一切れのパンの価値
相変わらず暗いです。ほんとうにすみません。
針(以下シンで)はしばらく傷で凍える身体でまたあの孤児院に戻される恐怖に怯えながら箱の家で過ごした。
シンにとって幸運?業運なことに、孤児院の者たちは追ってこなかった。
実は孤児院の人達は政府から治療費の着服の疑惑を持たされていた。焦った孤児院は病院と企み彼を心疾患による自然死にしようと目論んだ。
そもそも子供達が孤児院に反発心を持ち始めたのは彼の存在が大きかった。いくら治療費が多くても彼の存在一つで欲望か満たされる訳ではないのだ。
いつお迎えがくるか分からない彼と、安定して金を供給してくれる子供達。 どちらかを捨てなければならないとすれば彼を捨てるしかなかった。
しかし彼は突然失踪した。孤児院はこれ幸いとし、彼を死んだことにし無縁墓地に埋葬した事にした。
そうとは知らずシンは怯えて隠れ住んだ。
3日後 シンは耐え難き空腹に呻いた。このままでは死んでしまう。しかし店に買い物に行けば孤児院の者たちに見つかるかもしれない。彼は空腹で抗議する腹を庇いながら孤児院から可能な限り離れた。そしてある一件の店に着いた。
ここは孤児院とは離れてるし食べ物も売ってるため、万が一ここにシンがいたと発覚してもその時は充分身を隠せるはずだと思った。
手持ちの金額を確かめつつ店に入っー
パン パン 「えっ⁇」
店に入って聴こえてきたのは安物の爆竹の音。見えたのは女の子を抑える男と 手に煙をあげてる黒い塊を持つ女性 そして胸が紅いシャツを着た女の子。
シンは思わず固まってしまった。そうしてるうちに男は女の子をかたずけ、女性は赤い何かを掃除しながら「いらっしゃいませ」と明るい笑顔で接客して来た。
シンは思わず聞かずには居られなかった。
「なっ 何があったんですか…?」
女性は少し不快に思ったらしい。しかし彼の疑問は当前だと感じた。彼女は事務的に事実を述べた。
「盗みですよ。」
「盗み?」
「はい当店であの子か窃盗行為をした為、当店で処理いたしました。」
この返答に彼はショックを受けた。
「捕まえたのだから警官に連れていけはいいのでは…」
「どうせ1日絞られてすぐ釈放でしょう?だったらこちらで形にはめれば問題ないでしょう?」
「だからって!! 何も殺すことは…」
「うちの店の盗っ人をどう処理しようが貴方には関係ないでしょう!!…それとも何?あの子の知り合い?」
「いや…」
「ならほっといて!!客じゃないならさっさと出て行って!」
シンもこの女性と話すのが苦痛になってたところだった。でも最後に確認したかったことがあった。
「最後に教えてくれませんか?」
「………何?」
「あの子は…何を盗ろうしたんですか?」
「パンよ。」
「 パン?」
「そう1番安いパン。しかも一切れのパンよ」
「…………………」
何か言いたかった。でもきっと何を言ったところで、彼女には届かない。それに届いたところで女の子は戻らない。最悪彼女は私に向かってあの黒い塊を向けてくるだろう。
不思議なことに、さっきまであった疲労や空腹が感じなくなった。ただ酷く狼狽した。
この世界では、いや国かもしれないが人の命はパンの一切れよりも価値がないのだ。だとすれば私は、
私はどれだけ価値がない人間なんだろうか?
答えはない、ただ、ただ酷く、ひどく腹が減った。
こんなネガティブな考えがよぎるのはきっと空腹のせいだと言い聞かせながら、軽食屋に向かった。
最近ふと思ったのだがジャンル詐欺気味なんですが、いつになるか分かりませんがちゃんとファンタジーしますので待っててください。