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お魚ライフ  作者: アロエ
6/6

お友達?な人魚



おじ様の友人会からまた少し経った日、背が一番低いおっちゃんが今度は一人で来た。あ、いや誤解があるかな?お供の方々はいたよ。あと布のかかったなんかでっかいものを部屋に運んできた。私の水槽と同じくらいの大きさかなぁ。この間の私のおねだりが効いたのか?効いたのか?わくわく。


なんて期待してたらその視線に気付いたのか、勿体ぶりながら従者さんが荷物にかかってた布を取っ払う。おお!?に、にんぎょだー!


髪は赤で肩につくかつかないかという位。目は金でちょっと吊り目、褐色肌で尾は赤に金交じりでキラキラしてる~!いいなぁ、綺麗!!つるつる!鱗の形も私と違う~!かくかくしてる?とりあえずかっけえ!!


向こうも向こうでこっちに興味を持ってくれてるのか水槽に手を突いてじっと見つめ合う。おじ様方もなんか話してるし、これは友人作れそうな予感!もしかしたら言葉も通じるかもしれないとテンションも上がる上がる。


おじ様のお友達さんが何やら水槽を持ってきた男の人らに命令して友人候補ちゃんを近くに置いてくれた。早速水槽から顔を出してこんちはー!と元気よく鳴いてみる。向こうからもプピャーと若干私よりも控えめに鳴き声が返ってきた。ううん、話し通じない系かなこれ。


ちょっとがっかり。でもまぁまだ仲良くなれないと決まったわけじゃないしなと気を取り直してコミュニケーションを取ろうとすると水槽から身を乗り出してきたあちらさんがこっちの水槽にどぼんとしてきた。マジか。見た目と同じく派手で大胆な子だなぁ。


顔を出さなくてもいいならこっちも引っ込むかと水に戻ると待っていたかのように口を開く美人さん。



「―――!――?」



あー……勢いよく話してるのはわかる。さっきより流暢に話してるのも。でも何て言ってるかわからないよ。興奮気味なあちらさんに眉を下げてちょっと困ったアピールをしてみる。ダメ押しでピャッピャと鳴いてみれば漸く口を閉じた。


お?話しが通じてないのが分かったかな?少し気まずい空気が流れる。ややあってからあちらさんが自分の顔を指差して何か単語を口にした。何回か繰り返す様を見るに、多分名前かな?



「―――、――」


「くおりお」


「……!」


「くぉ……くおりあ?」


「!」



真似て、首を振られ、もう一度とチャレンジするといい笑顔を返された。なるほどなるほど。クオリアさんかぁ。じゃあ、私も私もと今度は自分を指差しおじ様に貰った名前を告げる。さっきと同じようなやりとりをして互いを覚えて喜びに微笑み合い―――?



ちょちょちょ!?何しやがる!?と私は水中で叫んだ。何でかって?いきなりクオリアが襲ってきたからだ!プロレスごっこなんてもんじゃねえ!くるくる回りを泳いでたからじゃれてるのかなって思ってたら背後に回った瞬間、いきなり髪引っ掴んで首に噛み付かれた!!ギャー!痛い痛い痛い!!



バタバタと腕を動かし、必死に頭を振ろうとして水槽の外でほっこり顔でこっちを見ていたはずのおじ様も慌ててるのに気付く。た、たしゅけて!おじ様!マジ痛いの!禿げる禿げる!頭皮ごといっちゃう!


ピャイピャイピャイと情けなく鳴いて涙を浮かべてふと腰というか、背中というか、なんか微妙な位置に当たってる物に気付いた。何これ?って思っても後ろ振り向けないし痛みで頭がいっぱいでパニックな私にはわからずじまい。とりあえず血相変えたおじ様とさっき水槽運んでくれてた男の人達とが私とクオリアを引き剥がしてくれた。ひっかき傷と噛み痕で満身創痍な私はそれはもう泣いた。


怖かったぁ~!マジで殺されるかと、喰われるかと思ったようとおじ様に縋りつく。おじ様は火傷しないようにといつのまにか特注してくれたらしい手袋をしてくれているのでとりあえず今のところは平気だ。


おじ様が宥めてくれている間に元の水槽に戻されたヤツは懲りずに暴れてるっぽいけど、もう知らんわ。折角仲良くなれると思ったのに!友達詐欺だよこれ!!



そうしてこのクオリア事件は終わった。おじ様の友人さんは何か頻りに謝ってたしヤツが悪いのであって友人さんは多分悪くない……。と言うか想定外だったんだろうと思うから恨む事はないけど、水槽に漂っていた自分の抜けたらしい髪と血によって濁った水を見て怒りが収まらない。うううう……本当、何だったんだ。最初ニコニコしてたのに豹変するとか、人魚怖い。もう他の人魚会いたくないぃ。



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