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ジーク 夏休みの思い出 ― 冒険者見習い編(1) ―

更新、遅くなりました。

すみません。

「ジークフリード様、旦那様が書斎でお待ちです。帰り次第、すぐに部屋にと申し付かっております」

 実習最終日の翌日、学園の寮から実家に帰ると、執事からそう告げられた。

「分かった。すぐ行く」

 いつもなら、着替えてからなのだが、よほど急な用事でもあるのだろう。

 父上の書斎のドアをノックし、

「ジークフリードです。ただいま戻りました」

と、言うと、すぐに、

「入れ」

の返事がきた。


 書斎には、父とライオネル叔父(父の妹の夫)がいた。

「実習にヴィクター・ルイスが同行したというのは本当か?」

 叔父上に挨拶をする前に、父が尋ねてきた。

「どこからその情報が・・・?本当ですよ。叔父上、お久しぶりです。お元気そうで何よりです」

「ああ、ジークも・・・。で、ヴィクター殿についてだが、情報元は私だ。先日、訓練場でお会いした時、『学園の実習に同行することになったから、兵士達の訓練の日がずれるが構わないか?』と、尋ねられたのだ。ジークが学園の生徒だと思い出してな。気になって来たのだ。で、ヴィクター殿の戦いぶりはどうだった?」

 へぇ。ヴィクターさんって軍で指導しているんだ。軍のトップである叔父上に“殿”呼びされるなんて・・・。

「学園の実習ですから、一番強いのでもCランクの魔物でしたよ。なので、瞬殺です。」

 実習での出来事を報告する。

 ヴィクターさんから剣での戦い方のコツと、アイリから教えてもらった属性付加の魔法でDランクの魔物を一人で倒したことを話すと、

「「それはすごいな・・・」」

 父上と叔父上が関心していた。

「ヴィクターさんが、俺に任せてくれたんです」

「ほう、ヴィクター殿が・・・」

 よし、今が好機チャンス


「はい!それから、ヴィクターさんから、夏休みの間、冒険者として活動することを勧められました。指導役を引き受けて下さるそうです」


「許可する!!」

 父上は、即答だった。

 昨日から、反対されるのではと悩んでいたんだけど。

「すごいな、ヴィクター殿が個人の指導を自ら引き受けるなんて・・・」

 叔父上は関心している。

「え~~と、そんなにすごい事?」 

 二人の反応が予想外だったので、驚いた。


「ヴィクター殿は、基本、個人の指導は引き受けないんだよ」

「何故ですか?」

「彼の指導法は『実戦重視』。即戦力となる実力者を育てるため、実際に魔物を倒しに行くことにしているそうだ。ある程度の実力と戦う覚悟が無いと、彼の指導についていくのは無理だからね。そう簡単に引き受けることはしないそうなんだ。軍の指導を引き受けてくれているのは、兵士達が『実力』も『覚悟』もあるからだそうだ。まぁ、他にも理由はあるのだが・・・。今回の実習で、ジークはヴィクター殿に認められたようだ。それでこそ私の甥だ。部下に自慢しよう」

 血が繋がっているのは伯母上なんだけど・・・。それから、部下に自慢はやめてほしい。

「ああ、私も我が息子として誇りに思う。がんばって彼の元で修行してきなさい!」

 父上が満面の笑みで言った。

「あ、でも、母上は冒険者になることを反対しませんか?」

 『息子に危険な事はさせません!』とか言うんじゃないかな?

「いや、大丈夫。彼女はヴィクター殿のファンだ。反対はしないだろう」


 夕食の席で、母に報告すると、

「流石。私の息子だわ。ぜひ、ヴィクター様を家に招待しなさい!」

と、言われてしまった。



 次の日、早速冒険者ギルドに登録しに行った。


「ヒルダさんの言ったとおりでした。ヴィクターさんの名前を出すと、あっさりと了承してくれました」

「でしょう。ヴィクターって、軍関係の人に人気なのよ」


 ヒルダさんに連れられてやって来たライアン商会の応接室。

 現在ヒルダさんと二人。

 アイリは、店主のユリウスさんの妹のミライさんに別室に連れて行かれた。

 実習で手に入れた魔石で、チョーカーを作るようにお願いし、お茶を飲みながらくつろいでいた。

 冒険者ギルドではゆっくりと話せなかった昨日のことが話題となった。


 国防大臣である父と、元帥である叔父上が何故ヴィクターさんのことを“ヴィクター殿”と呼ぶのか不思議だった。

 何でも、5年前、国境付近の東の森で魔物が大量発生した時に、軍の討伐隊にヴィクターさん達冒険者も参加したらしい。

 その時、かなり(・・・)活躍したらしく、軍にも誘われたそうだが、

「軍は、今回のような大規模な発生でしか動くことは出来ません。しかし、魔物の小規模な発生はいつでも起こっているのです。冒険者なら、それらを討伐するために自由に動けます」

と、言って断ったそうだ。

 本音は、訓練場での訓練より、魔物を相手にするほうが性に合っているかららしい。


「その言葉に感動されちゃったみたいでね。軍に所属することは諦めてもらえたみたいだけど、代わりに指導を頼まれたそうよ」

「叔父上から聞きました。何でも『戦う』覚悟の無い者には指導しないと言って個人は断っているって」

「そうね。王都は強い結界で守られているから実感は無いかも知れないけれど、実は、年々魔物の数が増えているの。一人でも多く戦える人間が必要となっているのから、高ランクの冒険者は即戦力にならない者の指導は引き受けなくて良いと国からも言われているのよ」

 叔父上が言っていた『他の理由』とは、この事か。

「俺に話しても良いんですか?」

「え、だって、ヴィクターもジムさんも私も、ジークの実力は認めているもの。ああ、もちろんアイリもね。それに、ジークは学園を卒業したら軍に入るんでしょ。いずれ知る事になるんだから、それがちょっと早まっただけ」

「確かに、そうですね」


「今までの話を聞いて不思議に思ったんですけど、何故ヴィクターさんは学園の実習に同行することになったんですか?」

 実習は、強くてもCランクの魔物までしか出なかった。それに、学園の生徒が即戦力になるとは考えられない。

「それは、アイリが参加していたから。私もそうだけど、ヴィクターにとってアイリは妹みたいな存在なのよ。そのアイリが学園からの指名を受けて、実習に参加することになったことが、色々と心配だったわけよ」

 そういえば、実習最終日にアイリに話しかけようとしていた奴等、ことごとく阻止されていたな・・・。あれ、だけど俺はアイリと普通に話し出来たけど?

「ジークは真面目(・・・)に実習に参加していたでしょう。ヴィクターに色々と質問していたし、アイリに話かけたのも魔法のことだったからね。一人で魔物を倒したことも良かったようね。ヴィクターがすっかりジークのことを気に入っちゃたみたい。だから、ジークが私に『彼女(アイリ)からもっと魔法を教えてもらうにはどうしたらいいか?』って相談したときに、冒険者になることを勧めて、自分から指導役になるって言ったでしょう。私とヴィクターが認めた男以外はアイリに近付くことを許さないわよ」

 ふふっと笑ったヒルダさんの笑顔を見て、実習で見た彼女(ヒルダさん)の鞭捌きを思い出し、背筋が寒くなった。

 良かった。行動間違えなくて。

  

 アイリの容姿は、美人と言うよりは可愛い。

 冒険者として活動している割には、色が白い。

 ゆるくウエーブがかかった黒髪と、時折紫にも見える黒い瞳が印象的だ。

 自立している所為か、年下には見えなかった。

 初めは、同級生の女子達とは違う雰囲気に惹かれた。

 それ以上に、彼女の魔法に惹かれてしまった。

 俺が今現在、彼女に持っている感情は、『好意』+『好奇心』=『憧れ』

 彼女は、俺の前を行く存在。

 夏休みの間に、一歩でも彼女に近付きたい。

 

 


 

来週中には 見習い編(2)を更新するようにします。


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