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実習初日

 目の前には、おいしそうに焼けていく豚もどきの丸焼きがある。

 魔法学園、3年生の実習初日の野営地で、本日の夕食の準備中だ。

 メインは、現在焼いている豚が凶暴化した魔物の肉、筋肉質かと思えば、意外と柔らかでおいしい。それに、山菜のスープ。保存のきく硬いパン。デザートは、採取した果物。

「おいしそうですねぇ」

 豚もどきを焼いている、剣士のヴィクターさんに声をかける。その横には、山菜でスープを作るヒルダ姉さんがいる。この二人、実は恋人同士だ。

 今回の実習に参加してくれた冒険者は、もう一人、格闘家のジムさんがいる。

 ヴィクターさんもジムさんもAランクの冒険者なのに、私が参加することを知って、依頼を受けてくれた。もちろん、ヒルダ姉さんも。


「あいつら、大丈夫か?」

 ジムさんが心配しているのは、今回の主役のはずの3年生の先輩方。

 今日は見学だけで、魔物と戦っていないはずなのに、酷く疲れている様子だ。

「気にしなくていいわよ。己の無能さにショックを受けているだけだから」

 そう言ったのは、今回の引率役のエレーナ先生。治癒魔法と防御魔法が得意な先生だ。普段は、保健医をしている。ヒルダ姉さんと学園の同級生で親友らしい。


 出発前、先生から、

「思いっきり、派手な魔法をお願いね」

と、頼まれていたので、見た目が派手だけど威力はそこそこな魔法で魔物を倒すことにした。

 森の中なので、火系統の使用は控えた。一番派手に見える魔法なんだけど、仕方が無い。

 雑魚相手なので、そこそこの威力でも効果は抜群。

 そんな魔法で魔物を次々に倒していくものだから、先輩方は自信を失ったらしい。

 一応、3年生の中でもトップらしいのだけど・・・・・・。

「良かったんですか?」

 小声でエレーナ先生に聞いてみる。

「良いのよ。これが狙いですもの。もっと派手で威力が大きいのを見せてあげたいけど、雑魚相手に使うのはもったいないしねぇ。Aランクの冒険者もいることだし、もっとエリアを広げる?例えば、CランクとBランクの境目ぐらい」

 清楚な雰囲気のエレーナ先生だが、さすがヒルダ姉さんの親友、言ってることが似ている。

「私は構わないんですけど・・・」

 ヴィクターさん、ジムさん、ヒルダ姉さんに、以前Bランクの冒険者が行くエリアまで連れて行ってもらった事があるので、平気なのだが・・・。

「先輩方の気力が持たないかと・・・。あと、日数もギリギリになってしまいます」

 チラッと、先輩方の方を見ながら答えた。

「う~~ん。そうねぇ。雑魚の魔物でさえこの反応だから・・・。明後日は、自分達も戦わなければいけないのにねぇ・・・。いざという時、動けないんじゃ実習の意味が無いし・・・。残念だけど、今回は諦めるしかないのね・・・」

 学園に戻って、職員会議の議題にあげようかしらと、言っていたのは聞かなかったことにしておこう。


「ちゃんと食べないと、明日が辛いわよ」

 食欲の無い先輩方に、ヒルダ姉さんが優しく言った。

 先輩方は、頬を染めながら頷き、食べる努力を始めた。

 今回の実習メンバーは5人。すべて男子生徒。 

 ヒルダ姉さんの魔性の微笑みが役に立つ。

 ちょっとヴィクターさんが不機嫌そうだったけど。


 野営地は、聖なる樹の加護のある場所なので、魔物の心配は無いが、実習なので、冒険者と生徒が組んで、交代で夜の見張りをする。

 聖なる樹は不思議な樹で、昼は太陽の光で葉っぱが七色に輝き、夜はその葉が優しく光る。樹の根元には、必ず癒しの泉が湧き出ている。樹から半径1キロは、魔物が近寄ってこないエリアが出来る。

 冒険者、特に初心者が野営になれるために利用される場所だ。

 夏の夜は短いこともあり、明け方前の1時間を私とヒルダ姉さんとエレーナ先生が受け持ち、あとは、ヴィクターさんとジムさんに先輩方が二人と三人に分かれ付き、見張りをすることになった。

「それでは、おやすみなさい」

 私達女性三人は、早朝の見張りのために、早めに寝ることにした。




読んで下さり、ありがとうございます。

梅雨時に入ると、天候に左右されやすい偏頭痛持ちなので、更新のペースが落ちそうです。

体調が良い時は、なるべく更新するようにします。

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