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私を忘れた貴方と、貴方を忘れた私の顛末  作者: コツメカワウソ


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番外編 北方騎士団の例のアレ5

「ここがソフィの実家?」


「そう。どうぞ」


 北方騎士団から程近い場所に、ソフィアの実家はある。

 バードナー伯爵家ほど大きくはないが庭もあり、子供の頃にはよく弟達と遊んだものだ。


「ただいま~」


「あら、おかえりなさい。アルフォンスさんもようこそ」


「初めまして。お邪魔します」


 ソフィアの母ジュリアがキッチンから顔を出す。

 穏やかな雰囲気の少しだけ垂れ目の女性で

 三姉弟はみな母の雰囲気を受け継いでいるのだなと分かる、そんな人だ。

 家の中にはお腹が空くような良い香りが漂っている。


「父さん達ももうすぐ帰ってくると思うわ。リビングで待っててね」


 初めての家に色々と見回しているアルフォンスを見て、思わずソフィアは吹き出した。


「うちはランセル家みたいなお屋敷じゃないから、面白いものなんてないわよ」


「いや、そういうんじゃなくて。ここでソフィが育ったんだなって思うと、なんか感慨深いというか」


「ふふ、何それ」


 父親か、とソフィアは思う。

 至って普通の家だ。リリスが紹介してくれたというこの家は、古いがしっかりと建てられた事が分かるような造りだ。

 実際ヒューがどれほど暴れても酷い壊れ方はしなかった。

 家門魔法で猫のような生き物に変身した時も、感情に直結しやすい魔力の暴走で家中が水浸しになった時も。


 よく考えると普通ではあり得ない事が多かったなとソフィアは思う。

 自分の家の普通が世間的にはそうではないという事を、西方に行って初めて知った。


 そんな事をソフィアが考えていると、二人の前にジョシュアとヒューが突然現れた。


「ただいま~、ソフィア達もう来てたんだ~」


「…玄関から帰ってこない弟達って、よく考えたらものすごくおかしい事だったわ」


 魔力量のおかしな家族に囲まれていたせいで慣れてしまったが、改めてソフィアはそう思った。









 家族揃っての食事は久しぶりだ。

 厄災の先見が出た時には、こんな風に穏やかな時間を過ごせるなんて考えもしなかった。

 アルフォンスといつまで一緒にいられるのか、どうにもできない身分差に悩んでいた。


 それなのに今は、アルフォンスと一緒に家族と過ごせている。近い将来、彼と家族になるのだと改めて実感する。


 先程戦ったライオネルとの再会にアルフォンスはかなり緊張していたが、今は二人でお酒を酌み交わしている。

 父親が無理に付き合わせているな、とソフィアは思うが、


「とりあえず二人にしておきなさい。父さんだってアルフォンスさんと呑めて嬉しいのよ。ま、複雑な心境なんでしょうけど」


 と母に言われて、そういうものかと納得した。

 とりあえず隣で黙々とワインを飲んでいるジョシュアに声をかける。


「ジョシュア、あなた彼女が出来たのね。しかも家門魔法まで披露したらしいじゃない」


 ソフィアの言葉にジョシュアは面倒くさそうな目で見てきた。


「で、どんな子なの?魔術師?」


「………司書」


「あ、ジョシュアの彼女ね、俺会ったよ」


 ヒューがソファーの上から呑気な声を上げる。


「…最悪の形でね」


 苦虫を噛み潰したような表情のジョシュアはヒューを睨みつけた。


「なにそれ」


「母さんに頼まれた荷物を届けにジョシュアの部屋に転移したらさ、ちょうど二人がイチャイチャしてたんだよね~」


「ヒュー…あんた何やってるのよ…」


 ソフィアは頭を抱えた。

 そういえば以前、自分も同じ被害に遭っている事を思い出した。

 確かあの時も母からの荷物を届けに、ソフィアの部屋にヒューが突然現れた。

 ソフィアも、ソフィアの膝に頭を乗せ寛いでいたアルフォンスも固まったまま動けなかったなと最悪な記憶が掘り起こされる。


「いや~、二人とも服着てて良かったよ~。そうじゃなきゃ相当気まずかったよ~」


「…ヒューが帰った後の空気は最悪だった。あれ以来僕の部屋は対ヒュー用の結界を貼ってあるから」


「なにそれ!?私の部屋にもかけて!私も同じ被害に遭ってるから!」


 ソフィアはジョシュアの肩をブンブンと揺する。


「…酔いが回るからやめて。アルフォンスさんに頼んでよ」


 ソフィアの手を外しながら、ジョシュアは面倒くさそうに言う。


「全く。うちの子達は本当に規格外ねぇ」


 子供達のそんな様子を見ても、ジュリアは動じる事なくそう言って笑う。

 さすが母、強い。


「ヒューは勝手に部屋に入るのはやめなさい。あとジョシュアも恋人が出来たなら二人で遊びに来なさいね」


「そのうちね。僕はヒューみたいに他人を連れては転移出来ないから、落ち着いたら遊びに来るよ」


「ふふ、父さんも喜ぶわぁ」


 小さい頃のソフィアの思い出をアルフォンスに聞かせているライオネルを見ながらジュリアは笑う。


「こうやって家族が増えていくのねぇ。母さんは嬉しいわ。ソフィアも子供が生まれたらこうなるのよ。アルフォンスさんは父さんと同じだからね」


 母は魔力回路の治癒の事を言っているのだと分かる。

 いつか会えるだろうソフィアの子は、規格外の高魔力保持者だ。


「大変な事も多いけど、その分楽しい事も沢山あるわ。父さんの魔力回路の治癒をした時にはこんな風に過ごせるなんて思ってもいなかったもの。あなた達の母親になれて私は幸せよ」


「母さん…」


 母の言葉は重い。

 ソフィアがお腹にいた事で拗れに拗れた両親は、きっとソフィアが思う以上に大変だっただろう。


「でも転移してこの家に来る人間が増えるのは、何とも複雑だけどね。うちには玄関から入ってくる息子はいないから」


 あはは、と笑う母に思わず苦笑いをする。

 ジョシュアもヒューも、何なら父すらも直接部屋に現れる事が多いから。


「やっぱりうちの家族は普通じゃないのかも…」


 酔い潰れて寝ている父とアルフォンスを見ながら、ソフィアはため息を吐いた。





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