↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

ジャンルがよく分からない系

光

作者: 花厳 幽花
掲載日:2026/09/26

 ドクン、ドクン、と大きな音が聞こえる。その音は私の鼓膜を通り抜けて体にまで響いていく。

 私はただずっと眠っていて、いずれきたる『その時』を待つだけ。


『その時』がやってくれば、私はようやく目を覚ますことができる。


 今の私にできるのは、ドクン、ドクンと波打つように鳴る大きな音を聞きながら、眠りの世界で揺られるだけ。


 私は宙を漂いながら、時折、体を動かすことがある。するとどこからか『声』が聞こえてくる。


「今、動いたね」


 と、優しげな高く細い声が。


 外、とでも言うのだろうか。私のいる世界とは別の、どこか遠い場所で幾つもの声が聞こえる。

 主に低い声と、高い声。


 高い声の者は、私の世界の創造主であろう。

 それどころか私を生み出した存在なのではないかとも思っている。


「名前、どっちにするか決めた?」


 それから低い声の者が、その『名前』とやらの話をしていく。上手く聞き取れはしなかった。

 だが、私は温かくなった。心、そんなものが存在するのならば、おそらくそこが温かさを感じているのだろう。


 私は温かな気持ちを伝えるべく、体に力を込めた。体が動く。するとまた、「動いた」と高い声の者が言う。


 満たされた。それだけで。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 ある時、私の体に異変が生じた。

 創造主との繋がりである一本の線が、ねじれてしまったのだ。


 私は苦しげに体をもぞもぞと動かす。


 どうすればこのねじれをなおせるのだろう。


 ドクン、ドクンと相変わらず音は鳴り響いている。


 体にまとう温かな水の感触。浮遊感。


 私はもう一度、ねじれをなおすべく身をよじらせる。

 すると、なんとかねじれはなおってくれた。


 まっすぐと繋がった線の感覚に安堵しつつ、私はまた眠りに身を任せた。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 また、ねじれてしまった。

 この頃、私の過ごしていた世界が狭く感じてきていたから、おそらくそのせいだろう。


 苦しい。


 私は体を動かす。


 そう簡単にねじれはなおらない。


 眠れない。

 私が何度も体を動かしていると、ふと、声が聞こえた。


「痛い」


 そんな、声が。


 私はねじれを解くのに必死だった。だからその声を無視してしまった。

 大きな低い声が聞こえてくる。ガタン、と一度だけ大きく私の過ごす世界が揺れた。


 創造主に何かあったのだろうか。


 私は考えながら、また体を動かす。


 ねじれはなおった。だが、すでにねじれる癖がついてしまっているのだろう。


 体を小さく動かすだけでも、またねじれが再発しそうな気がした。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 この世界をもっと狭く感じるようになった。宙に浮かぶ浮遊感どころか、閉塞感の方が強い。

 ねじれはあれから起きていない。起きていないのだが、いつかまた再発しそうな気がした。


 その再発しそうだと思う考えは正しかった。


 ある時、またねじれが起きた。この時はやけに世界が揺れ動いていて、私は寝返りを打つように体をよく動かした。


 それがいけなかったのだろう。


 ねじれはどうやら、私の体にまとわりついているようだった。


 苦しい。息ができない。


 私は必死に体を動かす。

 動かすも、段々と力が抜けていって、意識が遠退いていく気がした。


「もうすぐだよ」


 そんな声がどこからか聞こえてくる。

 どうしても諦めきれなかった。私は必死に体を動かして、ねじれを解こうと、体にまとわりついたそれを引き剥がそうとした。


 まだ『名前』すら与えられていないのだ。


 私が諦める理由がどこにあろうか。


 すると、ずるずると私はどこかへ押し流されていく。ついに『その時』がやってきたのか。


 世界の果てに光が透けて見えた。段々と遠くなる意識の中、私は目を開こうと力を込める。


 手を光に向かって伸ばした。


 私は、生きる。


 私は――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。