私はこれで」
結界魔法を解除する。
「寮まで送っていこうか・・・?」
「職員室に寄らなきゃいけないから。また、明日、教室で」
カーティスは心配なのか、私が寮に戻るまで離れた位置から見守って(?)くれていた。




